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zoom RSS 牡丹さんの不思議な毎日 柏葉幸子 ささめやゆき絵 あかね書房

<<   作成日時 : 2006/09/16 22:46   >>

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画像曖昧なこと、はっきりしていないこと、境界線がぼやけて、あっちこっち
行ったり来たりしてしまうこと。
それって、一般的にはあまりいい印象をもたれないことかもしれない。
お金、ビジネス、約束。これははっきりしているに越したことはないんですが。
人間白黒はっきりできることって、思いのほか少ないのかも。
今日思ってることも、明日には違うかもしれない。
今正しいと思うことも、10年後には、ひっくり返ってるかもしれない。
善と悪も。光も闇も。一刻一刻姿を変えてしまうものかもしれない・・。
それをはっきりさせなさい、といわれることって、ますます多いと思いませんか?
はっきりさせて「自分が正しい」といわなければ、負けてしまうから・・。
でも、それはけっこう疲れることでも、あります。
この物語も、いろんなことの境界線がぼんやり滲んで、いろんな人や
物の怪が出入りする。温泉の湯気のようにゆらゆらしてるこの町で
生きてる一家のたくましさが素敵なお話です。

豪快な趣味をたくさん持つ「牡丹さん」の一家。
ちなみに、牡丹さんはお母さん。植物を育てるのが上手な大人しいお父さんと
一人娘の菫ちゃん、そして犬の」フレディ、という家族です。
大きくて家賃が安いから、とう理由で
廃業した旅館に引っ越してきた、牡丹さん一家。そこは昔からの温泉街で
なんだかゆらゆらと不思議なことが、おこる町。
だって、旅館には「ゆきやなぎさん」という幽霊が住み着いているくらいですから・・。

この物語の中で、お父さんは名前で呼ばれることがないんですが、「牡丹さん」
は必ず「牡丹さん」。お母さん、じゃないんです。この牡丹さんが、豪快で、細かい
ことは気にしない、太っ腹の人。ちょっとくらいわけのわからないことでも
笑って飲み込む大きな器があります。
だから、幽霊のゆきやなぎさんも、いつの間にか住み着いて家族の一員に
なったりする。狐もやってくるし、ぼんやりした輪郭の人たちと楽しくお花見もする。
それが、なんだかこの物語の中では自然なことなんですよね。
その融通無碍ぶりが、このお話の一番楽しいところ。
何でもあり、なんだあ・・。と、なんだかほっとする。
理屈で割り切れないこと、常識的にはこうしちゃいけないんじゃないかしら、と
思うことを、「ぶち破らなくちゃ」と思ってぶち破るのではなく、自然体でちょっと超えて
みる。この突きぬけ具合の配分が、見事です。


例えば、「獲物」という話。
お母さんが再婚して、新しいお父さんができる。小さな男の子は、そのことに
納得できてない。そして、前のお父さんとの思い出の温泉に、新しいお父さん
を連れてきたお母さんが、許せない。その気持ちに反応した「木」が、本当の
お父さんになって姿をあらわす・・。普通なら、そこで幻のお父さんは一瞬で
消えて、「お母さんの立場もあるから」とか言って、子どもをさとしちゃったりしそう
なんですが、柏葉さんは、それをしない。
「木」のお父さんは、その子をひきとって、ここで暮らしちゃうらしい・・。
そのことをいぶかる菫ちゃんに、牡丹さんは「人間のお父さんだろうが、木の
お父さんだろうが、あの子が幸せならそれでいいんじゃない」ですましちゃう。
「ここはそんな不思議がまかり通る所だもの」
この牡丹さんの言葉に、ありゃりゃ、いいんだあ、という拍子抜けした脱力感と共に、
なんだかすっきりするカタルシスを感じてしまうんですよねえ・・。
また、最後の「初市」では、どうやら雪女の出現とともに、だれかの命と
だれかの命が交換された気配・・。
しかし、町の人たちは、それを知っていて何もいわない。
それがいいことなのか、悪いことなのか。そういう尺度で物事をとらえていないらしい。
考えてみれば、非常に難しい問題をぽん、と投げておいて解答をここまで
書かない児童書も珍しいかも。でも、それは不快じゃない。
答えの出ないことは、たくさんある。それを抱えて生きていくのも、また人間だから。

どのお話も読みやすくて、くすくす笑っているうちに、あっさり楽しく読めてしまう。
でも読み終わると、ちょっと胸にもやっとしたものが残る。
この残り具合が、人生の味を感じさせる、不思議な手触りの児童書になっています。
これは、大人にも、おすすめです。


http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001111

これは自己満足ですが・・。登録した本が、1並び!!わ〜い!!






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