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zoom RSS 窓の灯 青山七恵 河出書房新社 

<<   作成日時 : 2006/03/07 23:29   >>

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画像今日はイギリスの探偵小説を読んでいたのだけれども、それがうまく頭に入ってこず、こちらを先に読んでしまった。ちょっと疲れてうすぼんやりした頭で読んだのだが、それがかえってこの作品のけだるい感じにあっていたかもしれない。

マリモという女の子が、主人公。大学もやめて、お金もなくて、ぼんやりとしていたときに、行きつけの喫茶店のお姉さんに拾われ、そこに住み込んでいる。ごたごたした街中の、ひしめくようにアパートがある、その一角。向かいのアパートの窓の手が届きそうな向かいに、男の子が越してきたらしい。それまで近所になんの興味もなかったマリモは、そこが妙に気になる。男の子には彼女がいるらしい。その窓をじっと見つめるマリモ・・。

荒筋らしきものはなく、男の子と何か交流があるわけでもない。マリモの視線は、ほとんどが喫茶店の女主人である「お姉さん」に向けられている。綺麗で、女っぽくて、でも彼女を理解する手がかりはマリモには、ない。たくさんの男達が彼女のもとを訪れる。彼女はその男達を受け入れるのだが、その誰とも特別な関係はないようだ。マリモに向けるようなおだやかな目を、その男達に向けるだけ。マリモは壁越しに、その男達とお姉さんが寝る物音を聞いている・・。

若い日、少女でもなければ大人でもない、ぽっかりと空いたどこにも属さない、こんな日々が自分にもあったなあ、と思う。身のうちになんだかもやっとしたものを抱えながら、それでいてどこかへ行ってみよう、とか、バリバリ働こう、とかいう気持ちにもなれず、ただ蹲ってみる日々。妙に自分の周りの空気が重たくなって、それがまといつくままにまかせて漂うような・・。そんな時期、やはりよく喫茶店に通っていたことも思い出した。いい喫茶店、というのは身体になじむんだよね。それはスタバ、とかではいけない。やはり、店主がいて、常連客がいるという空気の中で、その誰とも関係がなくて、ぼやっとしてるのが、いい。この小説のマリモも、お姉さんと突然やってきた「先生」の関係に嫉妬めいた気持ちを抱いたりしてるようなんだけれども、実際はその誰とも深く関係を結びたい、と思ってわけではないように思える。お姉さんと先生のかわす交歓の声は、これから自分にもやってくる女としてのあれこれのうっすらした予感、のようなものなんではないだろうか。きっとマリモは、ある日突然ここを出て行くだろう。それは男のところかもしれないし、また違う人生に向かって、かもしれない。その前のじんわりと自分の熱を確かめるような、一瞬のときがよく書かれていると思う。女性ならではの、感覚的な手触りの文章も、面白かった。こういう一瞬を切り取る小説、というのは結構好きですね。

空気感だけで小説を書くのは、難しいです。これからどういう一瞬を切りとっていくのか、そこが難しいかもしれません。その切り取った一瞬が、読む人にとって忘れられない記憶になりえるのか。この小説も、少し冗長な感じがなきにしもあらず。短編、でもよかったかもしれません。実はこの小説のあとに小川洋子さんの「まぶた」を読んでいたのですが、その文章の緊密度、放たれる言葉のきらめきとまとうオーラには、やはり格段の差がありました。青山さんは、きっと「これから」の人。次作、そしてこれから書かれる作品を楽しみに待ちたいと思います。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こういう作品って、嫌いじゃないけど、難しいですね。強烈な個性・には程遠いこの作家が、このあとどのように自分を確立していくのか楽しみのような、そうでないような・・。
すの
URL
2006/03/26 01:25
>すのさん
TBとコメント、ありがとうございます。今日はTB、コメントともにできませんでした・・。TBできる時もたまにあるんですが・・。

最近どんどん新しい作家さんがデビューしますね。
特に女性が多い。その中で生き残っていくのは、なかなかに大変なことだろう、と思います。こういうニュアンスで綴る小説には文体が必要か、と思います。青山さんは、そこがまだ弱いように思いました。
これから自分だけの震える感性を開拓していけると良いな、と思います。
ERI
2006/03/26 21:28

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