容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋

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探偵ガリレオの湯川&草薙コンビが出てきます。
純愛ミステリー、ということでどんな純愛なのかな、と
期待しつつ読みました。う~ん、確かに純愛です。
気の毒なくらい純愛。

事件の発端としてはよくある話です。母と娘二人でひっそり
暮らすアパートに、別れた夫がやってくる。金にだらしなく、妻と娘を
食い物としか考えていない男。追い返そうとする母親の靖子を脅す男
に、娘がたまらず花瓶で殴りかかり、なりゆき上殺害してしまうのである。
茫然とする母娘。そこに隣に住む数学教師の石神が救いの手をさしのべる。
彼は靖子とその娘に憧れを抱いていたのである。優秀な数学者である
石神が考え抜いた完璧なアリバイ。それをどうやって湯川が崩していくのか、
というのがこの物語のポイント。

湯川と石神は大学の同窓生であり、在学当時からの知り合いだった。
非常に優秀でありながらも、家庭の事情と孤高を守る性格から、学問の一線から
身を引いた石神。その彼を尊敬している湯川は、彼の犯行を謎といていくことに苦しむ。

この石神の数学者としての性格、つまり世間的な実利ではなく数学という
抽象的な美に心をささげる生き方が、全く見返りを求めずに母と娘を助けようとする
献身につながる。この石神という人物の高潔さが、この物語のバックボーンなんだと思う。
普通ならありえない話。しかし、その石神の特異さが、この物語に真実味を与えている。

彼は数学に対する愛と同じような愛情を母と娘にささげようとする。
しかし、そんな生き方は普通の人間に理解されようはずはない。
そこが悲しい。ごくごく普通の女である靖子には、その気持ちはわからない。
ありがたいと思いながらも、なんだか気味悪く、監視されているようにも思い、
他の男に心引かれてみたりするのである。
恋は思案の外、というけれども・・。もう少しこの靖子という女性が魅力的に
書かれていれば、石神がこれほどの愛を尽くすということが納得できるんだけれども・・。
俗物なんだよねえ。しかしその俗物としての彼女も、湯川が解いた石神のトリックを
聞かされて、石神が払ったあまりに大きな代償に気づく、という仕掛けになっている
のだから、これは必要な設定なのかも。

前半はコロンボのように伏線が多くてまどろっこしい面もありますが、後半
そのトリックが明らかになっていくところは読み応えがあります。

自分が進むべき道を絶たれて生きる意味を失いかけていた男。
その彼のいきがいになっていた親子を助けようとし、必死に隠した真実。
しかし、真実は明らかにされなければならない・・。
ラストはなかなか壮絶。うまく終わらせないところが東野圭吾ですね。
「秘密」のラストを思い出しました。ここのところ私としては彼の作品はイマイチだった
のですが、久しぶりにいいものを読ませてもらいました。余韻の残る一冊。

おいしい本箱 → http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000550
数学関係の本 → http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000099
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