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zoom RSS 戦場から生きのびて ぼくは少年兵士だった イシメール・ベア 河出書房新社

<<   作成日時 : 2008/03/21 11:36   >>

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画像これは、ノンフィクションです。
この本を書いた方の、略歴です。

ベア,イシメール(Beah,Ishmael)
1980年、世界でもっとも平均寿命が短いといわれるアフリカ西部のシエラレオネに生まれる。1993年、12歳の時に内戦に巻き込まれ、政府軍の少年兵士として前線での激しい戦闘に参加させられる。1996年、国連のユニセフに救助され、リハビリ・センターを経て、ニューヨークの国連に呼ばれ、「第1回国際子ども会議」で故国の惨状と子どもの人権を訴える演説をする。シエラレオネ帰国後にふたたび内戦が激しくなり、ひとり国を脱出する。1998年にアメリカに移住し、ニューヨークの国連インターナショナルスクールで2年間学んだのち、オバーリン大学に進学して政治学を専攻し、卒業した。現在は、アメリカの国際人権NGOである「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」子どもの権利部諮問委員会のメンバーとして活躍している


シオラレネという国。そんな国があることさえも、きっと知らない人が
多い私たち。そこで、何があったのか、どんな戦争が行われて
いたのか、全く知らない・・・。
この本は、イシメール少年が、12歳の時に内乱に巻き込まれ、家族を失い、
生き延びるために政府軍の少年兵士として戦争を戦った、その経験が
克明に描かれています。
どうやら、映像記憶能力を持っているらしい彼は、恐ろしく克明に、この
間のことを、覚えている・・。忘れようと思っても忘れられないのかも
しれないけれど。その克明な記憶は、出来事だけでなく、その時の情景まで
まるでビデオカメラのように、「その時」を再現していく。
友達と気楽に出かけた旅が、二度と帰れないものになってしまう、その朝。
逃げまどう人たち、自分の横で死んでいく、たくさんの命。
血しぶきに、暴力。それまで培ってきた、人間同士の信頼が崩れていく様子。
もう、息をするのも苦しいくらいに、「真実」に満ちています。
これはもう、読んでいただくしかない、内容なんですが・・。

このイシメール氏は、アメリカに脱出してから、ストーリーテリングの
専門家の方の養子になっておられるんですよね。
そのせいもあるのでしょうか、文章が非常に明晰で、しかも「物語」としての
迫力にも満ちています。はじめに書いたように、出来事だけではなく、
その時の空の色、森のざわめき、凄まじい暴力が襲ってくるときの予感のような
圧力までも、描写して、ぐいぐい読むものを引き込んでいきます。
たとえば、仲間の少年の一人が、夢魔に魅入られたように、ひっそりと死んでいく
ところがあるのですが、その悪夢のような雰囲気が背筋に伝わってくる。
銃弾に貫かれて死んでしまうのと、また違う衝撃を、仲間の少年たちが
感じる様子が、まざまざと伝わって、大きすぎる暴力が何を生み出すのかという
恐怖が、沁みこんできます。
ドキュメンタリーとしての真実の重さは勿論、読み物としての
価値も高いことが、より一層、この本に描かれていることの本質を伝えてくれます。

そして、何より恐ろしいのが、その感受性の強いイシメール少年が、
兵士となって心を失っていく過程です。
心を麻痺させるために、使われる多量の薬と、麻薬。
それこそ、撃たれても痛みを感じないほどに乱用する、その冷たい感触。
人を殺しても、殺しても、何も感じなくなる心の恐怖・・・。
そこから帰還してもなお、見続ける悪夢が、その体験の悲惨さを物語ります。
戦争をして、まず虐げられ、殺され、奪われるのは、子供や弱い立場の
人間。それまで、生きてきた何もかもを奪われて、「人」であることも
売り渡さなければ命を引き換えにしてしまう現実・・・。
この「現実」の重さは、やはり、誰もが知っておかなければならない事なのだと
思う。知って、そこからどうするのか。それは、すぐには答えの出ないことでは
あるけれども、まず、知らなくては。そう、心から思います。

このイシメール少年が、戦争で硬く閉ざした心を開くきっかけが
戦争前に愛していたラップミュージックだったということに、私は
泣いてしまいました。人を殺し、人を傷つけ、どこまでも残虐になれるのも
人間なら、「音楽」という心で、人の気持ちを溶かしていくのも人間。
人という存在って、何なんだろう。

今、アメリカで、子供の人権の為に働いているというイシメール氏が
心から安らかに眠ることができる夜は、あるんだろうか・・。
この物語を、彼が書かなければならなかった、その心情を考えると
辛くて仕方ないのだが、この「書く」という行為で、きっと一つの安らぎを
持ちえたかもしれない、と祈るような思いで願う。
書くことは、昇華させることだから。世界中の人が、この彼の記憶を
共有することで、少しでも何かが動けば、世界は変わるかもしれない。
たくさんの方に読んでいただきたい本です。

おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php

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