コロヨシ!! 三崎亜記 角川書店

画像凝りに凝った長編。
いつもながらの、この世界とは少しずれた感じの
仮想空間が舞台なんですが、三崎さんの描き出す異次元は
何だか、いつも懐かしい。
これまでの三崎さんの作品を読みこんできた読者には
軽くデジャブも誘う、彼ならではの世界です。
三崎さんの、この設定の面白さには、いつも唸らされます。
今回のテーマは、掃除。
この掃除は、私たち主婦が常日頃苦しんでいる(笑)掃除とは
起源としては同じなのですが、全く別ものです。
その、似て非なる世界を見事に構築し、競技としての哲学を
確立する所まで練り上げてある事に、感嘆します。

主人公の樹は、高校2年生。
高校の掃除部に在籍している。「掃除」という競技は、歴史的な
意味合いから、制限活動スポーツとして位置づけされているため、
高校三年間の後は活動できないスポーツ。
しかし、幼い頃から「掃除」という競技に親しんできた樹は、掃除という
競技を極めたいという欲望がある。
しかし、どのような形で、「掃除」という競技を極めるのかわからぬまま、
悶々とする日々。州大会で優勝した彼は、全国大会に出場するが、
そこで、直轄校の「掃除」と、自分との差に打ちのめされる。
そこから、樹の限りない挑戦が始まる・・。

この「掃除」という競技。脳内で必死に展開していたんですが、
とても魅力的です。武道と、新体操が合体したような感じ・・と言って
しまうと、ちょっと違うんですが(汗)三崎さんの中で、この「掃除」という
競技が、歴史や奥行きを持つ熱を帯びた存在として、考え抜かれている。
だから、見事に脳内で再生されるんですよね。それが楽しくて、知的興奮を
誘います。その、映像的な美しさが、まず素敵。
そして、もう一つの要素として、このスポーツが、抑圧された存在であるという事。
この樹の世界は、疑似日本のような、三崎さん独特の世界ですが、そこにおいて
このスポーツは、ちょっと後ろ暗いものなんですね。
国の負の歴史、影の部分と繋がりがある。また、樹がアルバイトをしている、
夜の歓楽の世界とも、重なる。また、居留地という、裏の世界とも通じたものでもある。
そういう影の部分が持つ謎が、また読者の興味をそそります。
三崎さんは、全てを説明しない。だから、異世界にタイムワープした私たちは
樹やクラスメートの言葉から、少しずつこの世界の事を必死に解読していく事になる。
想像力が活性化するわけです。その、ビリビリと立った想像力に映像を結ぶ
樹の「掃除」する姿は、とても魅力的です。
夜のクラブのような所で展開されていたりと、キワモノ感もいっぱいなんですが(笑)
そのキワモノ感も含めて、想像するのが楽しいというのが、いいですね。

何度も、何度も壁にぶつかりながら、その壁を、自分の肉体とまっすぐな情熱で
超えていく。抑圧され、簡単に認められるスポーツではないからこそ、
その闘いは熱を帯びる。突き詰めようとする抗いの中で成長する姿が王道ですね。
しかし、この、やる気がなさそうでお腹の出た部活の顧問といい、同級生で
運動神経のいい天才がいたりするあたり、スラムダンクを思い出してしまうんですが。
そして、この武道的なところは、バガボンドかな~とか、三崎さんの読書傾向を
少々想像してしまうのが、私の悪い癖ですね。
しかし、そのリスペクトを、「掃除」という独特の競技に結びつけているあたりが
三崎さんの面白さだと思います。

SFとしての、異世界にうつるからこそ見える「人」の様相の面白さ。
そして、若者が壁にぶつかりながら大きくなっていく、成長譚としてのときめき。
「道」をきわめていこうとする闘いがもたらす、「生きる」という事への問いかけ。
「掃除」のパートナーとして、かけがえのない存在になっていくだろう偲との出会いも
含めて、たくさんの楽しみが詰まっている一冊でした。
「コロヨシ!!」は、この掃除という競技の、始まりの合図。
その掛け声のように、潔くて、爽やかな読後感でした。
三崎さん独特の世界から届けられた青春に、ドキドキしました。
三崎さんは、ほんとに引き出しが多い。次はどんな風に、驚かせてくれるか、
とても楽しみです。

おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php

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この記事へのコメント

2010年09月09日 20:53
ERIさん、こんばんは(^^)。
三崎ワールドと言えば、ひそかに音が鳴り響くような郷愁・・・と勝手に思ってたのが、気持ちよくひっくり返されました。
王道の成長物語も、政治圧力の暗躍も、うまい具合に絡まっていて、とっても面白かったです!
樹はまだ〈ネオ・掃除〉の世界に足を踏み出したばかり、これからいろんな人やことに出会うでしょう。そういう物語が、続編に描かれてたらいいなぁ~、と思います。
ERI
2010年09月12日 23:21
>水無月・Rさん
掃除、というものがこんな競技になるんだ、という事だけでも読んでいてドキドキしました。三崎さんの頭の中、覗いてみたくなりますね~♪
やっぱり青春っていい。そう思えた気持ちいい作品でした(^◇^)