トモ、ぼくは元気です 香坂直 講談社

画像大阪弁はええなあ~・・。
「方言」というものが持つ魅力は、独特のものがありますわ。
日ごろ自分が使ってるから、というのもあるんでしょうが、その言葉
だけが持つニュアンスがびんびん伝わってきます。
生もの、という感じがします。

昔、ちょころっと小説の真似事なんかを書いてたときに、悩んだのが、方言。
どうも大阪から出たことない私は、会話を標準語で書けない。
無理して書くと、ぷぷっと自分で恥ずかしくなっちまう。そして開き直って
大阪弁で書いたら、なんだかおせいさんの物まねになっちまう・・。
(そういえば、おせいさんの物まね、やってたねえ、Sちゃん)
この小説は、関東にすむ子どもが、傷ついたまま大阪のバリバリの商店街に
やってきて、心を開いていく話。その過程に、大阪弁のやさしさとユーモアが
一役かっているのは、楽しい限りです。

和樹は小学六年生。中学受験を控えた夏休みなんだが、自分の家ではなく
祖父母の家で過ごすことに・・。それは、自分で自分の気持ちをもてあまして
しまったから。自閉症の兄「トモ」の面倒をずっと見続けてきた、そのことに
ちょっと疲れて爆発してしまったのだ。そして、そんな自分を責めて、辛く
なってしまっている。しかし、素直になることはできない。
中学では、「トモ」から自由になりたいと受験を考えていたりする自分・・。
そんな袋小路の和樹を迎えてくれたのが、大阪の商店街にすむ祖父母と、
その近所に住む夏美と千夏、桃花の兄弟、そしてユニークな濃いキャラの
商店街の人々・・。その彼らのボケと突っ込みのやり取りと、お互いに
踏み込みながら、なんだかとぼけた人間関係に、脱力しながら段々
心がほぐれていく・・・。

夏美という女の子の、まっすぐさがとても魅力的。
固くいじけてしまった和樹の心に、まっすぐとびこんでいく素直さと、
人のいいところを信じようとするパワーにあふれています。
そんな夏美兄弟を取り巻く商店街の人たちもなかなかに素敵。
あ~、いるわ、こんなおっちゃんや、おばちゃん・・。
と感心しながら読んでしもた。夏美と千夏の妹、桃花は、トモと同じ
ハンディキャップを持ってるんですよね・・。その妹を守ろうとする
姉たちのふんばりを見ているうちに、和樹もやっぱり一緒に彼女を
守りたくなる。その気持ちの流れ方が自然で、やさしかった。

ハンディキャップを持つ兄弟がいる・・。
確かにこれはある意味大変なことなんです。しかし、ここに書いてあるのは
「ほらね、大変なんだよ」ということではなく、お互いに生きているパワーと
優しさをわけあう、人生の同士なんだよな、ということ。
きれいごとじゃなくて。和樹の憂鬱も、ちゃんと書かれていて、それも
またうんうん、と頷けるんです。でも、やっぱり和樹はトモのいいところが
ちゃんとわかっている。それを、夏美兄弟の姿を通して、また再認識していく
その素直さが、読んでいてうれしくなってしまう。
現実の大変さもふまえつつ、すべてを若さと素直さで、はじけるパワーに変えていく
子供たちの力強さが、たのもしい。
いい小説やったなあ・・。
あ、これに「金魚すくい」の話がでてくるんですが・・。
私も昔、むっちゃ修行したことがあった(爆)
なぜか、あのひらひらの金魚をペランペランの紙ですくうのが面白くて
楽しくて。けっこう奥深いもんなんですよ、あれは・・。
そんな事も楽しかった、後味のよい物語でした。

おいしい本箱 → http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php

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