紅に輝く河 濱野京子 角川書店 銀のさじシリーズ 

画像『碧空の果てに』『白い月の丘で』に続く、シューマ平原の国々を舞台にしたファンタジー3作目です。国の行く末を左右する運命を背負った王女・・というドラマチックな設定。濱野さんのリリカルな魅力が満載の物語です。そして、いつもいいなと思うのが、登場人物たちがいつも自分の想いに忠実なこと。生まれる時代、国、家庭・・自分がいる場所のルールというものに、私たちは意識する、しないに関わらず左右されて生きているわけですが。大切なことを決断する時、自分の心が欲するところよりも、そのルールを優先させてしまうことがあったりします。もちろん、それが悪いというわけではないんですが、その結果に自分が納得できなかった場合、結構深い傷になったりすることもあるんですよね。濱野さんの物語の主人公は、真摯に自分の生き方を探しながらも、自分の心の声にきちんと耳を傾けます。そこが、とても好きなところ。この物語の主人公であるアスタナも、自分の複雑な生い立ちに苦しみながらも、流されずに自分を貫こうとします。その闘いを支えるのは、幼い頃に出会った運命の恋人であるサルー。彼との恋愛が、またロマンチックで・・YAとしての問いかけもあり、恋愛ものとしての楽しさもあり、盛りだくさんな一冊です。

アスタナは、ファスールの第一王女として生まれた。将来国母として生きるべき立場のはずなのですが、その際の神官である二人が、アスタナの未来について「国を救う」「国に仇なす」と違う託宣を下してしまう。その結果悩んだ王は、同じ時期に生まれたマルマラという第二夫人の生んだ異母姉妹と入れ替えて育てることにする。それは、彼女たちを生んだ夫人たちも知らぬ、神官と王のみが知る秘密だった。幼い頃から利発で、相手の感情や名前を先取りして感じてしまう異能を持つアスタナは、宮廷での王女としての暮らしをすぐに抜け出して森をさまよい、学問を学ぼうとする変わり者として育つ・・・。

男装の麗人というと、オスカルを思いだす古い私ですが(ほんまに古っ!)あのマンガからはやウン十年・・でも、オスカルは押しつけられた男装ですが、アスタナは自分の選択です。アスタナの男装は、自らの出自や、異能を自覚する「自分」と、それをいぶかしむ周りの人々との摩擦に対するクッション・・つまり、自己防衛のようなもの。私たちの若い頃よりも、今の若い世代の方が、圧倒的に男女の性別に対する意識は格段に自由だと思うのですが・・どうも、女の子の世界は、そんなに簡単じゃない、というのが実際のところなのかもしれません。例えば・・今の女の子たちのおしゃれさは、筋金入り。可愛く在るために、親も思い切りお金をかける。みーんな、AKB予備軍のような華やかさです。可愛いものが溢れているのは、とてもうらやましいけれど、反面、私は今の小中学生でなくて良かったなとも思ったりします。物質的な豊かさを手に入れられるかどうかで、友達関係とかも難しい面が出てきたりするんじゃないかな・・とか。あんなに可愛く自分を保つのは、めんどくさかったりするんじゃないかとか(笑)思うんですよね。装う、ということが男子を意識することよりも、女の子同士の人間関係に深く関わるような気がします。また、周りと同じように装うことで、自らを守る・・そんな一面も、あるんじゃないか。ティーン向けの、キラキラのショップを見ると、思わず「目くらまし」を連想してしまうんですが、それは読みすぎでしょうか(笑)光りものの中に本音を隠しておく・・なんてことはないのかしら。だから、アスタナの男装が持つ意味が自己防衛なら、今の女の子がこの物語を読んだときに、やはりある種の解放感、カタルシスをもたらすのではないかしらと思ったことでした。

あと、アスタナと彼女の育ての母であるカミーナの、母と娘の関係の難しさも、やはり女子には永遠の課題かと思われます。自分とは異質な娘、というのは同性であるからこそ理解が難しい。この物語では、母と娘の間に流れる違和感が、血の繋がりの問題として描かれますが、これは実際血が繋がっている方が苦しみの方が大きいんですよね。でも、この相克に同性として自分の問題を重ねてみる・・そんな読み方もあるでしょう。

冒頭に書いたように、こういう様々な問いかけの要素を含みながら、あくまでもロマンティックに、物語としての楽しみがいっぱいなのが、濱野さんの物語の読みどころかなと思います。楽しく読みながら、ふと胸に残るものがある。それが何かは意識しなくても、自分が何かの選択をしなければならなくなったとき、ふっとこの物語が背中を押してくれる時があるかもしれない。アスタナなら、こんな時どうするかな・・と、考えてみる。そんなとき、凛々しい彼女の背中を思い出せるのはとても楽しいことかもしれないな、と思います。そんな時・・どこまでも優しく寄り添ってくれる、サルーみたいな彼氏がいたら(笑)と云うのは、欲張りすぎかもですが、そこが叶うのも、物語の楽しいところ。冒頭の、二人の出会いのシーンの美しさは格別です。ロマン派の乙女に・・もちろん、私も永遠の乙女ですからっ!(笑)

2012年1月発行
角川書店

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