まえがみ太郎 松谷みよ子 福音館書店

画像お正月のお話を一つ。
えらく昔の本です。私の持っているのは、1966年刊行のもの。
昔、幼い頃に読んだ本を、そのまま持っているという(笑)
漢字を覚えたての頃に読んだんでしょうねえ。
いちいち、漢字に線を引いて、自分でルビを振ってるのが笑えます。

日本の民話をベースにしたお話かと思いますが、それだけに
時代を超えた力のある作品だと思います。
松谷みよ子さんは、知らない人はいないんじゃないかと思うほど
有名な、たくさん作品を書かれている方。
日本語が簡潔で力強い。昔の日本語教育を受けた方らしい
折り目正しさ、美しさがあります。そのせいか、読んでいると
すうっと気持ちが晴れて心地いい。お日様が東の空から
昇ってくるのを仰ぐような、まっとうさがあります。
民話的な冒険譚の王道を行く心地よさなんですよね。

ある大晦日の雪深い日。風ふかん村に住む貧しいじいさまは、
道で一人の老人を拾います。どこにも宿を断られた老人を、
じいさまは、ばあさまの待つ家に連れて帰り、3人は愉快に
年越しをします。その老人は実はお正月さん。
赤子(赤ん坊)が欲しい、というじいさまとばあさまの願いを
聞き届け、お正月さんは姿を消します。
その赤子が、まえがみ太郎。彼は村一番の元気者に育ちます。
彼の育った村は、高い山に囲まれた村。その山のひとつ、
どうどの山からは、いつも悲しい叫び声がして、その度に村が
ぐらぐら揺れ、火のような石が降ってきて作物を荒らすという貧しい村。
太郎は、誰も近寄らないどうどの山に行き、山が荒れる理由を探そうと
くろという年老いた馬を連れて旅立ちます。

お正月さんというマレビトから授けられた子、という太郎は、運命の子どもなんですが。
彼は理知的で、ある意味、現代的な世界観を持っています。
自分の目で何事も確かめないと気が済まない。ウシオニや山んじいという妖怪たちに対しても、
先入観を持たずに自分の眼差しで彼らを見ようとする。
そのくせ、正義感が強くて、どうどの山に住んでいて、長年飛び立てずに苦しんでいる
火の鳥の苦難を、「こんなん自分には無理」と思わずに「自分が救う」と決めて、
旅立つ強さも持っている。かっこいいんですよねえ。
幼い頃、ほんとにダメダメの塊だった私には、太郎はほんとにヒーローでした。
そして、強くて潔い太郎の傍には、「つばめとび」という賢い知恵を授けてくれる馬がいる。
これもいいんですよ。幼い頃、この「つばめとび」にどんなに憧れたことか(笑)
強くて優しいヒーロー、叡智を持つ同伴者、美しい伴侶を得る闘い、化け物退治、
龍宮のお姫様、欲深な長者さまの村の救済・・等々、民話的な楽しみがぎゅっと
詰まった一冊ながら、その全てが見事に構成されて無駄も無理もありません。
物語に身を任せ、はらはらドキドキ、読み終わったら気持ちが明るく、スッキリする。
小説を読む原始の喜びが素直に味わえる、子どもと一緒に読んで楽しい本。

中でも私が一番好きなのは、最後に火の鳥が山から飛び立つシーン。
太郎が苦労して手に入れた命の水を、どんなに降りかけても火の鳥は飛び立てない。
そこで、太郎は、お正月さんが言った一言を思い出す。
火の鳥には捨てなくてはならないものがあるらしい。それは、彼が溜めこんだ黄金の山。
その宝物を守ろうとしている事が、彼を山に喰いとめているんですよね。
それを聴いて迷う火の鳥だったんですが、最後妄執を断ち切って、鮮やかに空に
飛んでいくんです。子ども心にも、かゆい所がごそっと消えるようなすかっとした気持ちに
なったのを覚えています。そして、これは、今読んでも色んなことを考えさせられますね。
あー、私もけっこう欲深やから、あかんかもしれん。と、これもちっさな頃に思った事でした(笑)
もうねえ、ひとかけらのチョコレートをネタに、妹と取っ組み合いのケンカをしてましたからね。
それだけに、「凄い!」とこの火の鳥と太郎に感心したんですよ。
この、ドラゴンや竜が黄金が大好き・・というのは、外国の作品でも読んだことがあります。
世界共通の認識なんでしょうかね?
古い作品ですが、今でも手に入りますし、図書館には必ずあると思います。
今年は、古い作品もいろいろ読んで、レビューを書いていきたいと思っているので、
これはその事始め。

2011年。いい年にしたいですね!

1965年刊行
福音館 

今は講談社や、偕成社から復刊が出ています。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント