ルール! シンシア・ロード おびかゆうこ訳 主婦の友社

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どうどうと「自分」でいることって、けっこうむずかしい


これは、この本の惹句だけれども。
これは、ほんとに難しい。
・・大人になっても。いや、大人になって
いろんな価値観にもまれてしまうと
ますます難しくなってしまうことかもしれない。
私には、主人公のキャサリンの戸惑いや悩みや
しんどさが、この年齢差をもっても他人事じゃなくて(笑)
わかるなあ・・と彼女の心に寄り添いながら読んで
しまいました。そして、同時に、若さの持つしなやかさと
勇気が、うらやましくもありました。

キャサリンは、12歳の女の子。自閉症の弟・デービッドがいる。
親友が旅に出ていて、ちょっと詰まらない夏休みなのだが
隣に、同じ年の女の子が引越ししてくる。
仲良くなりたいと思ってるんだけど、デービッドの事で、気後れ
したりして、どうもうまくいかない。
一方で、デービッドの通う病院で、キャサリンは、うまく言葉が
話せないジェイソンと知り合い、彼のために言葉のカードを
作り出す・・。

タイトルの「ルール!」は、デービッドが生活をおくるために
決めている、様々な決め事。自閉症の人は、不測の事態を嫌う。
自分で決めたルールの手順を踏むことで、安心して行動できる。
デービッドのために、キャサリンはそのルールをノートに書いている。
でも、そうやって努力したからと言って、いつも物事が順調に運ぶとは
限らない。「普通」のルールと、デービッドは、違うルールで生きているから。
キャサリンは、デービッドのそのルールを認めながら、やっぱり、
その違いの間に立って、心が揺れて傷ついてしまう。
それは、デービッドを見る、他の人の目を、意識してしまうから。
彼らの「きのどくね」「あの子、どうしちゃったのかしら」という
視線に、傷ついてしまう・・このあたりを、作者のロードさんは
実にきめこまやかに、深い眼差しで描き出しています。

「家族の中に特別な助けを必要とする子がいると、やはり大変で
ときには胸のつぶれそうなほどつらいときもあります。
でも、その分、大切なことにいっぱい気づかされますし、楽しいことや
感動することもたくさんあります」
と、ロードさんは後書きで書いてらっしゃいますが、そのキャサリンの
大変さは、家族というものが必ず持っている普遍的なものでも
あると思うんですよ。「普通」っていうものを、誰が決めたのかわからない
ですけどね。その「普通」の中にいると、気づかないもんですが、
自分が、もしくは、家族が、その「普通」の範疇の外にいると
何でか知らないけど、外の世界に対して気後れしてしまう。
そして、ほんとに、何一つ問題のない家庭なんて、ないんじゃないかしら・・。
と思ったりするんですが。皆、何かしら、ついつい、事情を説明したくなかったり
説明するのがしんどかったりする事があるでしょう。
でも、そのしんどさは、結局のところ、自分の心が生み出すしんどさでもあるわけです。
キャサリンが、友達になりたいと思っているクリスティに、デービッドの事や
友達のジェイソンの事がうまく話せなくて、切ない気持ちになる。
そんな自分の気持ちの中に、「よわむし」が隠れていることを、
ジェイソンが教えてくれるんですね。

人間って、面白いもので、気が合う、合わない、というのは理屈じゃない。
言葉を自由にかわすことができるクリスティとはうまくお喋りできないのに
カードを使わなければ話できないジェイソンとは、面白いように
心が通じていく。その中で、ジェイソンに次々と言葉のカードを作っていく
キャサリンの感性の鋭さは、さきほどのロードさんの言葉の中にあったように
デービッドからの贈り物かと思うんです。キャサリンは、いつも、うまく
言葉が使えないデービッドの気持ちを考えながら生きている。
絵本の言葉を、いつもくりかえすデービッドですが、その時々で、同じ言葉に
いろんな気持ちが込められていることを感じているキャサリンは、
言葉にならない人の気持ちを感じることに長けているんです。
だから、ジェイソンの言いたいことを察することができる。

「言葉・ない・いちばん・つらい」というデービッドの気持ちを、
キャサリンは理解することができる。それは、生きる痛みを知っているから。
「言葉」の大切さと、「言葉」にならない事の大切さ。
わかりあいたいという意志が、勇気を生むこと。
世間や、自分の心が勝手につくりあげたルールに囚われずにしなやかに
生きることは難しいけれど、そうするだけの価値はあるんだよ、っていう
事を、声高にではなく、「普通に」語った物語だと思います。
読むと、きっと、心のどこかが、楽に息をする。
物語は、人の心を解き放つ魔法を持っていますね。

この物語は、2007年に、アメリカでニューベリー賞を受賞しています。

おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php




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この記事へのコメント

shoko(ゆらゆらゆるり)
2009年02月11日 09:58
ご無沙汰してます。

この本、とてもよいですよね。
原書で読んで惚れこんでいたのですが、邦訳を読んでもやっぱりほろりときました。

ちょっと多忙なので、なかなかブログには載せられないのが残念なのですが。
ERI
2009年02月12日 01:54
>shokoさん
こんばんは♪コメントうれしいです(≧∇≦*)
お忙しいんですね。お体に気をつけてくださいね。
季節の変わり目ですし。

この物語、良かったですね。原書で読めない私は、翻訳してくださる方々にいつも感謝です。
思いを伝え合う、っていう事の難しさと可能性を感じました。いい作品には、背中を押してもらえる力を感じますね。