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zoom RSS 新世界より 上下 貴志祐介 講談社

<<   作成日時 : 2008/10/06 00:02   >>

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最近、長編を読むのが苦しいんですが(笑)
頑張って読みました。長かった・・分厚い分厚い上下巻。
「人間の醜さ」を、貴志さんらしい独特の美学が充満する
グロテスクさで書き上げた力作でした。

設定は、はるか未来。
人間は「呪力」という能力に特化した世界を作り上げている。
大人になるためには、まず呪力を身につけることが必要なのだ。
子ども達は、精神的にも肉体的にも徹底的に管理され、「八町標」の
外には出てはいけない、と教えられている。
その中で、早季、瞬、覚、真理亜、守という仲良しの五人組は
夏季キャンプという初めての冒険にでかける。
それが、大きな悲劇の前触れになるとも知らずに―・・。


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この、妙な生き物たち・・ミノシロ、パケネズミ、ネコダマシたちが
蠢く世界に身をおく感覚は、昔はまった「漂流教室」に
のめりこんだ時以来の気色悪さ(笑)
あの作品は、タイムスリップという罠にはまった未来の世界が
もたらす恐怖、目をふさがれてわけの分からない世界に
放り込まれた恐怖が、リアルで身に沁みました。
子ども心にえらい怖かったという記憶があります。
そして、この早季たちの世界においても、子どもたちは
完全に情報操作されて、真実を見る目を完全にふさがれているんですね。
主人公の早季達は、将来のリーダーになるべく、その縛りがゆるかった為、
好奇心からいろんな事に首を突っ込んでしまう。
その早季とともに、少しずつ、明らかになっていくこの世界のからくりが、
まるで次々現れる悪夢のよう。これでもか、これでもか、と畳み掛けてくる
迫力に、圧倒されながら早季と一緒にのたうちまわりました(笑)
ちょっと一つひとつのエピソードが饒舌すぎて時々息切れしてしまう感は
ありましたが、この異世界の構築力は凄いと思います。

どれだけ情報管理を徹底し、幼い頃から、人を傷つける行為に対する禁忌を
植え付け、食い止めようとしても、食い止められぬもの・・・。
それは、人の心に巣食う、暴力性・・暗黒の闇。
人を情け容赦なく殺戮してまわる「悪鬼」の姿に、最近とみに増えている
残虐な事件のあれこれが重なって、暗澹としてしまう。
しかし、そんな、ただ理不尽な残虐性の塊に見える、この物語の中の「悪鬼」も、
この世界の人間たちが常日頃、虐げ、管理している「パケネズミ」に
している仕打ちの裏返しなのだということが、わかるという、皮肉な結果。
自分たちの心に巣食う残虐性に殺されているようなものなんだなあ・・。
だとしたら・・呪力を持たない、今の人間存在が、時として荒れ狂うのは
一体何の裏返しなのだろう。

最後に明らかにされる「パケネズミ」の正体に、びっくりびっくりでしたが。
あの、果てしなく戦争を続けている愚かしさは、まさにその正体にふさわしい
ものなのかもしれません。先日見たNHKのドキュメンタリーで、兵士が人を殺す、
その心理的な抵抗を、いかにして失くすことに国家が腐心してきたか、
という歴史をレポしていました。人を「モノ」として見ることが出来るように、
何度も何度も、人形を機械的に攻撃させて、心を麻痺させる。
その結果、「人が人を殺す」という、人間の心にあるタブーの気持ちを
削いでいく。そうしたら・・人は、人形のように人を殺せるようになる。
ところが、そうして人を殺した戦争から帰ってきた兵士は、その後の人生
苦しみと後悔、罪悪感の悪夢の中で一生苦しむことになる・・・。
わかっていても、その理不尽な行為をやめられぬ人間という存在の
ありようを、貴志さんは、徹底的に書きたかったのかもしれない。
その自分たちの世界のからくり、真実を知った上で、なんとか未来にむかって
歩こうとする早季の強さが唯一の救い。
どれだけ汚れた世界でも・・生まれてくる子は希望そのもの。
その希望を、なんとか大切にしたい。
千年前と、今と、人間はさほど変わっていない。千年後は?
そんな事を考えた「新世界」からの早季のメッセージでした。

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