難民少年 ベンジャミン・ゼファニア 金原瑞人・小川美紀 訳 講談社

画像アフリカのエチオピア出身の少年・アレム。
父親はエチオピア、母親はエリトリアの部族の出身。
その二つの部族が対立し、内乱が起こったことから、混血である
アレムの身に危険がおよぶことを恐れた両親は、アレムをイギリスに
連れて行き、そのままそこを去る・・。
彼は難民として保護され、フイッツジェラルド氏というイギリス人の
家庭に保護される。そこから、学校にも通わせてもらうのだが、
彼が難民をして認められるには、裁判所に申請をして、認められなければ
ならないのだ。フイッツジェラルド氏の一家、ボランティアあげての
支援を受けて戦うアレムだが、その彼を次々と試練が襲う・・。
まず抗争に巻き込まれた母が亡くなり、そしてイギリスにやってきた
父も・・。そんな彼をささえようとする人々と、いつも礼儀正しくて
向学心にあふれたアレムの、戦いの物語。


およそ、ここ日本では想像できないような境遇に生まれてしまった
アレム。同じアフリカの部族でありながら、内乱ですべてを失ってしまう・・。
アフリカのそういった実情は報道されることはあるけれども、やはり
日本に住んでいると、どこか人事・・という感じがしてしまい、関心はいまひとつ
だというのが現実ですよね。「難民」という問題に、日本という国はいまひとつ
乗り気ではないし。しかし、ヨーロッパでは、この「難民」という問題は、
非常に生活に密着していることなんだ、というのがまず一つ。
歴史的にも地理的にも、避けては通れない問題なんですよね。
だから、こういうアレムのような子どもを救うためのボランティア活動も
ちゃんとシステムとして出来上がっている。これが日本ならどうなんだろうなあ・・。
と考えてしまいました。アレムの周りの人々は、とにかく彼を救いたい、
と動く。その姿勢が、大事だと思います。国としての事情は確かに色々
あって、難しい側面もあると思うんですが、こういうチャンスをきちんと与える
こと、これは必要なんじゃないか・・と思ったりしたわけです。
そして、それが綺麗ごとだけではすまないとこも、ちゃんと描かれて
います。このフイッツジェラルド氏の娘のルースは、初めアレムに
冷ややかな態度をとっている。それは、これまで我が家にやってきた
たくさんの子どもたちに自分が振り回されてきたから。
常に自分以外の子どもたちのことばかりに奔走している両親の
態度や、いつもアレムのような子ばかりではないことに悩まされて
いたことが、その反応を生んでるんですよね。これも、またよくわかる。
しかし、そのルースも、アレムの健気さに、姉のように彼を気遣うように
なる・・。そのあたりの相克も、きちんと書かれていて、好感がもてます。

そして、このアレムという少年の生きる姿勢の美しさに心うたれちゃうんですよね。
ほんと、勉強嫌いのウチの息子たちに読ませてやりたいですわ。
彼は、どんな境遇にあっても、ちゃんと自分のできることをやり、常に
学ぼうとしているんです。まず、英語。文学、歴史・・・。
常に好奇心と向上心にあふれている。彼には「教育を受ける」ということの
ありがたみと、意味がわかっているんだなあ、と・・。
そして、それ以上に「知る」喜びを知っている。
「知る」ということは、何者にも換えがたい喜びだと思うんですよ。
それがなければ、人間は息をすることもできない。
「知る」ことができる権利。それは、何者からも奪われてはならないもの。
情報にさらされ、洪水のようにあふれているこの国では、忘れられがちな
この「知る」ということの大切さを、しみじみ思いました。
何を奪われても、この生きる姿勢があれば、アレムはいろんなことを
乗り越えていける・・。

「いまぼくにできることは、心をしっかり持って、精一杯、人生から何かを
作り出すこと。もし悪いことからよいことが生まれるなら、それを作ってみせる・・」

母を奪われ、父を殺され、たった一人になってしまったアレム。
しかし、彼の生きる姿が、たくさんの人に何かを与えていく。
ぜひ一度読んでいただきたい本です。

おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001125

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