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zoom RSS モダンタイムス 伊坂幸太郎 講談社

<<   作成日時 : 2008/11/28 20:38   >>

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人は知らないものにぶつかった時、まず何をするか?
「検索するんだよ」



「魔王」の続編という事だけれど、これだけで読んでも
十分楽しめる。タイトルは、チャップリンの有名な映画から
付けられているらしい。機械というものに振り回される
人間を風刺した有名な映画。
この物語は、システムエンジニアの男が、いつの間にか
事件に巻き込まれ、これまで全く知らなかった、
大きなシステムの一面を垣間見る物語。

私も立派なネット中毒なので、やはり、何かわからない事があると
絶対に検索します。まず、そこからという習慣がついてる。
この検索、という行為をうまくトリックにしましたね、伊坂氏。
始めは、ただの怖い奥さんの話かと思ったら、そこからどんどん
謎が膨れ上がっていくあたりは、上手いもんですね。
前作の「魔王」とは、作風に違いがありますが、
巻き込まれても、巻き込まれても
底が見えない不安を掻き立てられる底なし感は、こちらの方が
強かったかもしれないと思います。
でも、あれですね。モーニングで連載ということで、たくさん
ヤマ場をつくる必要があったでしょうし、マンガがひしめく
週刊誌の中で存在感を放つために、いろんなシーンや設定を
盛り込まなければならなかったのでしょう。そのせいか、
ちょっと物語がごちゃごちゃした感じはあります。
そこが、長編として読んだときに、めんどくさいかも。


ある特定の言葉を組み合わせて検索をすることが、危険を招く。
これ、ひょっと、やってしまいそうじゃありませんか。
このネットという世界・・。広大に見えながら、けっこう閉鎖的な
ものであるという事に、長く見ていると気づくことが多いです。
「皆言ってる」という皆が、ほんの数人だったり。
大声で、しつこく言い続ける人のいう事が、おかしくても、
段々まかり通っていったり。
でも、その判断は、自分が詳しいジャンルなら、できる事も多いですが
その中で、日々膨大に頭の上に流れていくもの・・例えばニュースなどは
もう、「ふーん」と流れていくに任せてしまう。
その中に、こうして、情報操作されているものが混じっていたとしても
気づかないかもしれない。ぼんやりと特に何の自覚もなく、
自分は普通に暮らしていると思っているのに、
ふと、気づくと、いわれのない暴力を受けることになってしまう・・。
テーマとしては、並行して書かれていた「ゴールデンスランバー」と
やはり、似ています。伊坂氏いわく、この2作は、兄弟という事ですが、
「ゴールデンスランバー」が、国、国家というシステムの中で生きる
「個人」に焦点をあてて書かれていたのに対して、
この「モダンタイムス」は、その国というシステムそのものの不気味さに、
焦点をあてて書いてあるように思いました。
だから、どうしても最後まで割り切れないもどかしさがある。
最後まで、突き詰めたというカタルシスは少なくなります。
国や社会という、そこにあるようで、実は、
どこに実体を求めればいいのかわからないものを相手に
する、その焦燥感や空しさが、どうしても漂います。
だからこう・・読んだあと、すっきり爽快というわけにはいかないし、
解決したかどうかさえもわからないんですが、そこに、私はかえって
伊坂氏の誠実さを読んでしまいました。
この小説の中に出てくる、なにやら胡散臭い、小説家・井坂氏のセリフ。

小説で世界なんて変えられねえ。届くかもしれねえ。
どこかの、誰か、一人


小説なんだから、どこまで風呂敷を広げてもいいし、すっきり気持ちよく
結末を迎えられるように、解決路線突っ切ってもいいんですよ。
でも、それはしない。それは、嘘なんじゃない、って事なんですよね。
何だか、果てしなく複雑なようで、それでいて、やたらに幼稚で
ヒステリックで、追えば追うほど、どこから爪をたてていいのかわからなく
なる、この時代というか・・世の中に対して、自分に何ができるのか。
ささやかな超能力を使って、人を助けようとした安藤夫婦の誠実さは
はたから見れば滑稽なのかもしれない。
でも、そんな、個人の中に潜む、ひそやかな力こそが、人の持つ美しさ
なんだと思う。五反田の潰されまいとする気概や、
なんとも強い佳代子の頼もしさと、気持ちいいまでの現実主義。
そして、渡辺の中に生まれてくる、はじめは実家に忘れてきた勇気。
そんな、小さな、たった一人の真実からしか、何も始まらないんだと
いう事が、熱くならずに、静かに胸に着地するのが、伊坂氏の持ち味だと思うし、
その伊坂氏の誠実さを、私は信用してるんだな、と思える本でした。

一つ、私の失敗は、特別版を読んでしまったこと。
とことん活字人間の私には、挿絵はジャマでした。
普通版を読むべきだったなあ・・遅いけど(汗)


おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php







モダンタイムス (Morning NOVELS)
講談社
伊坂 幸太郎

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タイトル (本文) ブログ名/日時
『モダンタイムス』/伊坂幸太郎 ○
うわぁ・・・。あと味、悪ぅ〜。この読後の胃にもたれる感じ、ぞわぞわする感じ、うう・・・ダメだぁ〜。 伊坂幸太郎さんの『魔王』の50年後を描く、『モダンタイムス』です。 あれから50年、国民投票で憲法は改正され、徴兵制が実施されたり、国民監視体制は更に巧妙になってきている。 システムエンジニアの渡辺拓海がある日帰宅すると、妻の差し向けた拷問者がいた・・・。彼は「勇気はあるか?」と問いかける。 この物語の根底にあるのは、この問いかけのような気がする。登場人物に、読者に問いかける。 「... ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2008/12/17 22:59
【モダンタイムス】 伊坂幸太郎 著
やはり世の中は「誰か」にコントロールされているのだろうかまずは来訪記念のポチッ[:ひらめき:] [:next:] ブログランキング[:右斜め上:]【あらすじ】検索から、監視が始まる。漫画週刊誌「モーニング」で連載された伊坂作品 最長1200枚。岡本猛はいきなり現われ脅す。「勇気はあるか?」五反田正臣は警告する。「見て見ぬふりも勇気だ」渡辺拓海は言う。「勇気は実家に忘れてきました」大石倉之助は訝る。「ちょっと異常な気がします」井坂好太郎は嘯く。「人生は要約できねえんだよ」渡辺佳代子は怒る。「善悪な... ...続きを見る
じゅずじの旦那
2009/01/21 10:03

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ERIさん、こんばんは(^^)。
マンガ雑誌での連載だったせいか、ちょっと散漫な感じが否めませんでしたねぇ。伏線もいつもの伊坂さんworldのようにはありませんでしたし。
というより、次作があるのでは?というぐらい解明されてないことがいっぱいでしたね。
佳代子さんの正体は、是非知りたいです。
水無月・R
2008/12/17 23:12
>水無月・Rさん
そうなんですよね〜、ちょっと詰め込みすぎてそれをあの枚数に納めるのが大変だったという感じです。
自分が挿絵のついた特別版を読んだせいもあるかと思ってましたが、やっぱり、もう少しシェイプしたほうが良かったのかも。盛りだくさんのエピソードが、ちょっと勿体なかったですね。佳代子さんは謎の女です(笑)

でも、ここからまた、たくさん伊坂ワールドが始まりそうな予感がします。次作も期待大です♪
ERI
2008/12/18 00:35

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