テーマ:ま行の作家

母の遺産 新聞小説 水村美苗 中央公論新社

しみじみと、日本も私も中年になってしまったなと、この物語を読みながら思ったことでした。「汚れちまった悲しみは 倦怠のうちに死を夢む」と詠んだ中原中也は、中年になる前に生を終えてしまったのだけれど、私たち日本人の大多数は、汚れちまった悲しみを抱えたまま、親を見送り、自らの老いと直面する、長い時間を過ごすことになります。もう、その現実を、こ…
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かえるのそらとぶけんきゅうじょ 村上勉 偕成社

小さな頃は、かえるが苦手でした。教室で、いきなり大きな牛がえるを男子に投げつけられて絶叫したこともありました。でも、最近はかえるさんがとても可愛いと思うんですよ。うちの庭には、何匹かアマガエルが棲みついていて、よくカラーの葉の上でくつろいでいます。ちっさなちっさな手に、粟粒のような吸盤が付いていて、緑の宝石のように綺麗で見惚れてしまう。…
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ふたりのイーダ 松谷みよ子 司修絵 講談社

私が言うまでもなく、非常に有名な作品です。映画にもなってますね。この作品が書かれたのは1969年。私が、まだイーダの年齢に近い頃です。それから40年以上が過ぎましたが、この本はずっと読み継がれています。8月6日になると読み返す、という人がたくさんいることを先日ツイッターで発見して、思わず再読しました。 この作品は、戦争文学としてと…
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ロブロィエクの娘 マウゴジャタ・ムシェロヴィチ 田村和子訳 未知谷

初読みの人なんですが、何だかずっと前から読んでいるかのような、共振を感じてしまう作品でした。骨太の構成の中に、瑞々しいバラの花のような感受性が花開いていて、その鮮やかさにハッとします。人生という困難な航海を真正面から見据えようとする勇気。暖かな眼差しとユーモア。あちこちに散りばめられたひねりの効いた議論やアイロニーを読んでいると、国や時…
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鷹のように帆をあげて まはら三桃 講談社

まはらさんの物語は、いつも「手」がとても重要な役割を果たします。『たまごを持つように』での、ふわりと力を抜いて弓を構える手の大切さ。そして、『鉄のしぶきがはねる』の、旋盤加工を極めるために研ぎ澄ます手。そして、この物語では、主人公の女の子の手は、しなやかに美しい命を乗せるために、まっすぐ差し出されます。手を使うということは、自分の感…
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相田家のグッドバイ 森博嗣 幻冬社

これは家族の物語です。殺人も、事件も、何にも起こりません。相田家という、昭和を生きた、ごくごくまっとうな、真面目な家族の日々を、淡々と綴ってあるだけ。でも、これがもう、見事にミステリーなんですよ。それぞれの家庭は、それぞれの価値観で出来ている社会の最小単位で、いわば密室。「家」というハコに入ってしまうと、そこでどんな会話が交わされ、どん…
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1/12の冒険 マリアン・マローン 橋本恵訳 ほるぷ出版

小さいことは、チェスタトンが「棒大なる針小」で書いていたように、ドラマチックなこと。例えば・・・この身体が、ウルトラマンサイズになってしまったとしたら。ちょっと歩けば家を踏みつぶす。山を歩けば崖崩れ。海辺を歩けば、港を壊す。迷惑この上ないですよね。(昔テレビで、ウルトラマンが怪獣と格闘するたびに、私はそれがとても気になっていた。怪獣より…
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ゴランノスポン 町田康 新潮社

今夜はこれを読んで、町田さんに、ズバっと斬られてしまったのである。ほんとに気持ちよく、心の底から斬られてしまった。読み始めは、何やら可笑しいのである。あらあら。やあねえ、そんな事まで書いちゃって、ねえ・・と想っているうちに、それぞれの短編から、蓬髪の町田侍が駈け出してきて、この時代と自分がいろんな顔して纏ってる嘘や、ええかっこしいなとこ…
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おおきなかぶ、むずかしいアボガド 村上ラヂオ2 村上春樹 大橋歩画 マガジンハウス

プロだなあ。と、プロ中のプロを相手にヘンな感嘆の仕方をしてしまうけれど、それが素直な感想です。気軽に書いた文章ほど、自力の差が出るもんですが・・。軽いジョギングでも、毎日走り続けているランナーと、まだ靴にも慣れていないランナーでは、フォームにも、リズムにも、呼吸の仕方ひとつにも大きな差が出ます。その差は、誰が見てもわかる。春樹氏の文章は…
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あの日、ブルームーンに。 宮下恵菜 ポプラ社

とっても愛らしくて切ない初恋の物語でした。主人公の女の子が可愛いんだなあ、ほんとに。まっさらの心が、初めて感じる、「好き」という気持ちに色づいていく。女の子なら・・・まあ、私なんぞはウン十年前の女の子ですが(笑)だからこそ余計に、このピュアさが愛しい。誰かを好きになるって、いいよなあとしみじみ思ってしまう物語です。こんなおばちゃんがそう…
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野良猫ケンさん 村松友視 河出書房新社

