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help リーダーに追加 RSS いっぺんさん 朱川湊人 実業之日本社

<<   作成日時 : 2007/09/15 00:03   >>

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画像この朱川さんはよかったなあ〜・・・。
読み出したら止まらなくなって一気読みしました。
人の・・この世界の闇と光の間にある、ぼんやりとした領域で
息をしているあれこれを、詩情を湛えつつ掬ってみせる、その
物語に漂う気配が好きです。
前作の「水銀虫」は、ちょっと私には物足りなくて、その気持ちを

「・・そうだわ。今回なかったのは、「詩情」かもしれない。(ここまで書いて言うな、って)
うん。人の醜さに、嫌らしさに、どうしようもなさに吐き気を催しながら、
一方でそれを愛しいと思う気持ち・・。その愛しさが今回なかったような気がします」

なんて書いたんですけど、今回はその詩情がたっぷり溢れてました。
人の小ささ、醜さ、悲しさ・・・。それが非常に愛しげに書かれています。
朱川さんには、こういう湿度のある幻想が似つかわしい。
同じ時代に子どもだった私の見ていた世界と、朱川さんのこの世界が
重なって見えるから、という非常に個人的な理由かもしれないけれど。


「いっぺんさん」
この物語のテンポが非常に私のツボにはまって、もう泣けてしゃあなかったですね。
もう読み始めから、このしーちゃんが幸薄い・・ということ、わかってしまった。
朱川さんが打ってくる手に、わかっていながら半歩先を越され、急所をおさえられる。
この物語は、朱川さんも書きながらノッてらしたのではないかしら。
しーちゃんの笑顔が心に刻まれた一篇でした。

「コドモノクニ」
昔ねえ・・「いう事きかへん子はサーカスにさらわれるで」なんて言われたもんです。
もう、ウン十年も昔の話・・・まだ縁日に「見世物小屋」なんてのがあった時代の
話ですが。幼心に、「ああ・・この人たちは、さらわれちゃったんやろうか」なんて
寂しいやら、悲しいやら、それでいて妙に心惹かれるやらで、ドキドキしてその
極彩色の看板を盗み見たものでした。その時の気持ちを思い出すような短編。
ちょっとしたことで、「消えてしまいたい」と真剣に思うことが多かった私は、
よく小さくなっていなくなる妄想で心落ち着かせたものですが、それが
そのまま書かれているのにびっくりしました。こういうのって、誰でも一度は
思うことなのかもしれませんね・・。


「小さなふしぎ」
「傷痍軍人」という方たちも、小さいころはよく見かけました。
いつも、見てはいけないように思い、目を伏せて歩いていたことを
思い出したり。この世の中には、一言では言えない理不尽さや、背骨に沁みるような
侘しさというものがあるのだと、体で感じた遠い日。
そういえば・・いつからか、乞食さん(呼び方おかしいですか)もいはらへんようになりました。
昔、京都の四条の橋のところに、いつも同じ乞食さんがいはりました。
その人の前を通るとき、いつもドキドキした。前においてある入れ物に
お金を入れても入れなくても、動揺してる自分の心を見透かされそうな気がして。
いろんな面での凸凹が大きかった時代。いまは妙にそれがのっぺりしてるだけ、
こういう「鳥使い」なんていう仕事は成立しないような気がしますね・・。
死んでもずっと「おみくじ」を引き続けるチュンスケがいじらしいです・・・。

「逆井水」
二日間のハーレム。う〜ん、これはやっぱり男の人の夢ですね(笑)
だって、この逆バージョンって、あんまり嬉しくないもんなあ・・・。
というか、はっきり言ってイヤです。いくらイケメンでも、事に及びたいか
どうか、全く違う問題で・・・(笑)しかもたくさんいるなんて、うんざりする・・。
好きな人は、一人でいい。あはは・・私の話は、ええねんて!!
美味しい話には、裏があるよ、気づけ!!と思ってたら、やっぱり(爆)
ま、こうなるわな・・。

「蛇霊付き」
これはねえ・・妹の方がわざわざ殺されに電話かけてますよね。
姉妹の間の愛憎は、常に鏡に映る自分を愛したり憎んだりする
ようなものかもしれない。だから一旦それがこじれるとどうしようも
なくなってしまう。蛇となって夜中に廊下をくねりながら進む妹の
姿は、ちょっと滑稽も伴う悲しさですね・・。

「山から来るもの」
ああ・・この居場所のなさ。自分が場違いなところにいると思ったときの
なんとも薄ら寒い気持ち。私はこれがなんとも苦手で、このストレスで
急性腸炎を起こしたこともある。この阿佐美に妙に感情移入しました。
山から下りてくるアレがかもし出す寂寥感と阿佐美の居場所のなさが
響きあう冷たい感触がリアルです。

「磯幽霊」
行き場のない愛情に囚われたままの亡霊と、その亡霊に執着してしまった
男。・・・多分、この男が死んでしまったら、この磯幽霊も出なくなるのだろう。
人の心を縛るのは、やはり人・・・。

「八十八姫」
人柱の話ですね・・・。
昔話を読んでいると、若い娘が魔物に見初められて嫁入りさせられる話は
よくあります。昔は、こういうことも本当に行われていたのでしょうね・・。
切ない。そして、ラストが美しい。少女の健気さと、運命を受け入れる
雄雄しさ・・。こんな気持ちに大人が甘える構図がなんとも愚かしい。
その愚かしさを、朱川さんは、ひっそりと見つめて美しさと同じ温度で
描き出す。湿り気を帯びながらセンチメンタリズムに堕ちない筆致が見事です。


個人的には、もっと人気があってもいい作家さんだと思うんですが。
眠っていた記憶を揺り動かしてくれるような、物語・・・。
そこから見るこの世界は、幼いころに感じたような不思議に満ちている・・。

次作が楽しみです。





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いっぺんさん 朱川湊人
装画は宇野信哉。装丁は坂川栄治+永井亜矢子(坂川事務所)。初出は月刊J-novel。短編集。 表題作。どんな願いもいっぺんだけ叶えてくれる神様を探す2人の少年。語り手のうっちんと... ...続きを見る
粋な提案
2007/09/17 03:10

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
『サニーサイド〜』トラバだけでごめんなさい。PCの調子が悪くて、途中で壊れてしまったので…。買い替え検討中です。
ノスタルジーと恐怖が融和した朱川ワールドでしたね。
怖いもの見たさで何とか最後まで読めました(笑)。
藍色
2007/09/17 03:09
>藍色さん
PCが・・(>_<)それは死活問題です。でも、買いなおすと、また設定とかが大変ですよね。
お疲れでませんように・・。
恐いんですが、朱川さんの心の奥行きにある暖かさが滲んでくるようで楽しく読みました。やっぱり好みです。
ERI
2007/09/19 00:53

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