渋谷に里帰り 山本幸久 NHK出版
渋谷という街には、二回ほどしか降り立ったことがないんですが。しかも、タワーレコードくらいまでしか歩いてないですしね。
でも、やたらに人が多い、ということだけはわかりました(笑)
そんな街を舞台にした、サラリーマン奮戦記、というところでしょうか。
やる気があるんだかないんだかわからない、どっちかというと昼行灯、
みたいな若手の男の子が、バリバリに仕事ができる女性営業マンに
触発される物語。稔、という主人公が、元々渋谷という街で生まれ
育ったけれども、祖父の開いたパン屋の店をまもりきれずにその街を去った。
その時に、同級生にパン屋を改装すると嘘をついたことがトラウマになってる
という設定。その彼が、先輩の退職で、渋谷の担当になるので「里帰り」なんですね。
この、元気な女性に、ちょっと頼りない男性、というのは
昨今どこを見ても共通してますねえ。学校でも、大概「女の子は元気なんですけど
男子は大人しくて」と言われることが多いし。
これまで避けていた渋谷。これまで避けていた全力投球。
何となく、過ごしていた時・・・。
それが、ちょっとだけ変わる、その変化の具合の微妙さ具合が、味ですね。
ただ、ちょっと展開がまだるっこしい部分があって、イラチな私には
もう少し、テンポが良ければもっと読みやすかったですかね。
故郷というのは、見たいような見たくないような気がする部分があります。
人間、当然ながらいい思い出ばかりではなく、思い出したら「あっ!!」と
叫んでしまうこともたくさんあって・・その恥ずかしさに炙られて、しばらく
立ち直れなかったり。そんな微妙さも含めて、故郷。
稔のそんな思いも抱えつつ、街は変わるようで、本当は変わらないのかも
しれない。川の流れのように。たくさんの水が流れていくけれども、
その土地の持っている、匂いのようなものは変わらない。
東京のど真ん中でそれを探すのは難しいでしょうが、稔の探し当てた
故郷の匂いは、少し稔の心を解き放って自由にした。
それも、また故郷の力なのでしょう。
私の故郷は・・もうすっかり形も匂いも変えてしまっているので。
ある意味、新興住宅地、というのは、都会よりも変化が大きいんですよね・・。
だから、もう私の記憶の中にしか、懐かしいあれこれは、存在しない。
自分の一番芯になっている何かはあの日々にあると思うけれども
それは、手を伸ばすと逃げていってしまう。
逃げた先にあるものを、いつか見に行きたい、と思います。
あ・・それでは、20世紀少年になってしまうか(笑)
この記事へのコメント
こんなに爽やかな笑顔で終わるとは、想像がつきませんでしたねえ。頑張りスイッチが入る時って、人間こんな風かもしれない(笑)男の子が、大人になるのって、時間がかかるもんなのね・・と、これは男の子の母としての溜息です。