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zoom RSS 青いリボン 大島真寿美 理論社

<<   作成日時 : 2006/12/12 00:30   >>

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画像この本、装丁がほんまに可愛いんですよ!!
白と黒の表紙のデザインも、中の挿画もとってもセンスがいい。
つい手にとってみたくなります。理論社はいつもこういうとこが上手で
心惹かれます。特にYA作品は、センスが大事。だって、今の若い子
ってむっちゃおしゃれやもん。私らの若い頃なんか比べもんにならへん
ほど綺麗にしてるもんなあ。特に女の子。可愛い子が多いな、と思いますよ。
そんな美意識に敏感な世代に読んでもらおうと思ったら、このくらい
おしゃれでないとね。

主人公の依子は、高校二年生。一人っ子で、両親は家庭内別居で
ほとんど家族らしい交流のない家庭だ。その上、父親は単身赴任で
福岡に、そして母親はこれまた仕事で上海に行きたい、という。
転校なんかしたくない依子は途方にくれるが、そこで友達の梢が助け舟を
出す。うちにくればいい、というのだ。梢の家は大家族で、居候にはなれて
いるという。思いがけずにしばらくの間、梢の家で暮らすことになった依子は
初めて「家族」というものの匂いを味わう・・。

一緒にいても、皆が自分のことに精一杯で糸が切れた凧みたいで
なんだか頼りない。家具や食器やタオルは綺麗に極上品をそろえて
あるのに、肝心の使う人がいない家。それが依子の家。
そんなもんだと思って大きくなってきた依子にとって、いつも人が
ごちゃごちゃしてる梢の家は、珍しくて仕方ない。
いつもバタバタしてるおじいちゃんに、思い出話ばっかりしてるおばあちゃん。
口数少ないお父さんにに、依子をお客さん扱いしない、お母さん。
梢の兄で受験生の拓巳くん、妹の多美ちゃん・・・。
そうそう、きっちりしてるとこに、居候っていうのは居つかない。
なんだか、ごちゃごちゃして、ふっと誰かが紛れ込む隙のある家だからこそ、
居候もいて居心地いい、ってもんですね。これまで「家族」らしいものに
触れたことがなかった依子の目を通して語られる梢一家の姿が、生き生きしてて
面白い。

依子は、特に梢の家が理想とか、自分のこれまでの人生がかわいそうとか
は思ってはいない。自分を客観的に見てる。人生、どんな家族の中にいるか
なんて自分で決められないのだから。その中で何とかうまくやってきたし、
それをラッキーだとも思っている。バランス感覚がいいんですね。
でも、なんとなく冷やっとする思いが胸の中に沈んでいる。
意識しないようにしても、その胸の氷が依子を冷やしている。
だから、薄氷を踏むような自分の家族と違う、梢の家族の厚みの中で、
依子はほっと息をつくことができる。もちろんそれは短い間だから余計に
いいんだろうけれど。人と人とが繋がる濃い空気が、単調だった依子の
人生に、新しい色を吹き込む。それはこの梢の「家族」が長い間かかって
積み上げてきた歴史のようなもの。何世代もいる家というのは、そんな空気が
腐葉土のように、お布団のように漂っているものなのだ。
喜びも、悲しみも、けんかも、愛情も、家族という底知れない関係の中に
溶け込んでしまっている。その濃さに、よそものとして浸ることで、たくさんの
ことが見えてくる依子の変化が、丁寧に書かれていて、共感できます。

家族がたくさんいて、その中で暮らす、ということは一見楽しげに見えるけれども
やっぱり大変なことなのだ。お互いガマンしたり、譲り合ったり、見ないように
しなければならないことが、たくさんあったり。でも、そうやって大変さの中で
生きているから、面白かったり、お互いを支えあったり、できる。
お互いのクッションがたくさんあるから、悲しいことは半分になってうれしい
ことはより大きく感じられもするだろう。そこから徹底的に逃げた依子の両親は
いつまでたっても、「大人」にはなれない。それが依子の心を冷やしていたのだけれど
この大家族の中で過ごしたことで、依子は、またその両親も、いろんな悩みを
持つ人間であることを受け止められるようになる。ある意味、母親より大人に・・。
そして、大家族の中に一人嫁にきて、辛いことをガマンしていつのまにか大きな
存在になっているお母さんの血を、梢もちゃんと受け継いでる。
ああ、女の子って、あっという間にこんな風に大人になっていくんやなあ。
こんな強さがあるから、女は母になれる。しなやかに強くなっていく少女の
感性がまぶしいなあ。そよ風の中に流れているリボンが、依子のこれから
紡いでいく愛情のように思えて、暖かかった。読みやすくて、いい小説でした。


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青いリボン 大島真寿美著。
小さい頃から両親の家庭内別居の中で、それを不幸なこととも思わずに、そういう形の家族なんだと思いながら成長した依子。 高校生になった時、父の転勤、母の海外出張と、一気に「離婚」に向けて家族が動き出す。 それまでは家庭内別居とはいえ、安定した3人のバランスが一.. ...続きを見る
じゃじゃままブックレビュー
2007/07/17 16:00

コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
本当に大島作品はいいですよね。
依子が、あ、大人になっていく!って読み終えた後気付く爽快感といいますか。そして両親も、本当は嫌いじゃない、似すぎていて理解し合っていて、でもやり直せない、そんな大人の事情も垣間見れて、3人がそれぞれの立ち位置で向かい合えそうな予感もいいです。
じゃじゃまま
2007/07/17 16:03

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