猫もの第3弾・・って、猫ブログじゃありませんからっ!(笑) 村松さんとこの猫さんと言えば、有名すぎるほど有名なアブサン。彼は、21歳で大往生を遂げた。ほんとに大事にされてたんですよねえ・・・21歳って、ほんとに長生きですもん。彼の大往生には泣きました。あれから、猫が飼えない村松さんと奥さんの気持ち、わかるなあ・・。 でも、ここに綴ら…
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乙嫁語り 3 森薫 エンターブレイン

待ってましたよ~!乙嫁の3巻!発売日に絶対買うぞ、と意気込んで朝から本屋に出かけたくらい、待ってました。分厚い3巻。嬉しいよなあ、と感涙にむせびつつ読み始めたんですが・・・前の巻までの、ある意味能天気なまでのラブラブな二人の話から離れて、今回はやたらに切ないじゃないですか! 以下ネタばれありです。 悲しみを背負った美しい未亡…
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猫とあほんだら 町田康 講談社

町田さんのところには、10頭の(町田さんは猫に『匹』を使わない。それもまた、町田さんらしい猫への敬意なのだろうと思う)の猫がいる。自宅に4頭。そして、仕事場に6頭。自宅の猫は自分の飼い猫。そして、仕事場の猫は、ボランティアさんからの預かり猫で、病気を持っているから、自宅の猫とは一緒に出来ない。野良出身の彼らは、町田さんにも奥さんにも身体…
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ヴォイド・シェイパ 森博嗣 中央公論新社

何と、森さんが剣の世界を書かれるとは・・意表を突かれました。意表を突かれましたが、これがまた森さんらしい、面白い世界になっています。 主人公は、物心ついてから、一歩も山から下りることなく、カシュウという剣の達人と暮らしていた若者・ゼン。彼には親もなく、カシュウ以外の人間と知り合いもおらず、一振りの剣以外何も持たない。カシュウが死んでし…
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しっぽちゃん 群ようこ 角川書店

「しっぽちゃん」というタイトルを見ただけで、これは読もうと心に決めました。私もよく、うちの猫さんに、「しっぽちゃん」「おしっぽさん」と呼びかけているので(笑)いいですよね~、動物のしっぽ。私もうちの猫さんのしっぽに執着しています。名前を呼ぶと、パタパタっと動くしっぽちゃんは、私の宝物です。 しっぽのある、愛すべき生き物たちと人間の…
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ドラゴニア王国物語 みおちづる 角川書店 銀のさじシリーズ

これ、もっと長編でも良かったんちゃうん、と読み終わると同時に頁を閉じてため息をつき、作者に突っ込んでしまいました。面白かったんです。熱く鼓動する竜の卵を抱いて走りに走る少女のひたむきさが、ビンビンと伝わってきて、読み始めたら止まらず。途中できざす、「これは、もしかしたら・・・」という期待が、少女の希望と重なって胸の中に熱い塊を作るようで…
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鉄のしぶきがはねる まはら三桃 講談社

読んでいて、とても主人公達が羨ましくなるような、手がうずうずする物語だった。まはらさんは、手の感覚が生み出すものに拘る人だ。『たまごを持つように』でも、弓道を追求する高校生たちが、毎日毎日手を鍛錬し、弓を放つ感覚を少しずつ確かなものにしていく姿が描かれていた。今回のこの作品は、旋盤加工という技術をテーマに、やはり自分の手で何かを掴もうと…
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ばんば憑き 宮部みゆき 角川書店

今日、近所の桜のつぼみが、ほころびかけているのを見た。もうすぐ4月とは思えないほど寒い毎日だったけれど、ようやく春の気配が近づいてきているように思う。 震災の後、私の中で読める本と読めない本の境目がはっきりしてしまったように思う。それを具体的に言葉にするのは難しいけれど。 あの地震のあと、数日活字が読めない日が続いた。情報を…
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雑文集 村上春樹 新潮社

仕事に行く他は、ずっと家にいて本を読んでいる。ここ関西でも買占めをする人が出ていたりして、買いものに行ったりするだけで、結構疲れるものがある。こういう時は、日ごろ隠れている人の様々な衝動や不安が増幅される。そして、それに振り回されてしまうだけで、心にも身体にも疲れが溜まっていくように思う。しかも、昨日から寒い。寒さが、また皆の不安スイッ…
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海に沈んだ町 三崎亜記 写真・白石ちえこ 朝日新聞出版

三崎さんのモチーフである、失われた町のシリーズに連なる短編集。夢の中の遊園地。海を漂流する団地。海に沈んだ町。眠りから覚めない町・・。少しずつ現実とずれるパラレルワールドが積み重なって、独特の磁場を作っている。妙に郷愁を誘う写真がいい味を出していて、一枚一枚に見入ってしまう。短編たちがいつもより少し抑えめな感じなのは、この写真とのコラボ…
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ノルウェイの森 映画と原作

