おいしい本箱Diary

アクセスカウンタ

zoom RSS 不連続の世界 恩田陸 幻冬社

<<   作成日時 : 2008/09/10 00:17   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

画像中篇が五つ。
日常の風景が、ぐらりと揺らぐ不安と酩酊。
恩田さんの小説は、いつも着想が面白い。
その着想が、時として竜頭蛇尾に終わることも
多いのだけれども、中篇・・ということで、いい感じに
酔っ払ったまま、次の世界に進める利点が(おいおい)
それぞれの物語が共鳴して、不思議な音楽を奏でているような
いい感じの非日常を味わわせて頂きました。
幾つかの物語に、なじみの深い文学作品が出てきたのが
面白かった一つの要因かもしれません。

「木守り男」

桜というのは、日本人なら誰でも知っている、非日常。
裸だった木々が、一斉に薄ピンクに染まる光景は
感受性が鋭い人間にも、そうでないものにも、やはり
心に食い込む光景だと思う。
梶井基次郎、坂口安吾の桜の名短編が生まれたのも
必然のように思う光景です。
その光景と、見慣れた光景でも、時間帯によって
全く違う肌触りになることの面白さが重なって
異次元空間になる、その雰囲気が読みどころ。
主婦にはお馴染みの、平日昼間の空気感、というのは
お勤めの人には肌に馴染まないものなのだということに
気がつく。うちの周りも、平日の昼間は、しーん、と静か。
100年たってもこのままのような、そんな気が時々してしまうんですが
私は、その空気感が心に馴染みます(笑)
この主人公の塚崎多門といい、友達のロバートといい、日常生活を
感じさせない人物であることが、この物語に、浮遊感を与えてますね。


「悪魔を憐れむ歌」

こういう音楽にからんだ怪談、というのは私も幾つか聞いたことが
ある。それと「山の音」という川端康成の小説をコラボさせた
ところが、面白い。川端康成は怪奇作家・・という意見には、私も
ほぼ同意。あの執拗なまでの「美」の追求は、グロテスクと背中合わせの
ものであり、彼は異端の人だったと思う。
トリックというか、謎自体は予想がつくのだけれど、「山の音」という
背景を持たせたことで、世界が深まってますね。
「死」の気配がどの作品にも濃厚に漂っていた川端の小説に溺れたことが
あるかないか、で評価が分かれてしまう作品かも。

「幻影キネマ」

尾道、って行ったことないなあ・・。
坂の町、というのはロマンをかきたてますね。
幼い頃に見た夢が、実は恐ろしい体験を映すトラウマで
あったというところが、鍵なんですが・・。
幼い頃の夢というのは、現実と夢の境目が曖昧ですよね。
いまだに、それが夢だったのか、現実だったのか、よくわからない
事がある。田舎で見た、と思っている空が真っ赤になるほど
赤とんぼが群れ飛んでいた光景とか。黒いベルベットのワンピースを
着ていたときに、モンシロチョウが止って、思わず手で払ったら
羽が粉々に砕けて燐粉が黒い毛足にからみついて取れなかったこととか。
この物語に関係なく思い出して、曖昧な気分に浸ってしまいました。

トラウマと罪悪感が結びついて、自分だけのジンクスを作ってしまう。
それも、自分の心を守ろうとする、安全装置なのかもしれない。
ポーの「大鴉」の詩を、久々に読みたくなりました。
ポーって、恩田さん、すごく好きそうだなあ・・。

「砂丘ピクニック」

消えた砂丘と、消えた男。
その砂丘の謎の解明は、うーん、それって謎解きなん?
という感じなんですが、こういう風に、ちょっとした謎が続いて起こることって
ままあって、その感覚を共有する楽しさがありました。
松本清張というと、「砂の器」。
松本清張記念館もいいですが、植田正治写真美術館に行ってみたいなあ・・。

「夜明けのガスパール」

これはねえ・・ちょっと設定に無理があるか、と思いましたが(笑)
いくらなんでも、いい大人が、こんなに自分の父親の病気から逃げる
ことはあるまい・・というか、現実を全て奥さんに押し付けてる多門に
ちょっとどうなん、と現実的に考えると腹がたつわけですが。
(このあたりに、ちょっと自分の年齢を感じてしまう)
夜汽車の離人感にはおおいに共感するところがあるんで、プラマイゼロと
いうところでしょうか。

現実と幻想の世界があやふやになってしまう
心の不確かさ・・。人は、自分の「認識」というものでしかこの世界を
理解しない。そう思うと、非常に足元がぐらりとしますが、
そのぐらりは、やはり時々感じておきたい。感じないままに、
自分だけの認識に慣れていると、たくさんの事を見落として
しまうように思うので・・。恩田さんは、その「ぐらり」を感じさせて
くれる数少ない人ですが、当たり外れが大きい(笑)
この物語は、私としては、あたりでした。



不連続の世界
幻冬舎
恩田 陸

ユーザレビュー:
「不連続」をどう捉え ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

記事一覧

不連続の世界 恩田陸 幻冬社 おいしい本箱Diary/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる