おかしな本棚 クラフト・エヴィング商會 朝日新聞出版

画像これはもう、本好きにはこたえられない。特に、作家さんなど本に関係するお仕事をされる方の本棚に、興味しんしんの、私のような輩にとっては、猫にかつぶし状態で何度も何度もこの中におさめられている本棚の写真を眺めてうっとりした。クラフト・エヴィング商會というのは、吉田浩美さん、吉田篤弘さん、という多才な御夫婦のユニットです。それだけに、本たちに貫かれている美意識があって、気持ちよく混沌で、本棚がそれだけで一つの物語なんですよ。

あるとき、どうも自分は本が好きなのではなくーいや、もちろん本も好きなんですがー本当に好きなのは、本をおさめた本棚や本立ての方ではないかと気がついた。



ほんとに、本が並んでいる、というのはなんて魅惑的なんだろう。図書館でも本を並べるけれど、NDC(日本十進分類法)に従って並べているわけで、こんな風に自分の心のままに、美しい風景を作ることは叶わない。そして、自分の家の本棚も、住居的な制約と金銭的な限界があり、想うままに本を買うことも叶わない。大体、私が気に入って買う本は、よく息子たちに持っていかれてしまうことも多いんだ、これが。カポーティは全部。カフカやオースターや、エッセイの類なんかも、「あれ読もう」と思って探してがっくりすることもしばしば・・そんな何やかんやで、私にはこんなに美しい趣のある本棚を作ることは叶わない。もちろん、本を選ぶブックセンスの上でも、叶わないわけですが。東京、という古本屋さんも大きな書店もたくさんある土地柄も違うしなあ・・って、負け惜しみみたいな口調になってる自分に、「どやねん!」と突っ込んでおきます(笑)

「ある日の本棚」「森の奥の本棚」「金曜日の夜の本棚」「美しく年老いた本棚」・・・この本棚に、何が並んでいるか、見たいでしょ?ね?見たいですよね?私、ほんとに涎垂れました(笑)読んだことのない本もたくさんあって、うっとりする。こんな本棚のある部屋で、ぼーっと過ごすことが出来たら、どんなに幸せなと思う。いわば、手に入らない桃源郷を見せて頂いた感じです。この本棚には、ずっと本を愛してこられた過去と、現在と、そして未来が詰まっている。本というものは、時空を超えて旅をするものです。本を開けば、私たちはどんな時間にも、どんな国にも、旅が出来る。その本たちがたたえる気配を、こんなに美しく見せて頂いたことに感動します。

そして、そして。いつも「思うように本が読めない」と焦ってばかりいる私に、この本は素晴らしい助言をくれました。
本なんか、読めなくて当たり前。「読まなくていいんです。その本がこの世に存在すると知っているだけでいい」うんうん。「どうせ覚えられないから、何もしゃかりきになって読まなくていい」うんうん(涙目)「愛すべきは常に停滞であります。停滞こそを愛したい。あわてふためいて、いついつまでにこの本を読まなけらばならない、というのは大変に不幸です」ああ・・読めない本ばかりがたまっていく私の胸に染みいるこの言葉。吉田御夫婦の読書量と自分の差は、とりあえず置いといて(笑)この言葉が、究極に本に囲まれている人の、一種の韜晦趣味である、ということも置いといて。この言葉をかみしめつつ、私は返却期限のある図書館の本を一生懸命読もうと思います。でも、でも。これから集める本を、実は読まなくていいんだ、と思うととっても心楽しく本が買える気がする。この屈折した気持ちって(笑)死ぬとき、「読みたい本」「これから読もうと思っていた本」に囲まれて死ぬのが、本当の本読みの至福というものかもしれません。まこと、深く果てしない本読みの煩悩に合掌。


2011年4月刊行
朝日新聞出版

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この記事へのコメント

Roko
2011年08月01日 22:33
ERIさん☆こんばんは
この本は、どのページを開いてもステキなんですよね!
それぞれの本棚が魅力的で、ため息が出ちゃいます。
「そこにいてくれればいい」という本もあるのだという文章に、思わず「そうですね」と頷いてしまいました。
ERI
2011年08月02日 21:32
>Rokoさん
コメントありがとうございます(^◇^)
そうなんですよ。素敵なんですよねえ。本棚が風景に見える、ということを初めて発見しました。
「そこにいてくれればいい」という本を、私もこれから集めてみたい・・そんな気持ちにかられてしまいます。眺めていると、とても心ざわめくような、それでいて不思議にやすらぐような、とても楽しいときめきを教えてもらった本でした。
ぱせり
2011年08月02日 22:14
こんにちは。わたしもこの本読みました。
ほんとに素魅力的な本棚ですね。
(ERIさんの紹介もすごく魅力的です~)
そして、わたし、本の魅力を半分もわかっていなかったじゃない、と気がついてしまいました^^
ますます深みに嵌っていけそうな気がして嬉しくて♪
>まこと、深く果てしない本読みの煩悩に合掌。
わたしもいっしょに合掌させてください♪
ERI
2011年08月03日 08:27
>ぱせりさん
おはようございます(^◇^) ほんとに、本の魅力って、その本が「在る」ところからもう始まってるんですね!
読むだけが本の楽しみじゃない。これから始める旅の予感にわくわくする気持ち。いろんなことを想像する気持ち。そんなものも、ぜーんぶ含めて本の魅力だと気づかせてもらいました。うふふ。これからも、ともに本に埋もれてまいりませうね(笑)