ヴォイド・シェイパ 森博嗣 中央公論新社

画像何と、森さんが剣の世界を書かれるとは・・意表を突かれました。意表を突かれましたが、これがまた森さんらしい、面白い世界になっています。
主人公は、物心ついてから、一歩も山から下りることなく、カシュウという剣の達人と暮らしていた若者・ゼン。彼には親もなく、カシュウ以外の人間と知り合いもおらず、一振りの剣以外何も持たない。カシュウが死んでしまったことをきっかけに山を降りたゼンは、初めて人間の世界に足を踏み込む。
何も持たず、カシュウ以外の人間のことを何も知らず、ただ呼吸するように剣を使うゼンの目は、先入観も既成の価値観もない、澄んだ鏡のようなもの。そこに映るものを、ただ淡々と綴る森さん独特の文体が、とても心地いい。
人の名前もすべてカタカナで書かれているので、まるで無国籍映画のような趣。設定も日本であるような、そうではないような・・パラレル・ワールドのような匂いもあります。とにかくまっさらの状態で人の世という異世界に舞い降りた、ゼンという宇宙人が体験するあれこれを、森さんらしい無機質で、かつ独特の情感のある文章で綴ってある。そうすることで、あぶり出しのように「人間」という生き物の奇妙さが浮かび上がってくるようです。そこが、面白い。そして、人間と関わるうちに、そこはかとなく体温が少しだけ上がるような佇まいでゼンが情を纏っていく。上手いですよねえ。だって、続きが読みたくなるじゃありませんか(笑)
「episode Ⅰ」「episode Ⅱ」という目次を見ていると、まるでスター・ウォーズのようでもありますね。そうそう、冒頭に、新渡戸稲造の『武士道』の一節が英訳と原文で揚げられていて、これもまたスター・ウォーズの冒頭を連想します。ゼンはどうやら高貴な生まれのようだし、これからの旅でフォースを磨くのかしら(笑)これからの展開が楽しみな一冊でした。

2011年4月
中央公論新社

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