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zoom RSS なくしたものたちの国 角田光代 松尾たいこ 集英社

<<   作成日時 : 2010/11/01 23:35   >>

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画像角田さんと、松尾さんのコラボによる、5つの物語。
後書きを読むと、まず松尾さんの絵があって、それに
角田さんが物語をつける形だったようだ。
この二人の描く世界が、何やら私のツボに非常にハマって
しまった。・・心の芯、みたいな所にズシンとこたえて、
後書きで松尾さんもおっしゃっているのだが、まるで5つの
短編が自分の物語のように、シンクロしてしまった。
何なんだろう、このシンクロ具合。

「晴れた日のデートと、ゆきちゃんのこと」
「キスとミケ、それから海のこと」
「なくした恋と、歩道橋のこと」
「さようならと、こんにちはのこと」
「なくしたものたちのこと」
の5編が収録されている。
人生の時々において、「なくしたものたち」が、語られる。
その合間に、松尾さんの色鮮やかな絵が入っているのだが、
これがまた、妙に懐かしい風景で参ってしまった。
私が小さい頃の写真は、まだ白黒だったけれど(年齢がばれるね)
幼い頃に見た夕焼けや、れんげ畑の色は、記憶の中だけにあるせいか
ますます鮮やかだ。その色たちに通じる、少しさびしい気配が
心をちくちく刺激する。角田さんの絶妙な言葉の魔法と相まって
読んでいる間中、私の胸の中から、何かがぐうっと出てきそうだった。

私はやぎさんと話が出来たわけでもないし、飼っていた猫が
生まれ変わって声をかけてくれたこともない。
恋をして、生霊になったこともなければ、子どもを電車に
忘れてきた事もない。でも、これらの「なくしたものたち」の記憶は
私の「なくしたものたち」と重なって見える。
ほんとに、どこかに「なくしたものたち」の世界があって、私のなくしものたちと
やぎのゆきちゃんが、話をしているんじゃないか、と思えてしまうくらい。
それは多分、彼らが「死」の世界にいるからだろうと思う。
その世界では、ひとりひとりの記憶は、大きな渦の中に
溶けて、何となく共有されてるのかも。
・・・話が妙に大きくなってしまったが(笑)
私が書きたかったのは、角田さんと、松尾さんのかけてくれた魔法で、
私も、「なくしたものたち」に再び会うことができた、という感謝だ。

この間レビューを書いた、こみねゆらさんの「にんぎょうげきだん」の
お人形さんたちのように、私が失ったものたちは、どこかを旅して
いるんじゃないかと思うことがあるのだけれど、
やぎのゆきちゃんのように、猫のミケのように、いつか、また出会えるのだと
したら・・・死ぬのも悪くないと思う。
「死」の世界は、私たちと切り離されているのではなくて、いつもこの世界と
背中をぴったりつけて、そこにある。生きていくことは、たくさんのものを失いながら
また、出会うものを愛していくこと。人生は一本の線でなくて、たくさんの
愛しい瞬間の積み重ねなんだろう。

「なくしたものたちのこと」の最後で、ゆきちゃんが呟いてくれる言葉を、
私はずっと忘れないと思う。書かないですよ。読んで欲しいから(笑)

なくして、なくして、その果てに何があるのかわからないけれど、
愛さずにいられないものとは、出会うようになっているものだと、私も思う。
たとえ、記憶が全てなくなってしまっても、魂が惹かれる
ものに出会ったら、きっと何度も愛してしまう。
愛することが人を幸せにするとは限らないけれど・・まあ、そこは
とりあえず置いといて(笑)
何かを心から愛した記憶が、人生を照らす光なんだと、私は角田さんの
物語を読んでいると、ふっと思うことがある。
また、再び出会えたら・・・ごめんね、って謝りたい命があって。
その子が、ミケのように帰ってきてくれたらいいなあと、
ひりつくように思ってしまった。

人生も、半ばを過ぎた人に読んで欲しい一冊。
たくさんなくした人ほど、この痛みと輝きに惹かれてしまうと思うから。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは♪かなり前に読み終えたこの本ですが、なかなか感想が書けずにいました・・。やっぱり上手く言葉には出来ないのですが、読んだことだけはERIさんにお伝えしたくて(笑)
松尾さん、そしてERIさんと同様。なんで私のことを知っているの?と思うぐらいに心にピタッとシンクロして、懐かしさや切なさで、いっぱいになってしまいました。もちろん私も、やぎさんと話が出来たわけでも、生霊だったこともないんですけど、これは自分の物語だと思いました。5編それぞれ読み終える度に、子供みたに泣きました・・。
なくしてしまったもの、人。この歳になるとい〜っぱいあるけど、この1日1日はきっと、また逢える日までの大切な1歩・・。これからも色んなものを愛しながら、歩いて生きたいと思います(^-^)

2010/11/26 22:08
>花ちゃん
コメント、ありがとうm(_ _)m
この本の感想は、私も、とても難しかったんです。何だか、気持ちにシンクロしすぎてしまって、言葉になりにくかった。そう。まるで、自分の物語のようで、ただ、頷いて泣いてしまう。悲しいわけでも何でもないのに、泣けてしまう物語でした。花ちゃんも、私も、角田さんも、松尾さんも、全然違う人生を送っているのに、どうしてこんなに懐かしいんだろう・・。それが不思議で、でも、それで当たり前のような気もしたりする。やっぱり、どこか人間ってパイプのようなものが、繋がっているものなのかもしれないと思います。
ERI
2010/11/27 20:22

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