儚い羊たちの祝宴 米澤穂信 新潮社

画像久しぶりに読んだなあ、米澤さんを。
ブラック&クラシックな味わいのミステリー連作。
「お嬢様」とか、「旧家」とか、「座敷牢」とか、
いやー、懐かしくて嬉しい(笑)
大体、ミステリー上においては「旧家」という場所では
殺人事件が起こる、と相場が決まっていますから(笑)
横溝正史、エドガー・アラン・ポー。ディクスン・カー。
江戸川乱歩。いいですねえ、花粉にまみれた脳が
くらっとする(笑)そんな古くて暗いミステリのかほりが
漂いまくりの5篇です。

今回のキーワードは「使用人」ですか。
今の時代には、まずお目にかからない「使用人」。
使うものと、使われるもの。その関係が、まず、ミステリアスでは
ありますね。日常生活に、深く上下関係が関わってくる不思議。
そのいびつさを、うまく謎とからめて書いてあります。
どの短編も、非常にブラックで、くらーくて(笑)
スパイスが効いていて、お上手でした。

「身内に不幸がありまして」


ラスト一行にやられました(笑)
あ、そういう事だったのね、やられたわー、と言える楽しみを
教えてもらえるのは、ミステリの醍醐味ですね。
お嬢様の抑圧された悪夢。
これは、お嬢様だから、いいんですね(笑)
『夜歩く』『ドグラ・マグラ』『夢遊病者の死』『外科室』・・・。
こういう、悪い夢のような小説が大好きだった頃があった。
江戸川乱歩って、ほんとにドキドキしましたね。
『人間椅子』を詠んだのは、中学生の頃だったか。
なぜか、本を読んでいると「凄いねー」と褒められましたが
『人間椅子』の中身を知ったらどんな顔されるんやろ・・と
思ってました(笑)あとねえ、『日本文学全集』をよく
学校で読んでたんですが(他の本が図書室になかった・・)
谷崎の『鍵』や『卍』を中学の教室で読むのは、非常にスリリングでした。
今から考えると、やな中学生ですわ・・。
ほんと、本読みっていうのは、致し方ない動物ですね(爆)

「北の館の殺人」

資産家の隠し子。座敷牢のような館。
これも定石ながら、なかなかひねってあって
一筋縄ではいかない感じが、面白い。
財産争いに毒殺・・と、とってもベタなんですけどね。
そのベタさを逆手に取る、面白さがあります。


「山荘秘聞」

私は、この短編が好きかな、この中では。
山荘、雪山、遭難、カンニバリズム。
それが、自分が自分が生き延びるためではなくて
自分の仕事欲、自己顕示欲から行われる。
世にも醜い行為なんですが、その動機にやけに
説得力があるのは、米澤さんの筆力ですね。
自分のプロフェッショナルな能力を誰かに見せたい。
発揮したい。間違った方法でも・・
人の心の裏側に、張り付いている暗愚を
うまく利用した作品。「ミザリー」を思い出しますが、
この主人公のハウスキーパーはいたって冷静。
この、静かな狂気の圧力がみせどころですね。

「玉野五十鈴の誉れ」

「本」というものが、結ぶ共感って、強いものがありますね。
ある意味「共犯者」に近いのかも。同じ小説を読んで
ああだこうだと言い会う仲間というのは、一種特別なものが
あります。まず、その絶対数が少ないこと。
そして、「本」の世界に惑乱させられる快感を
共有する・・という意味において、やはり共犯者なんですよ(笑)
このお嬢様と五十鈴、二人の関係が、まさにそれですね。
「始めちょろちょろ中ぱっぱ・・」という歌とからむオチが見事。

「儚い羊たちの祝宴」

美食のいきつく所って、どこなのか・・と思うと、
どうも、カンニバリズムにたどりつくらしい。
禁忌を食する・・という快感にまさるものなし、なんでしょうか。
一番有名なのは、レクター博士でしょうねえ・・。
この「アルミスタン羊」の出てくるスタンリイ・エリンの「特別料理」を
読んだのは、けっこう最近ですが、やっぱり面白かった。
私自身は、あまり・・というか、全然美食家ではないですが
美食を追求した小説は好きです。
谷崎の、何ていうタイトルだったか、少女の指を口に含んでいる
うちに、それが白菜の煮物になる小説は凄かったですねえ。
ぬらぬらで、官能的な文章の手触りが怖いほどでした。
そう、究極の美食は、「頭で食べる」ものなんでしょう。
となると、ちょっと美食は小説に対する偏愛に通じるものがある。
観念を食べる、妄想を食べる。その官能と後ろぐらい喜び。
バベルの会の人たちが共有している、そういう後ろぐらい
夢を、食べることが最高の美食ということなのかもしれないですね。

美食、料理というのは残酷なものです。
この厨娘の料理したのは、何であったか。
どんな料理だったのか、料理されたのは、誰か。
それは見事な手順で・・(以下省略)(笑)
だってね、私も今日鰯のフライを作りましたが。
十二匹の鰯の頭を次々と切り落としていくのは
見ようによっては残酷そのものですから・・。
こういう残酷さから、目をそらして「こわーい」とは思わない。
人間って、こわいもんです。
米澤さんのこういう暗さは、割と好きですが、好みが分かれる
ところかもしれませんね。
黒いミステリや、奇妙な味の小説が好きな人には、たまらない
小説かもしれません。

おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php










ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

2009年03月24日 22:32
ERIさん、こんばんは(^^)。
私も昨日、鰯の頭を落とし内臓を抜き、手を血だらけにしました(笑)。うわ、スプラッタだ~。
あの記録を読み、バベルの会を復活させたのは・・・身の内に恐るべきものを秘めたあの娘でしょうか。
カニバリズムは・・・苦手ですが、この短編集はよかったです。
ラストで度肝を抜かされたり、陰惨な結末なのにすっきりしたりと、変な読後感ですが。

由里子
2011年12月02日 23:59

この本、ワタシもだいすきです。
ワタシは北の館~の、何故か最後ゾッとする感じがとてもハマりました(*´ω`*)
ERI
2011年12月19日 00:21
>由里子さん
長らくお返事もせず失礼いたしました。
米澤さんのこういうミステリ、楽しいですよね(*^-^*)今年のこのミスにも、ちゃんと上位入賞でさすがです。
これに懲りず、また、遊びにいらしてくださいね!