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zoom RSS 銃とチョコレート 乙一 講談社

<<   作成日時 : 2006/07/07 00:36   >>

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画像ほんとうに久々の乙一の作品。
待ちましたね、ほんと。しかも、書き下ろしで・・。
この講談社ミステリーランドのシリーズは、けっこう凝った装丁なんですが、
この本も非常に乙一らしい、ダークな作りになってます。
それを見るだけでも、面白いんですが、中身もこれまた乙一らしいものでした。
人間の、人に向けてる顔の裏にあるものが、次々と現れてくるところが
非常に乙一らしい。

舞台はヨーロッパらしきどこかの町。少年のリンツは、亡くなった父が移民
だったため、いわれなき差別をうける身。母と二人でくらすリンツだが、ある日
父が買ってくれた聖書から、一枚の地図をみつける。
そこには、水車小屋と、一枚の金貨の絵がかかれていた。それが長年世間を
騒がしてきた怪盗GODIVA(ゴディバ)の宝の地図だと確信したリンツは、
ゴディバを追い続ける国民的英雄・探偵のロイズに連絡を取る。
その情報を聞いてやってきたロイズ、その助手の太っちょのブラウニー、
貴族の血をひいていながら、街の暴れ者で有名なドゥバイヨルなどを
巻き込んで、怪盗ゴディバの財宝をめぐる、渦巻くような物語が始まる。


この陰鬱な街の雰囲気の中で、「虐げられるもの」として生きているリンツ。
でも、その街の人が向けるわかりやすい侮蔑の顔よりも、もっと複雑で
幾重にも重なり合った人間の心の不思議を旅しちゃったんですよね、リンツは・・。
あらすじが非常に凝っていて、それを追うのが楽しみでもあるんであまり
詳しくは書きませんが・・。正しい、と思うものがそうではなかったり。
この人はこういう人だ、と思っていたのが、付き合ううちにふいっと違う顔を
見せたり。新聞などの報道で信じ込んでいたことが、全く反対だったり。
それを、もうこれでもか、これでもかと、児童書でたたみかける乙一に、乾杯(爆)
登場人物それぞれが、本当になくなったお父さんまで、リンツの知らない顔を
持ってるんですが、その中でも私が一番面白いと思ったのは、貴族の血を
ひく、残虐で、頭がよくて、ワガママもののドゥバイヨル。


彼は、はじめリンツに意地悪な顔しか見せていないんですが。
一緒にこの事件にまきこまれ、リンツと行動を共にするうちに、七変化のように
いろんな表情を見せる。非常に頭がよくて、リンツのようにころとだまされない
狡猾さもあり、簡単に人を傷つける粗暴さを見せるかと思ったら、今度は
ほろっと優しさを見せたり。はじめはただ、彼のことを怖いと思っていたリンツも
そのいろんな顔といやおうなく付き合っているうちに、結局彼のことを見捨てられなく
なってしまう。ただ、友達だから、とかいうんではなくて、その存在の不可思議さに
リンツは惹かれていくんですね。


人間というのは、釈然としない、混沌の中でいくつもの顔を持って生きている。
乙一は、それをいいとか悪いとかの尺度でははかれない、理不尽そのまま
の感触を持って書き綴っていく。原罪、とう言葉があります。
私はキリスト教にはそれほど詳しくなくて、簡単にこの言葉を使っていいものか
どうか、ちょっと悩むところですが・・。
乙一の小説を読むと、どうもその言葉がちらつくんです。
人間が心の奥底に抱えてる、どうしようもない部分。意識している、いないに
関わらず、私達はそれを確かに持って生きている。そこに彼は手をのばそうとして
小説を書いている。それは、なまなかなことでは姿をあらわさない。
それを手探りしている中で姿を現す、目の前をよぎるたくさんの異形のものたち・・。
時に美しく、時にグロテスクで、いろんな形にゆがんでいる。
ゆがんでるけれども、不愉快ではないんだなあ、これが・・・。
あ〜、難しい。自分でも何いってるんだかわからなくなってきた(爆)
探偵、怪盗、宝の地図、チョコレート・・・。子どもむけの小説の小道具
いっぱいで、その謎解きもちゃんと楽しませながら、こういう底知れなさ
がただようところが、まったくこの人らしい。



この、主人公のリンツは、語り部らしく一番大人しく無個性なんですが、
まわりに人間達のそういったもろもろを、受け止める強さがあります。
彼はチョコレート好き・・。最後に今までの生活を捨てた彼は、銃ではなくて
チョコレートという、人を幸せにするものを作っていくのかな?
待ち続けた人の作品を、久々に読んで、満足できる。これはなかなか幸せな
ことですよ・・・。


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タイトル (本文) ブログ名/日時
銃とチョコレート 著者:乙 一
≪採点(読むなび!参照)≫ 合計:95点 採点内訳へ ...続きを見る
読むなび!(裏)
2006/07/16 13:26
銃とチョコレート、乙一
イラストレーションは平田秀一。かつて子どもだったあなたと少年少女のための講談社ミステリーランドの1冊。 古きヨーロッパを思わせる架空の国。主人公で語り手の十一歳の少年、リンツは亡父と市場で胡椒とともに買った聖書に、 ...続きを見る
粋な提案
2006/09/06 15:56
「銃とチョコレート」乙一
タイトル:銃とチョコレート 著者  :乙一 出版社 :講談社 MYSTERY LAND 読書期間:2006/09/18 - 2006/09/20 お勧め度:★★★★ ...続きを見る
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2006/10/16 21:41
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2007/02/03 23:32
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 怪盗ゴディバ。彼がはじめてこの国にあらわれたのはぼくの生まれた年だった。 ある ...続きを見る
COCO2のバスタイム読書
2007/03/06 22:15
(書評)銃とチョコレート
著者:乙一 銃とチョコレート (ミステリーランド)価格:¥ 2,100(税込)発 ...続きを見る
たこの感想文
2007/08/07 02:16
銃とチョコレート/乙一
講談社ミステリーランドの1冊。この叢書を読むのは『くらのかみ』『神様ゲーム』『透明人間の納屋』に継いで4冊目。 ...続きを見る
黒猫の隠れ処
2008/07/13 11:30

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
本の背表紙もイラストもチョコレートブラウンでみごとな統一感でしたけど、このページもこの記事のために作ったみたいですね(笑)。
意外性一杯でわくわくしながら読める推理冒険活劇でした。でも児童書としてはイラストの怖さもあって、凄い内容でしたね(“これでもか”に笑)。
リンツの物語でありながら、ドゥバイヨルのノワール(暗黒)な部分も含めた不思議な魅力を描き、他の人も含めて人間はいくつもの顔を持って生きているということが伝わってきました。
レビューの“原罪”の部分、興味深かったです。作者のいろんな作品の、不思議な魅力の秘密が解き明かされたような気がしました。
藍色
2006/09/06 15:54
>藍色さん
BIGLOVEはブログとしては使いにくい面が多くて、失敗か・・。と思うことも多いんですが、テンプレートは可愛いものが多くて気にいってます(爆)
乙一は、いつも気になる人で、彼の見せてくれる幻想や人間のダークさを心待ちにしています。特異な感覚のようでありながら、どうもそこには人間の奥底に隠れている共通した根っこの部分がありそうで、深い沼をのぞくような気持ちがしたり、します。これは、前世で見たことがあるぞと思うようなデジャブだったり。多作な人ではないのですが、それだけにいつも楽しみな作家さんですね!!
ERI
2006/09/06 20:08

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