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zoom RSS メジルシ 草野たき 講談社

<<   作成日時 : 2008/07/04 20:34   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

画像母と娘の問題、というと、「イグアナの娘」という、
萩尾望都さんの作品を思い出してしまうのだが、
この草野さんの「メジルシ」も、連鎖ともいうべき、母と、娘の
苦しさを取り上げた物語。

中学三年生の双葉は、母の美樹と、父の健一の
三人家族。しかし、美樹と健一が離婚することになり
家族は、最後の家族旅行に、北海道に出かける。
要領が悪い父の考えた旅行は、ことごとくマヌケで、しかも
移動距離ばかり長い過密なスケジュール。
その中で、双葉は、それまでごまかしていた自分の
気持ちと向き合い、そして、母と初めて向き合っていく。

母と娘ほどこじれると難しいものはない。
同性だから。うまく距離が取れないから。
この母である美樹も、自分が母に長らく心理的に支配されて
いたことから抜け出せていない。
だから、自分の娘が、全寮制の学校に行ったり、自分の夢を自由に
語ったりすると、「ずるい。私は、そんなこと許されなかったのに」という
嫉妬の気持ちが湧き出る・・。
勘の良い双葉は、そんな母の気持ちを敏感に感じ取って、なるべく大人の
ふりをする。傷つかないふり、見てみぬふり。
そんなの、気にしない、というふり。
でも、「旅」という、日常から離れてしまう一日が、目をつぶってきたこれまでの
もろもろを浮き上がらせてしまう。
そんな旅の中で浮き上がる、母と娘が抱えている傷を、うまく掬い上げて
描き出した草野さんの筆は暖かくて、やはり女である私の胸にある
いろんな記憶が、ちくちくした。

草野さんの描きたかったのは、それでも、親子はやり直すことができると
いうことなんだと思う。何度でも、何度でも、何度でも。
この双葉という女の子が、最後に見せる強さは、少し出来すぎていて
こんなにうまくはいかないだろう、と思ってしまう部分もある。
この年頃の女の子が、こんなに自分の気持ちをいきなり整理して
母親を抱きしめることができるのかな、と思ったりしたが
そんな母の弱さを、抱きしめようとする、双葉の母性が、
この物語の救いなのかもしれない。
親子というものは、愛がこじれると、これほど難しいものはなくて・・。
最近の殺人事件の報道が、なぜか家族間のものがやたらに多いのも
その一つの現れなのかもしれない。
双葉の見せた思いやりと、素直に愛されたり、愛したいと願う強さが
そのもつれを解く、たった一つの鍵なのかも。

娘に付けた傷跡は、これ以上娘を傷つけたくない、自分への戒め。
・・・そのメジルシが、愛のしるしになるように。
どんな思いからだとしても、子どもを傷つけてしまった記憶は
ずっと心に苦く残ってしまうから。
主人公の双葉よりも、ずっと顔を伏せている母親の美樹の心中が
気になったのは、私の年齢的なものなんでしょうねえ。
草野さんらしい、さりげない、ほろ苦くて暖かい物語でした。

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