12番目のカード ジェフリー・ディーヴァー 池田真紀子訳 文芸春秋
このシリーズは、いつも期待を裏切らない。考え抜かれたプロット、逆転につぐ逆転、張り巡らされた罠、収束するかに
見えて、そこからまた読者を引きずりこむ、息をもつかせぬ展開。
このライムとサックスの活躍する様を見るのは、いつもなんて気持ちのいい
ことなんだろう。痛快です。
粗筋なんて書こうとするのが間違いだと思えるほど複雑な展開なんで、
もうそれはするっとあきらめます。
ただ、執拗に、一人の少女が命を狙われる。それはもう、手を変え、品を変え。
人を殺すのをなんとも思わない冷酷な殺し屋との戦い。
それがなんとか終わったと思っても、そこからまた二転三転。
もう、これでもか、と思うほどの執拗さです。
それが、なぜなのか?最後までその謎をひっぱって、この分厚さを
一瞬たりとも飽きさせない。いやあ、見事です。
ミステリー、ハードボイルドのお手本のようなジェフリー・ディーヴァー。
このシリーズの新刊を手にすると、まさに期待で胸がドキドキしますが、
裏切られたことがないんだなあ・・。凄いです、ほんと。
この少女が、なかなかいいキャラです。
ハーレムの中で、たった一人で生き抜いていこうとする。
自分の頭と、気概と、野心だけで、人生を切り開こうとしている。
稀に見る、誇り高さ・・・。それは、ライムの窓辺にやってくる
鷹を思わせますね。彼女の誇り高さと強靭な精神力は、どうやら
この事件の大きな鍵となる、祖先のチャールズ・シングルトンから受け継いだ
ものらしい。その侮りがたい少女に振り回されながら、ライムはこの少女が
お気に入りのようだ。そんなそぶりを見せないままに、彼女を頭脳をフル回転
させて救っていく彼は、やはりかっこいいですねえ。
そして、私がライムに惹かれるのは、その、無敵と思えるような頭脳の裏に
人間としての弱さと、そんな自分と闘おうとする自分という、人間くさい一面を
持つところ。指一本しか動かせない自分の体に対する不安と、焦燥。
サックスに対する、闘う同士のような女性に対する、愛情と不安。
そんな危うさが、複雑な事件とともにライムに訪れ、彼を翻弄する。
ミステリーとしての楽しみと、人間の複雑さや素直な感情をありのままに
見せるヒューマンドラマの二本立てであることが、この作品の魅力です。
睡眠不足が頭がふらふらしても、読むのがやめられない。
明日も仕事なのになあ・・。やばいわ。
これだけ複雑なプロットなのに、全てが理詰めで展開していくのも、気持ちいい。
おいおい、それは約束違反じゃないの、というミステリーによくある
突っ込みどころが、ない。いや、私の頭が悪くてわからんだけかもしれんけど。
綺麗にしてやられる、それが爽快です。最後の謎が、ちょっと粒が小さめでは
ありますけどね。お~い、それなんかい、という感じは、あります。
しかし、アメリカという国の階級社会が結局「金」でできてるんよなあ、
というところは、納得したりしますが。・・あ、日本でもそれはあまり変わらんか。
社会的な問題の扱い方としては、「石の猿」のほうが上だったかな。
でもまあ、これは贅沢な比べ方というもんでしょう。
作品としての完成度が高いので、単品としても十分楽しめますが、
やはりこれは第一作「ボーン・コレクター」から読むのが、王道ですね。
どうやら、本国では次のシリーズが発表されているらしい。
早く読みたいものです・・・。恐ろしく手の込んだ、書くのにどれだけ
手間と労力がかかっているんだ、と思う本を、たった一日二日で読んで
しまう・・・。本読みというのは、罪深いもんです。
その上、早く・・・って、欲張りすぎやな。ま、世界中のミステリーファンは
そんなもんでしょう(爆)これは、ほんとにオススメです。
おいしい本箱 → http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php
この記事へのコメント