テーマ:小説

ブルックリン・フォリーズ ポール・オースター 柴田元幸訳 新潮社

物語は細部に宿る。今日の午後、寝ている猫たちの横で、しみじみ小説を読む喜びに浸ってしまった。ずっと好きで読んでいる作家さんの物語は、長年の友達と語り合うように、行間のニュアンスまで心に沁みる。ニューヨークのブルックリンに住む人々が刻む小さな暮らしのリズムが、あれよあれよという間にジャズのセッションを重ねるように見事な音楽を奏でる、その妙…
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鷹のように帆をあげて まはら三桃 講談社

まはらさんの物語は、いつも「手」がとても重要な役割を果たします。『たまごを持つように』での、ふわりと力を抜いて弓を構える手の大切さ。そして、『鉄のしぶきがはねる』の、旋盤加工を極めるために研ぎ澄ます手。そして、この物語では、主人公の女の子の手は、しなやかに美しい命を乗せるために、まっすぐ差し出されます。手を使うということは、自分の感…
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少年は残酷な弓を射る ライオネル・シュライヴァー 光野多恵子/真貴志順子/堤理華訳 イーストプレス

男子の親というのは難しい。いや、難しくない人もいるのだと想うのだけれど、私にはとても難しい…というか、年々難しさに気がつく、至らぬ親である。どうも子育てには向いてないのかも、と気がついた時には出産から十ウン年が経過していた。うちは息子二人とも不登校経験者であり、どちらかというと引きこもり系なのである。不登校というありふれた問題行動ではあ…
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よるの美容室 市川朔久子 講談社

私ごとですが(笑)美容院にいくのが、好きです。中でも好きなのは、ゆっくりシャンプーしてもらうこと。今流行りの炭酸ソーダ水で時間をかけて洗い流して貰っているうちに、うとうとしてしまう、あの気持ちよさったらありません。ただし、上手な人にしてもらう時に限りますが。力の入れ具合、リズムなど、やっぱり大きく個人差がありますよね。この物語は、上手な…
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シーグと拳銃と黄金の謎 マーカス・セジウィック 小田原智美訳 作品社

梅雨に入り、やたらに暑い職場にぐったりの日々。猫も暑いのか、最近、くうちゃんが、洗面所で水遊びをするのに夢中で、どこにいても水音がするとダッシュしてきます。猫も暑いと水浴びしたくなるのかも(笑)猫のように涼を求めて・・というわけではないのですが、この『シーグと拳銃と黄金の謎』は、もわっとした日本の夏とは正反対の、極寒の地で繰り広げられる…
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チャイとミーミー 谷村志穂 河出書房新社

また猫かい!と自分にツッコミましたが(笑)今度は猫本です。 谷村志穂さんの猫エッセイですが・・軽い「猫好きなの」という内容ではなく、人生をがっつりと猫と分け合って暮らしてきた谷村さんの濃い思いがいっぱいに詰まった本です。 女性の20代から30代というのは、激動の時期です。仕事、恋愛、結婚、出産・・・。心も体も翻弄されて、くた…
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ジェンナ 奇跡を生きる少女 メアリ・E・ピアソン 三辺律子訳 小学館SUPER YA

ここ一週間ばかり、パソコンの調子がいまいちで、正常終了が出来なくなっていました。そこで、今日は一日何だかんだとメンテナンスをしていたのですが・・。結局「システムの復元」で、過去の状態に戻すという安易な方法を選択してしまいました。この手は時折使うんですが、便利ですよね。バックアップはパソコンでは大切です。しかし、それが人間だったらどうなの…
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ある一日 いしいしんじ 新潮社

命が生まれる特別な一日を描いた小説です。いしいさんの筆が、父になった誇らしさに満ちてます。もちろん、生まれてくることは喜びだけではなくて、不安とか、畏れとか、悲しみとか、そんなものと一緒に生まれてくるのだけれど。出産という特別な一日から広がる時空が、全ての命と繋がっていく様子が、何ともドラマチックで輝きに満ちてるんです。いしいさんの物語…
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相田家のグッドバイ 森博嗣 幻冬社

これは家族の物語です。殺人も、事件も、何にも起こりません。相田家という、昭和を生きた、ごくごくまっとうな、真面目な家族の日々を、淡々と綴ってあるだけ。でも、これがもう、見事にミステリーなんですよ。それぞれの家庭は、それぞれの価値観で出来ている社会の最小単位で、いわば密室。「家」というハコに入ってしまうと、そこでどんな会話が交わされ、どん…
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それでも三月は、また (アンソロジー) 講談社

日米英同時刊行の本です。3月11日を、日本の作家たちはどう捉えたのか、ニュースやインターネットとは違う方法で、それを伝えたいと編まれたアンソロジーです。 ニュースや、ネットの情報は、流れ去ってしまう。ツイッターもそうです。どんどん流れてあっという間にどこかに消えてしまう。でも、詩や小説は、何か大きなことが起こってもすぐに生まれてく…
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ネジマキ草と銅の城 パウル・ビーヘル 野坂悦子訳 村上勉絵 福音館書店

