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zoom RSS 小川洋子の偏愛短編箱 小川洋子 河出書房新社

<<   作成日時 : 2009/06/09 22:01   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 1 / コメント 0

画像小川さんが自分の大好きな短編を集めたもの。
かなり怪しいラインナップになっています。
お気に入りの短編を、十六の仕切りのある箱に集めたという
コンセプトらしいのですが、まさに収集した、という感じ。
収集といえば、小川さんのキーワードです。
「沈黙博物館」の村人たちが生きた証を集める技師。
そして、「薬指の標本」の、秘密の場所に蓄えられる標本たち。
「貴婦人Aの蘇生」の剥製たち・・・。
集められることで、新しい光を浴びて、自己主張しだすコレクション。
この短編たちも、こうして小川さんのもとに集まることで、
またいい味を出して並んでいます。

冒頭の、百關謳カの「件」は、さすがの怖さです。
「件」をテーマにした作品は、いくつか読んだ記憶がありますが
百關謳カのが、一番怖い。狂気が、他人事ではない怖さです。
不条理が、ぽそっと、無造作に置かれている。
ゴヤの「黒い絵」を思わせますね。
無造作に不条理を描き出す百關謳カの淡々とした筆遣いが一番怖い(笑)
向田邦子さんの「耳」は、昔読んだ時にも思ったんですが、非常に
生理的にこたえます。むずむずする。耳に出来たイボを糸で括って
腐らせて取る話なんですが・・。女の子が耳に結んだ糸を、
きゅっとひっぱりたくてたまらん感じになりますね。
非常にエロチックです。向田さんは、えらくストイックな方でしたが
その張りつめた美しさの下に、ぎゅっと詰まったエロスを感じさせます。
あけすけな感情よりも、こうやって押さえて押さえて漏れ出してくる
ものの方が、エロチックなのはこれはもう人間心理として仕方がない(笑)
あと、かさぶたとか、爪とかに対する皮膚的な執着は、私も昔から同じなので
小川さんとそのあたりの、ライトな変態加減を話しあって、おおウケしたいなと
思ってしまいました・・。

その押さえたエロチックと言えば、田辺聖子さんの「雪の降るまで」でしょう。
おせいさんの恋愛は、いつも、そこはかとなく「死」の匂いがします。
「ジョゼと虎と魚たち」もそうでしたが、女が身の内に抱えている、無常観というか。
命を生む性であるからこその、深く死と繋がっている感覚。それが、深い恋愛に
おけるエロスと結びつく・・。こういう昏さは、女の人が持ってる秘密なんですよ。
それを、こうして物語にしてしまうのは、ほんまは、タブーかもしれないです。
いや、ほんまに、大人の文学ですね。この年齢で、じわじわと応えてきます。

私が初読みだったのは、最後の吉田知子さんの「お供え」。
これがねえ・・非常に怖かった。何気ない日常から、転がり落ちるように、
足を滑らせていく感覚です。気がついたら、もう戻れない。その境目が
はっきりしないままに「戻れない」ことを確信してしまう。
気分はグレゴール・ザムザですね。
「お供え」されるということが、こんなに怖いことやなんて、初めて知りました。
盲点でした。

こうやって読んでみると、この短編たちが小川さんと非常に深く結びついて
いるのを感じます。小川さんのファンなら、きっとどの短編も、面白く読めると
思います。しかし、なんですねえ・・。
怪しげなラインナップなのに、この短編をうれしそうに眺めて頬ずりしてる
小川さんは、やっぱり初々しい少女のイメージなんですよ・・。
これは、ファンだからそう思うのかしらん。それとも、小川さんのリスペクトの
気持ちが、滲んでいるからかしらん。
興味深いところです。


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タイトル (本文) ブログ名/日時
「小川洋子の偏愛短篇箱」感想
「子供の頃、爪とカサブタを、こっそりとコレクションしていた」という部分から、ぐわっとこの小説読みたい!という気にさせられました。 ...続きを見る
ポコアポコヤ
2009/06/11 13:48

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