しっぽちゃん 群ようこ 角川書店

画像「しっぽちゃん」というタイトルを見ただけで、これは読もうと心に決めました。私もよく、うちの猫さんに、「しっぽちゃん」「おしっぽさん」と呼びかけているので(笑)いいですよね~、動物のしっぽ。私もうちの猫さんのしっぽに執着しています。名前を呼ぶと、パタパタっと動くしっぽちゃんは、私の宝物です。

しっぽのある、愛すべき生き物たちと人間の、とても幸せなお話が10篇。ベタ甘と言っていい、「うちの子」とのラブラブの短編で、読んでいると幸せで泣けてくる。群さんの動物ものはいつもとても楽しいのだけれど、これもまた格別のハッピーぶりです。そう、「ハッピー」って感じなんですよね。バカ、っていう感じ(笑)そのバカさ加減がたまらなく愛しい物語ばかりです。もうね、多分これはペットを飼ってる人なら誰でもそうでしょうけど、「うちの子」が一番可愛いんですよね、これはもう絶対的に。

物言わぬ、心だけ通じるしっぽのある子が近くにいてくれる・・これは一番の至福かもしれません。だって、人間は心変わりするじゃないですか。今日好きでも、明日はそうじゃないかもしれない。でも、しっぽのある子たちは、違います。一緒に暮らしている人間に、いつも変わらぬ想いで寄りそってくれる。私は、お散歩してるワンちゃんと飼い主さんを見るのがとても好きなんですよねえ。おばあちゃんと一緒に、ゆっくりゆっくり歩いているラブラドールや、ちっさい女の子とピョンピョン跳ねてるトイプードルや、連れてるおっちゃんとそっくりな顔をしてひたすら歩いている柴くんなんかと見ていると、それぞれの「うちの子」ぶりが想像できて、いいなあ・・としみじみします。ちっさいけれど、かけがえのない幸せの形ですよね。そのかけがえのなさが、この物語のどれにも滲んでいて、笑いながら読んでいるうちに、ふっと泣きそうになってしまいます。辛いとき、苦しいとき、しっぽのある可愛い子が近くにいてくれることが、どんなに救いになることか。人と暮らしてお互い幸せになるのは、なかなか大変なものがありますが、しっぽのある「うちの子」は、人の人生の傍にいる、かけがえない宝物だと思います。

今回の震災で・・・辛い想いをした「うちの子」たちが、たくさんいます。特に、原発の避難区域にいる子たちの悲惨さは、見たり聞いたりするだけで、胸が張り裂けそうになってたまらない。愛するペットの身を案じ、辛い想いをされた方たちの心はいかばかりか。そして、置いていかれてしまった子たちは、どんなに辛かったか・・。ささやかな小さな幸せは、一番先に踏みにじられてしまう。でも、私たちにとって一番大事なのは、こういう小さなものたちと心重ねる、心寄せる瞬間なのだと、この物語を読んで、改めて思ったことでした。

「こんな調子で八人家族はのんきに暮らしているのである」

これは、最後の短編の締めの言葉。犬と猫と、カメと人間がのんきに暮らす。これを、至福と呼ばずして何と呼ぼう・・。

装丁も挿絵も、とても可愛くて優しい雰囲気。誰が読んでも心穏やかに楽しめる一冊だと思います。

2011年3月刊行
角川書店

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