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zoom RSS 優しい子よ 大崎善生 講談社

<<   作成日時 : 2006/07/26 00:23   >>

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画像ドキュメンタリーと小説・・。その違いはどこにあるのだろうか。
そんな事を考えながらこの小説を読んでいた。
この本に納められた4編の小説は、どれも実話も元にしたもの。
元々ドキュメンタリーからこの世界に入られた
作者であり、この物語もそこから始まった二つのドラマを
書き綴ったもの。ドキュメントとしても十分に魅力的な題材だけに、
これを小説にした作者の気持ちを考えてしまいました。

「優しい子よ」は、作者の奥さまである高橋和さんのところに
送られてきた一通の手紙から始まる、命のやり取りのような
物語。幼い頃からの重病に命が尽きようとしている少年からの
ファンレター。9歳の少年とは思えないしっかりした文章で
綴られる素直なラブレターに、ずっと病気と闘い続けた苦闘
と、それに負けない純な思いがにじむ・・。
杉田茂樹というその少年と高橋さんとの手紙のやり取りが続く
のだけれども、その一通一通が、なんともいえない輝きに
満ちている。少年らしい憧れと、恋心と、尊敬と・・。
その手紙をもらい、返事を書きいているうちに、高橋さんも
それから大崎さんも、その少年の思いと人生に深い感銘を
うけていく。そのやりとりは感動的で、やっぱり泣いてしまった。

ドキュメンタリーとして書いたら近くなりすぎて冷静に書くことができない、
もしくは対象に近くなりすぎて、それを伝えるのに一方的になりすぎる、
ということなんかな。「聖の青春」は、夭折した天才「村山聖」に密着した
ドキュメンタリーで、読んでいて鬼気迫る思いがしたものですが。
そうやってドキュメントとして人間を書くことで、その人の人生から
またこぼれ堕ちてしまうものがあるのかもしれない、とも思う。
なにかを言葉にすることは、思いを形にすることだけれども、
言葉にすることで掬えないものも必ず、ある。
ドキュメントで形にできないものを小説として書きたかった、ということなのかも
しれない・・。

抑制と感情。
こういう、書いてそのまま感動できるような話は、かえってその兼ね合いが
難しいものなんだろうな、と思いました。この物語ではそれが成功しているのか?
読んでいて素直に泣けたから、やはり成功している、と見るべきかな。
でもね、泣いててこんなこと言うのはなんですが、小説としてはちょっと題材に
よっかかりすぎたかな、という気もします。これはかえってもうドキュメントにして
思い切り書いてしまってもよかったんじゃないかしら・・。
そのほうが、もっと心にドカン、ときたかもしれない、とも思います。
ドキュメントと小説・・。どちらを取るのか。
大崎さんの小説は、それがいつもちょっと線引きがあいまいかな。
例えば、村上春樹の「アンダーグラウンド」と、「神の子どもたちはみな踊る」。
ドキュメント、に徹した作品と、そこから受け取ったものを
自分の創作にして提示することは、やはり違うのではないかと思う。
やっぱり小説としてはベタ過ぎる、と思う私はひねくれ者かしらん・・。
これは、単に私の好みなのかもしれないけれども・・。
この物語を読みながら、こんなことをごちゃごちゃ考えた私は、何だろう(爆)

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AOCHAN-Blog
2007/03/05 21:13

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
ノンフィクションか小説かという問題を超えて、感動的な本だと思います。
トラバさせていただきました。
濫読ひで
2006/09/09 21:00
はい。題材としては、これ以上ないほど感動的でした。あの少年の生に涙せずにはいられません。私が小説とフィクションについて書いたのは、その題材の感動とは別の話です。私は小説家が物語を書く、ということに大きな尊敬の気持ちを持っています。フィクションでしか表現しえない事を書きたいから、作家は小説を書くんですよね。私がこの物語で疑問に思ったのは、この素晴らしい題材を、作者が小説にする時に、どういう営みをもってそうしたのか、というところがあまりわからなかったということなんです。新鮮で素敵な材料を料理にする時、それを更に引き立て、自分だけの味にするために創意工夫するじゃないですか。私は、その料理の仕方を読み取るのがすきだったりするわけです。しかし、この物語は、その料理方法がよくわからなかったよ〜、ということなんですよ(爆)まあ、それが私の読みが足りない、といわれればそれまでなんですが・・。
この題材を「小説」という器に盛って出されたときに、「あれ?そのまんまやん・・」と戸惑っておった、ということなんですよ。感動を否定しているわけではありません。
ERI
2006/09/09 23:48
そうですね。わたしもこの手法のなかにどれくらいの真実とどれくらいのフィクションが含まれているのか、あるいはフィクションによる味付けがどのようになされているのか、わかりません。
むしろ沢木耕太郎の手法のような「私ノンフィクション」として出ているのであればもっと素直に受け止められるのでしょうけれども。

ただ、少なくとも原材料に関してはフィクションではない、ということで細かい味付け、つまり自分自身の心理描写などの部分で必ずしもその時点で思ったのでないことなどを交えたことが「小説」という呼び方を使わせたのかな、などとも思いますが、真相はよくわかりません。でも感動的な本だと思っています。
ありがとうございました。
濫読ひで
2006/09/18 01:58
ぼくもこの作品は「小説」としては評価できないと思います。しかし、この作家の人生に起きた、偶然と奇跡の出逢い、そして傷ついていればこその強さと優しさには心打たれずにはいられません。
おそらく、味付けはしてないのでは?並べ方が、もう少しというところでしょうか?
すの
2006/09/24 09:10

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