村上勉さんの表紙と挿絵に、思わず手が伸びました。子どもの頃から、村上さんの絵が大好きなんです。佐藤さとるさんのコロボックルのシリーズは言うまでもなく・・昔、村上さんの挿絵の「家なき子」を持っていたんですよ。今でも、頭の中にくっきり浮かぶほど印象的な本だったんですが、残念なことに、もう手元にはありません。村上さんの絵はとても躍動感があって…
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紅に輝く河 濱野京子 角川書店 銀のさじシリーズ 

『碧空の果てに』『白い月の丘で』に続く、シューマ平原の国々を舞台にしたファンタジー3作目です。国の行く末を左右する運命を背負った王女・・というドラマチックな設定。濱野さんのリリカルな魅力が満載の物語です。そして、いつもいいなと思うのが、登場人物たちがいつも自分の想いに忠実なこと。生まれる時代、国、家庭・・自分がいる場所のルールというもの…
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きなりの雲 石田千 講談社

編み物に一時非常に凝ったことがあります。一本の糸が形になって、セーターになっていくのが面白い。羊毛の香ばしい、あったかい匂いがいい。そして何より、何度でもほどいてやり直せるのがいい。小心者の私にはぴったりなんです。この物語も、再生のお話です。ばらばらになった自分を、ゆっくりほどいて編み直すように日常を回復していく。その過程が、丁寧に細や…
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海岸通りポストカードカフェ 吉野万理子 双葉社

人にメールを書くのと、葉書や手紙を書く、というのは使う回路というか神経がどこか違うように想う。メールは「伝達」で、手紙やはがきは「伝える」という感じ・・というと、どこが違うねん、という声が聞こえてきそうですが(笑)この物語を読んで、葉書をふと出したくなる人が自分にいることに感謝したくなりました。人は、誰かと心繋いでいたい生き物なんですよ…
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曽根崎心中 原作 近松門左衛門 角田光代 リトルモア

角田光代さんが描く「曽根崎心中」。想像したより原作に忠実で、この作品の孕む熱がむせかえるように伝わってきました。熱いです。 曽根崎は、何度文楽で見たか分からへんほど、見ました。 「此の世の名残り 夜も名残り 死に行く身を 譬ふれば あだしが原の 道の霜・・・」 玉男さんと、蓑助さんの黄金コンビの曽根崎の凄かったこと。蓑助さんの…
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ダーウィンと出会った夏 ジャクリーン・ケリー 斎藤倫子訳 ほるぷ出版

仕事柄、物語の中に図書館が出てくると妙に気になります。場所や配架の様子もですが、図書館員の対応の仕方や態度、言葉づかいに、ヘンに神経質になってしまったり(笑)物語の中であっても、がっかりな対応などを読んでしまうと、腹立たしく悔しい気持になったりします。この物語の中に出てくる図書館はまさに最低で、そこを読んだ途端、私も主人公のキャルパーニ…
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2011年を振り返って

久しぶりの更新です。 この三カ月、ずっとある事にかかりきりで、こちらがおろそかになっていました。でも、ずーっと、ずーっとこちらを書きたくて仕方なくて。今日、やっと解放されたので、いそいそと更新です。すっかり世間から忘れられてる感がありますが(笑)新年から、がんばって書いていきますので、どうかよろしくお願いします。 気がつけば、2…
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神様 2011 川上弘美 講談社

この本は、川上さんが1993年に書かれたデビュー作を、「2011」という形で書き換えたもの。元の短編と、書き換えた「2011」が並べてあります。わざわざ「2011」とタイトルを付けた意味は、今年あった、私たちの意識や価値観を、生活を、大きく揺るがした出来ごと、震災です。 元の短編は、近所に引っ越してきたくまと近所の川にピクニックに…
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ブリギータの猫 ヨアンナ・ルドニャンスカ 田村和子訳 未知谷

タイトルに惹かれ、内容については全く予備知識なしに読み始めたのですが、これが、自分が今考えたり感じたりしていることに、何故かリンクしている内容で・・・。本については、私は結構そういうことがある。嗅覚というか、アンテナがぴりっと動くというか。不思議に、本の方から、「読んで」と言ってくれることがある。そして、大体その勘は外れないというのが、…
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犯罪 フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄進一訳 東京創元社

非常に淡々とした文章で描かれた小説です。それはもう、見事なまでに淡々とした文章で、読んでいて「これは小説なのかしら?」と少々不安になるほど。警察の調書のような(と言っても、実際に見たことは無いんですが)雰囲気が漂う文章です。テーマは、タイトル通り、「犯罪」。様々な犯罪を描いた短編が11篇。内容としてはセンセーショナルなものなんですが、三…
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どこからも彼方にある国 アーシェラ・K・ル=グウィン 中村浩美訳 あかね書房 YA Step

