古典部シリーズ最新作です。いや〜、安定感。読む側も、なじみの友達に会う感覚で、 お話にするっと入っていける。相変わらずの省エネ奉太郎と、 お嬢様える。軽い里志に賑やかな伊原・・。それでいてサザエさん みたいに時間の進まない世界・・ ではなくてこの物語の中で、ゆるやかに時は流れて皆、ちょっとずつ 変わっていく。その繊細な味わいがとっても魅力的です。 七つの短編です。いつもながらの、謎とも言えないような、小さな謎。 それが謎だということに気づくのもセンスが必要なほどの謎。 そんな謎に敏感に反応するえるの好奇心に応えて、鮮やかに 謎をほどいていく奉太郎くんです。面白いのは、この短編が時系列に 並んでいて、ゆるやかに繋がっているところ。これまで発表されている 古典部シリーズの間を埋めていく形。これがね、いい味を出してます。 ゆっくりと時間を積み上げながら、お互いの中に育っていく関係が 見えるんですよね・・。一番初めの「やるべきことなら手短に」という 短編で、奉太郎は、あるちょっとした罪悪感をえるに対して抱くんですが 彼女が大切な存在になるにしたがって、そのかすかな痛みが変わっていくんですね。 初めはえるに、ちょっと逃げ腰だった奉太郎が、「手作りチョコレート事件」では えるを傷つけまいと活躍し、彼女を傷つけた相手に怒ってます。 そして、最後の「遠まわりする雛」では、そんな自分の気持ちに あの省エネの奉太郎くんが、気づいてしまうんですよねえ。 桜の下を歩く雛の装いのえる・・その光景に魅了されたのは 奉太郎くんだけではないでしょう(笑) この「古典部シリーズ」に流れる若者の感覚は、今の若者の「気分」に よくマッチするだろうなあ・・と思います。フラットでクール。 いい意味で逸脱しない主人公。淡々と繰り返される日常。 でも、よ〜〜く見ると、その中にたくさんの細やかな気持ちの襞や 喜びや、謎が隠されている。この本の表紙の木々に囲まれた道のように いろんな光があたってきらめく出来事を、丁寧にかきあげた、これはミステリー ですが、やはり青春小説でしょう。そして、青春小説ほど、古今東西 人の心を揺さぶるものはないんですよね、これが。 過ぎていく季節を、小説だけが永遠に刻むことができる。 そこに旅すれば、人は何度も木漏れ日の溢れる場所にたどりつける。 この世界の時間がどう流れていくのか。見届けたいと思います。 おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php |
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遠まわりする雛 米澤穂信
装幀は岩郷重力+WONDER WARKZ。初出「野性時代」「ザ・スニーカー」+書き下ろし。古典部シリーズ四作目。連作短篇集。 省エネ主義の語り手、折木奉太郎は神山高校入学後、他に誰もいなかった古典部に入部。教室に閉じ込め ...続きを見る |
粋な提案 2007/12/29 03:21 |
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