洋梨形の男 ジョージ・R・R・マーティン 中村融訳 河出書房新社

画像この「奇想コレクション」のシリーズはチェックする事が多いです。
いわゆる「奇妙な味」の作品が読めるので楽しみにしています。
何しろ、外国語に疎いので、もう翻訳&編集して
下さる方のセンスに頼ってしまうしかない、外国作品・・と
いうことで(笑)柴田元幸さんとか、岸本佐知子さんとかの
名前を翻訳で見ると、嬉しくなりますが。
この中村融さんも、たくさんの作品を訳してらっしゃる方ですが
こういう、しゃれた味わいのものを集めて下さるのは、とても
嬉しい。この「洋梨形の男」というタイトルを見ただけで、
「面白いんちゃうか」と期待したんですが、ドンピシャでした。
短編が6つ収録されています。
どれも、中村さんもおっしゃるような、ブラックな要素たっぷり。
ふと足を踏み入れてしまった穴に、足を突っ込んでしまった
主人公たちが何とも気の毒なんだかが、SFやホラーの要素を
小気味よく散りばめた上手さに、思わずニヤリとしてしまう。
「あり得ない話」だよなあ・・と思いながら、ひょっとして、と背筋を
寒くする、現実と非現実との境目感が上手いんですよねえ。

例えば、「思い出のメロディー」という短編には、「昔の困った友人」
という、誰もが「ああ・・いるよ」と自分の人生に思い当たる、
困ったちゃんが出てきます。その人物造型のうまいこと(笑)
うらぶれた情けなさと、なぜか相手に言うことを聴かせてしまう
押しの強さ(笑)お人よしの相手を見抜く独特の嗅覚を持った
困ったちゃんの感じが、着ている洋服ひとつからでも濃厚に漂う。
ああ・・・こりゃいかんよ、と思っているうちに、右往左往してる
主人公の困惑に、ひきずり込まれてしまうんですよねえ・・。
そして、右往左往しながら、いつしか相手と自分が魔法の鏡のように
逆転していく。え?困ったちゃんって、ほんとは私なん?という苦さが
また、読後感のいい意味での脱力を誘います。
あー、これ、小説で良かったなあ・・と。

でもね、こういう怖さって、小説の中でくらい、味わっておいた方が
いいのかもね。だって、今の世の中、この小説より怖いことがいっぱいある。
隣は何をする人ぞ、って言いますが。
自分のすぐそばに、狂気やぽっかり空いた暗い穴があること、
忘れちゃいかんなあ・・と、思います。
それを知らない人は、ころっと騙されちゃうこと、あるんじゃないか。
ちょっとねえ・・実際に怖いことが最近身近であったんで、
この物語が身に詰まされました。
事実は小説より奇なりって言いますが、私は怖いことは、小説の中だけで
いいですね。ほんと・・人間って怖い。

最後の「成立しないヴァリエーション」のどんでん返しがとても小気味良かった。
追いつめた積りが、自分が追い詰められる。
最後に、白と黒がひっくり返る楽しさ、満喫しました。
スリラーファンにも楽しい一冊かも。

おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php

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