今週は、けっこう本は読んだんです。新刊含めて6冊くらい読んだにも関わらず、どうもレビューが書けず・・。感受性がすり減ってるのかも、などと想っていたのです。このル=グウィンの物語で、ようやく息を吹き返しました(笑) ル=グウィンにしては珍しいリアルYAの物語です。発表は1976年らしいのですが、訳された中村さんもおっしゃるように、全く古…
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ゴランノスポン 町田康 新潮社

今夜はこれを読んで、町田さんに、ズバっと斬られてしまったのである。ほんとに気持ちよく、心の底から斬られてしまった。読み始めは、何やら可笑しいのである。あらあら。やあねえ、そんな事まで書いちゃって、ねえ・・と想っているうちに、それぞれの短編から、蓬髪の町田侍が駈け出してきて、この時代と自分がいろんな顔して纏ってる嘘や、ええかっこしいなとこ…
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深海魚チルドレン 川合二湖 講談社

もう一度行ってみたい、と思う喫茶店があります。金沢大学の近くだったと思うんですが、まるで穴ぐらのように薄暗い店内に、木を使った渋い内装。長年続いてきた風格を漂わせて、とても居心地が良かった。今はやりのカフェではなく、純然たる喫茶店です。ジャズがかかっていて、その音量もちょうどいい。薄暗いけれど、本を読むには十分なスポットが席にあたってい…
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猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷 小路幸也 徳間書店

猫もの第二弾です。いや、別に意図したわけではないんですが、何故か猫ものが溜まってるんですよねえ・・って、自分が選んでるんやないか!ちゅう話ですけど(笑)小路さんの本を読むのは、ほんとに久しぶりです。最近たくさん出されていて、なかなか読むのが追いつかなくて・・。これは、見たときに表紙が猫だったので、早く読まなきゃ、と思ったんですね(笑) …
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猫の紳士の物語 メイ・サートン 武田尚子訳 みすず書房

猫の物語というだけで読みたくなってしまう私ですが(笑)この本も、本屋さんでみかけて、表紙にとても心惹かれてしまったんですよ。頭に帽子?のようなものをかぶって、もくもくと煙を出している猫さんの絵が、何ともユニークでユーモアがあります。おっさんのような猫さんが、赤いリボンをして、こっちを見つめていて。思わず、話しかけてしまいそうになるじゃあ…
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スカーレット わるいのはいつもわたし? キャシー・キャシディー もりうちすみこ訳 偕成社

『音楽と人』という雑誌を時々購入します。まあ、剛さんが載ってる時、なんですが(笑)今月もライブレポが載ってるので早速買ってしみじみと読んでいたのですが・・8月号の巻頭に載っているアーティストの写真を見ると、これがもう、凄い背中一面のタトゥ(入れ墨)なんですよ。始めは撮影のためのフェイクかと思いきや、本文を読むとなんと、これが全部本物らし…
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ヴァレンタインズ オラフ・オラフソン 岩本正恵訳 白水社

白水社さんから出る本って、何となく得点が高い、というイメージがある(笑)そして、この本も期待にたがわず面白かった。人生の中で、どうしようもなく壊れていくもの、変わっていくものがあるという苦い事実が、淡々と丁寧に綴られます。それはもう、非常に淡々と。壊れてしまえば、壊れるしか無かったのだと思えることも、そのきっかけはほんのささいな事だった…
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池澤夏樹の世界文学リミックス 完全版 河出書房新社

この河出書房から出ている、池澤さん編の『世界文学全集』が欲しいと、おっきな本屋にいくたび思う。私は昔から、けっこう全集系が好きなのだ。しかし、一番の難点は置き場所。どの巻も気合が入って分厚いこの全集、全30巻をどこに置くねん、と考えるとなかなか手が出ない。でも、やっぱり欲しい!と、この本を読んでまた悩む(笑) 池澤さんが、その全集…
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僕は、そして僕たちはどう生きるか 梨木香歩 理論社

昨年、民事再生法を申請した理論社の新刊です。この本は、以前理論社のウェブマガジンに連載されていたもの。14歳、まさにYA世代に向けての問いかけの物語なのだが、その問いかけはそのまま、私たち大人にも今問われていることであり、「今」と深くリンクするように思う。物語の語り手は、コペル君、14歳。その昔、吉野源三郎氏が書いた「君たちはどう生きる…
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新訳・チェーホフ短編集 沼野充義 集英社

チェーホフやトルストイや、ドストエフスキーを一生懸命読んだのは10代や20代の若者の時で、その時の私に彼らの作品のことがどれだけわかっていたのか、はなはだ心もとない。だから、今、もう一度しっかり読み返したいとも思うし、最近たくさん新訳が出ているので、どんなんやろ、と少なからず興味もありまして。長編はしんどいんで、まずはチェーホフかな、と…
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