グリフィンとお茶を ~ファンタジーに見る動物たち~ 荻原規子 徳間書店

画像動物、というのはファンタジーと縁が深い。どちらも、「物語」の源流に近いものだからかもしれない。人が焚火の前で子どもたちに語ってきかせた、生のままの物語。そこでは、きっと自然に住まう神々と繋がるものとして、たくさんの動物たちが登場したはずだ。かって、真の暗闇に住んでいた頃、私たちは動物よりもずっと下の存在だったはず。彼らのような運動能力や、嗅覚や、するどい爪や、翼を持たない私たちは、自然の大きさの中ではいつも弱者だったろうと思う。何しろ、つい100年くらい前まで、日本にだってお狐さまや、タヌキに化かされる話はいくらでもあったんだから。私たちがいろんな便利さと引き換えに手放してしまったものが、ファンタジーや動物物語には、生きているように思う。・・・なんて偉そうなことを書いてますが、何しろル=グウィンも、荻原さんも、「答えを持っていない」と書くようなファンタジーと動物との関わりを、自分がわかっているとも思えず(笑)ただ、アメリカと日本におけるファンタジーの優れた書き手である方々の「動物」へのこだわりを、どちらも「ふんふん」と楽しく読ませて頂けて嬉しいな、ということが言いたいわけです(笑)

荻原さんは、自分の読書体験の源流に動物物語があり、それがファンタジーを描くことに結びついてきた、という実感がおありになるらしい。そのあれこれを読みながら思ったのは、出会う人というのは、どんなところを歩いていても、出会ってしまうものなのだ、ということ。荻原さんの幼少の想い出を読んでいると、決して親からたくさん本を与えられたり、読み聞かせをしてもらったりした生活ではないんですよね。自分の家にも、ほんの2冊くらいしか子どもの本、などというものはない。これは私もそうで、母に読み聞かせ、なんてしてもらったこともないし、滅多に本など買ってもらったこともなかった。でも、その頃出会った数少ない本に、荻原さんはとことんのめり込んだだろうことが感じられます。そのへんは、私も同じ。でも、荻原さんと私の違いは、物語への距離感です。私は、とにかく頭からのめり込んでしまう。幼い頃から、物語にとことん同化してしまう私と違って、荻原さんは、その物語を読んだ時に、常にどこか醒めた目をお持ちのような気がします。そのあたりの感触を、「自分は想像力が無いと思っていた」と荻原さんは書いてらっしゃるけれど、あれだけの物語を書かれる荻原さんが、想像力がない、なんてことはあり得ない。強く惹かれながら、こつん、とその物語に埋没しきらない自分を強く持ってらっしゃったのではないかな、と、私は思いました。それが、ご自分で物語を書くということに繋がってらっしゃるのかもしれないな、とも。そのあたりの、物語との対峙の仕方、というのが、私には読んでいて面白かった。

そして、荻原さんが、幼い頃にたくさんのファンタジーや動物物語と、「出会った」ということは、偶然ではなく、やはり必然だったのだろうと思えるんですよ。本は、自分を必要とするものに、「読んで」と呼びかけをします。「そんなアホな」と思われるかもしれませんが、自分が出会った、大切な本たちとの出会いを思い返すと、そうとしか思えない必然があるんですよ。まさに「出会った」としか思えない何かなんですけどね。まさに、本との出会いは人との出会いに似ています。出会うまで知らないどこかの人なのに、出会ってしまうと、その出会いの「縁」に良かれ悪しかれ左右されてしまう。まあ、そんな想いをする人間は、本に対して常に嗅覚を働かせているものだけなんでしょうが・・。その「出会う」ということの大切さに、想いを巡らせる一冊でした。

やっぱり、本は出会うものだなと思います。最近、少々児童文学に対する新鮮な気持ちが、自分の中に失われてきたような気がしていました。それがなぜなんだろうと思っていたのですが、荻原さんがこの本の中で、「大人になってから児童文学を勉強するため、などという動悸でする読書は詰まらない」というようなことを書かれていて、ドキっとしました。ああ・・そうか、と。幼い頃、時間もご飯を食べることも忘れて読みふけったあの物語たちを、私は誰にも「読め」とは言われなかったな、と思いだしたんですよ。やっぱり、出会わなければいけないんだと。「読んで」という、物語の呼びかけに耳を澄ませて、出会っていくべきなんだと気づきました。何だか、最近の迷いが晴れたようにすっきりしました。・・・荻原さん、ありがとう。

2012年2月刊行
徳間書店

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