ハーフ 草野たき ポプラ社

画像草野さんの作品は、いつもふんわり心地いい。
ふわふわ揺れて、どこかにいってしまいそうな風船をそっと
捕まえるような、やさしさに満ちている。
この作品も、お父さんと僕と、犬のヨウコという家族に、プレゼントを貰った気分。

ぼく、こと真治はお父さんと、犬のヨウコとの三人?!暮らし。
お父さんは、ずっと犬のヨウコが真治のお母さんで、自分の奥さん
だと説明し、その通りの日常を送ってきた人。
奥さんの犬のヨウコを溺愛してる。「どうして、自分の奥さんをリードでつながなきゃ
いけないんだって思うよ」なんて真顔で言っちゃう。真治は、とっくにそれがおかしい、
と思いながら、ずっとそれに合わせてきた。でも、もう六年生にもなった今、それが
ちょっとしんどくなってきている。もちろん、今のままでも幸せだ。ヨウコのことは
とても好きだし、ゴハンもきっちり作ってくれるお父さんのことも大好き。
でも、まわりはこのままじゃ許してくれない。
縁談の世話をしようとするおばさん、「オマエのお父さん、おかしい」と言ってくる
クラスメイトたち・・。そんなことに、ちょっと疲れてしまったんだ。
そんな時、大事な大事なヨウコがいなくなってしまう!どうする、お父さん・・。

その家族だけの価値観とか、掟、というのがあります。
血の繋がり以外に、そんないろんな約束事をたくさん持っていて、それで結びついて
いるのが家族。たとえ、それが明らかにおかしくても、その約束事をやぶってしまう
ことは、それまで培ってきた全てをぶち壊してしまうこと。
だから真治は、とことんお父さんにあわしている。
そして、真治は、そんな自分をどこかでかわいそう、と思っていたのだ。
人にそう言われるのは好きじゃないくせに、どっかで他の家庭と違う
ところにいる自分を、哀れんでいる。だから、三浦にも「いじけてる」なんて
言われてしまう。自分がかわいい、わけのわからないままの子どもでいれば、
そべては丸くおさまる。そう思いながら、もうそうできない自分にも気づいてる・・。

でも、ヨウコが急にいなくなって、お父さんが壊れそうになり、真治は
ほんとうのことに、対峙しようとする。なぜ、お父さんはヨウコを奥さん
だと言い張ってるのか?そうしなければならなかったお父さんの気持ちに
触れたとき、真治は一つ大人になっちゃうのだ。
子どもを大人にするのは、人間の切なさ。
そんな真治とお父さんを、ずっとその存在で支え続けた、犬のヨウコが、
かわいい・・。物いわず、愛を身体いっぱいで表現して、絶対嘘をつかない
ヨウコ。一匹の犬と、ぼくと、お父さんの物語。真治はこれからゆっくり大きくなって、
お父さんを支えていくはずだ。親子ってね・・。いつの間にか、逆転しちゃうん
ですよね、そこが。最近長男と自分の関係が逆転しつつある・・。
でも、その頃になると、自立の時なんですよね。
ほんと、うまくできてるなあと。
なんちゅうか、自然の流れがあるんですよね、きっと・・。
それに逆らわずに、のんびりと身をまかせていればいいのかもしれない。
過ぎてしまわなければ、わからないことなのかもしれないけれど・・。
真治と同じ年齢の子どもから、今子育てにきゅうきゅうしてる大人まで。
読んだらちょっと心にやさしい風が吹く。そんな物語です。



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           http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000496

この記事へのコメント

綺羅
2008年07月27日 19:53
私は今年の夏休みに、読書感想文として読みました。
ほんわかしてて、心がふわっとした場面など
ありましたが、真治の気持ちに心が痛む場面もありました。
ERI
2008年07月29日 00:43
>綺羅さん
こんばんは♪読書感想文・・ということは、ティーンエイジャーでいらっしゃるんですね。
物語を読んで心を痛める感性をお持ちなのは、素敵なことですよ。人の痛みに心をはせるところから、始まることがたくさんあります。いろんな物語を読んで、心を敏感にしてくださいね♪
七海
2015年08月11日 15:03
私も読書感想文として読みました。でも疑問があるんです。それは、どうして題名がハーフなんでしょうか?わかったら教えてください。よろしくお願いします。
ERI
2015年08月20日 01:12
七海さん
コメントありがとうございます。お返事遅くなってごめんなさい。
なぜ、ハーフなのか。そこに注目したあなたは、ブックセンスがあります。その疑問から、読書感想文を書けばよいのです。たったひとつの正解など、文学作品にはありません。あなたなりの答えを、考えて書いたら、それはあなただけのもの。ハーフ、って半分ですよね。半分同士がくっついて人間ができる。でも、人間同士でなくても、人間と犬でも魂は結びあったりする。それって、不思議だと思いませんか。草野さんの作品、他のもとっても面白いですよ、読んでみてくださいね。