ノルウェイの森 映画と原作

画像映画『ノルウェイの森』に行ってきました。
映像が非常に綺麗でしたねえ。
特に、直子とワタナベが草原を歩くシーン。
波打つ草原に吹き荒れる風が、見事な心象風景になって
二人を通り過ぎていくのがわかりました。
あのシーンだけでも見る価値がありました。
直子役の菊池凛子も、ワタナベくん役の松山ケンイチも
ものすごく頑張って熱演してはりましたし。
特に松山くんが、あのセリフとして非常に難しい春樹語を
きちんと気持ちを込めて語ってはるのに感心しました。
静謐で、孤独で、一歩世の中から引いた所にいる感じも
よく出てました。

しかし!もう、映画としては突っ込みどころ満載で、
昨日親友と夜中に2時間ばかり、その間違いについて
熱く語り合ってしまいました。
この映画は、原作に非常に忠実に作ろうという姿勢で作られていると
思うんです。村上春樹氏本人からも、たくさんアドバイスを貰ったそうですし。
しかし・・それなら、これはしたらあかんやんか!という所が、いっぱいあったなあと。
細かいところを言うとキリが無いんですけど。
まず、小説冒頭の、飛行機の中での回想シーンが映画にはあらへんのです。
あれがないと、何でこの物語が『ノルウェイの森』なんかがわからへん。
音楽が、封印されていたものをこじ開ける。その瞬間がない。
この物語は、回想である事が大切なんだと思うんです。
38歳の「僕」が、過去を語る。時間が記憶を洗い直した上で、やっと見えたものが
この物語なんやと想うんですよね。大きな渦の渦中にいる時には、
人はその全貌は見えない。語れない。
何年も過ぎて、やっと見えてきたもの。見えてしまったという事は、失ったということで・・。
その距離感が生み出す切なさと喪失の深さがあるからこそ、この作品は、
永遠の青春小説なんだと思うんですが。
それを示唆する冒頭が無い・・のは、如何なものか(笑)

あと、年齢を重ねた女として。この映画でのレイコさんの描き方は、悲しすぎますよ。
レイコさんは、この物語ではとても重要な人物です。
物語の、進行役と言ってもいい。直子という「死」の領域にいる人と、ワタナベくんを
仲介する役割の人。豊かな内面と、危うさと、音楽をする人特有の感受性を持つ
とても魅力的な女性なんですが、映画のレイコさんは、全く魅力的じゃない。
煙草も、えらくまずそうに吸ってはる(笑)ギター弾くシーンが一か所だけ。
しかも・・・下手だよ(泣)音楽の求心力がないと、この物語の最後、あの二人だけの
お葬式のシーンはどうなるねん、と思ったら無かったし。無いんや!
延々とレイコさんがギターを弾いて、死んでしまった直子を二人で思う、あの儀式が
無いまま、終わってしまう。しかも・・レイコさんが、「お願いだから抱いて」と
ワタナベくんに言って、ワタナベくんが「本気ですか」とかって返事するという、
なーんの魅力もないシーンになっとりますがな。
最後、原作で二人は抱き合うけれど、あれは音楽の力を借りて、痛みを抱えながらも
また生きることに向かおうとする、前を向くための営みなんですよ。
でも、あれじゃあ、中年のくたびれた女のレイコが、若い男の子にお慈悲で抱いて
もらうという、とっても、とーっても情けない感じになってしまってるし。
ちょっとー。あれは、あかんよ。レイコさん、まだ38歳なんだよ。やめてよ!と
レイコさんより年上の私は、怒りに燃えました(笑)

あとね・・。直子がワタナベくんとたった一回寝る、誕生日のシーン。
直子の部屋が、可愛いすぎ。あんなに可愛いあれこれを揃える心の余裕があるなら
直子はあんなに狂わない・・とか。突撃隊が、書き置きを置いていなくなるけど、
あれはあかんやろ、突撃隊は突然、何の前触れもなくいなくならんとあかんのです。
でないと、ワタナベがあの時代に抱えていた孤独を、無意識に癒していた突撃隊の
存在が際立たない。ただの友達やないから、印象的なんやん、とか。
緑がねえ。悲しいことに、ただの女の子になってしまってる。
なんで、ワタナベくんが緑に惹かれていくんか、まったくわからん事になっとります。
病院での、キュウリを緑のお父さんに食べさせるシーンがない。
病院で、ご飯を緑がいっぱい食べるシーンもない。
つまり、緑という女の子の人生が見えてこないんですよねえ。
その他、昨日、いっぱい、いっぱ~~い、突っ込みどころを話しあって、それはそれは
楽しい時間を友人と過ごしました。そういう意味では、ほんとに有難い映画でしたが。
いっそのこと、東京を舞台にせずに、全く違う国のお話にしてしまった方が良かったかも。
好きなシーンを綺麗にとって、繋ぎ合わせました・・という感じになってしまったように
思います。もったいないよなあ。


この映画を見るために、何年かぶりで原作を読み返しましたが。
この時代からも、青春からも、私は遠くなってしまったなあと。
この時代、高度成長時代のエネルギーが日本に満ち溢れていた。
学生運動が吹き荒れていた時代です。女と何人寝た、とか、そんな事が自慢になった。
久々に読み返したら、枯れてた印象のワタナベくんでさえ、やることはきっちりやってます(笑)
その中で、どうしても「死」に囚われていった、同じ熱を持てなかった人たちを描いた。
そこが、キモやったんやなあ。若い頃には、青春時代には、生と死はくっきりとしています。
あの頃は、日本も青春時代やった。今、私も、私の周りも、この日本も、生と死の境界は
昔ほどくっきりとしていない。まさに、流れてしまった時間と、失ってしまったものを
痛感しました。この映画を機会に、原作を読みなおしたのは良かったなあ。
・・・あ、原作にも、突っ込みどころいっぱい発見しましたが(笑)
それでも、やっぱり、この物語は、名作ですね。心震える。

むっちゃ語ってるやん。
結局、すっかり楽しんだ、ってことですね(笑)
ねえ、Sちゃん。

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この記事へのコメント

S
2011年01月07日 22:36
わはは…確かに「すっかり楽しんだ」のかも~♪
私も今日付のブログで思いっきり語ってしまいましたわ。

この記事にリンクはらせてもらうね!
ERI
2011年01月08日 00:28
>Sちゃん
語ってるね~(*^m^*)(笑)私もリンク貼りました。
心通う友と、いろんな事に突っ込むのは至福の時間でございます。ありがとね♪