映画『ノルウェイの森』に行ってきました。 映像が非常に綺麗でしたねえ。 特に、直子とワタナベが草原を歩くシーン。 波打つ草原に吹き荒れる風が、見事な心象風景になって 二人を通り過ぎていくのがわかりました。 あのシーンだけでも見る価値がありました。 直子役の菊池凛子も、ワタナベくん役の松山ケンイチも ものすごく頑張って熱演し…
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私は売られてきた パトリシア・マコーミック 代田亜香子訳 作品社

これは、非常に辛い本です。 毎年、たくさんの・・後書きによると、年間一万二千人近い ネパールの少女たちが、インドの売春宿に売られているとのこと。 それも、たった300ドル。円高であることを考慮に入れても、たった 三万円くらいのお金と引き換えに、売られていく。 この本は、その少女たちのことを実際に取材し、自分の目と足で 確かめ…
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まえがみ太郎 松谷みよ子 福音館書店

お正月のお話を一つ。 えらく昔の本です。私の持っているのは、1966年刊行のもの。 昔、幼い頃に読んだ本を、そのまま持っているという(笑) 漢字を覚えたての頃に読んだんでしょうねえ。 いちいち、漢字に線を引いて、自分でルビを振ってるのが笑えます。 日本の民話をベースにしたお話かと思いますが、それだけに 時代を超えた力のあ…
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小説のように アリス・マンロー 小竹由美子訳 新潮クレストブックス

年末からちびちびと読んでいて、やっと読了。 上手いなあ・・としみじみ思う。小道具の使い方、 小説の中での時間の扱い方、目線の配り方。 緻密な文章。うーん。お見事。なんですが、どうも私はこの人が苦手。 何で苦手なのか、読みながらずっと考えていました。 マンローは、ほっといてくれへんのですよね。 何をほっといてくれへんかとい…
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小暮荘物語 三浦しをん 祥伝社

アパートもの、なんてジャンルは無いんでしょうが(笑) 「風が強く吹いている」の時にも思ったんですが、 こういう連鎖していく人間群像を書くのが、しをんさんは とっても上手い。ぼろっちい、「小暮荘」。安普請の壁は ペラペラで、どの部屋の音も筒抜け。 うーん・・・実は、私はこんな建物が大好きなんですよ。 うちの近所にも、こういうア…
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あんじゅう 宮部みゆき 中央公論新社

前作「おそろし 三島屋変調百物語事始」の続編です。 前作もとても面白かったんですが、今回もその筆の冴えは 衰えず。・・というか、ますます冴えて、すっかり時を忘れて 読みふけってしまいました。 小さいながらも裕福な小間物屋・三島屋に身を寄せるおちか。 主人夫婦の姪でありながら、女中として働く彼女には 忘れたくて忘れられない…
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小暮写真館 宮部みゆき 講談社

何だかもう、バタバタと毎日が過ぎていく(汗) どうして、こんなに時間がないんだか・・。 ブログの、こんなレビューでさえ、なかなか更新できないのに 恐ろしく分厚い小説を書きあげてしまう宮部さんは、ほんとに 凄いと思う。(そこに感心するんかいな) 初めて見た時は、この分厚さに驚いたんですが、読み始めたら―。 やっぱり長かったけど…
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天国旅行 三浦しをん 新潮社

ワールドカップ、日本は8強ならず。 しかし、ほんとに頑張りました。 PKなんて、時の運ですもん。 今回、まさか、ほんとに予選を勝ち抜くとは思っていなかったと 日本中の人が思っていた事を思えば、これはほんとに一発逆転くらいの 快挙です。今回のチームは下馬評が悪かった。 ほんと、マスコミには酷い言われようでした。 それが、まさ…
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乙嫁語り 2 森薫 エンターブレイン

やっと、このウェブリブログにも、サイト内検索機能がついた! 嬉しいなあ。長らくこうして書いていると、過去の自分の記事を 見つけるだけでも一苦労だったりするんですよね。 この機能が欲しくてブログを移動しようかと思ったりしてたので・・。 とりあえず、めんどくさいことしなくて済んで目出たいです(笑) えーっと、しばらくバタバタし…
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洋梨形の男 ジョージ・R・R・マーティン 中村融訳 河出書房新社

この「奇想コレクション」のシリーズはチェックする事が多いです。 いわゆる「奇妙な味」の作品が読めるので楽しみにしています。 何しろ、外国語に疎いので、もう翻訳&編集して 下さる方のセンスに頼ってしまうしかない、外国作品・・と いうことで(笑)柴田元幸さんとか、岸本佐知子さんとかの 名前を翻訳で見ると、嬉しくなりますが。 この…
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