おいしい本箱Diary

アクセスカウンタ

zoom RSS 言葉の誕生を科学する 小川洋子 岡ノ谷一夫 河出書房新社

<<   作成日時 : 2011/06/10 22:25   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

画像言葉、って何だろう。私も、常々それを考える。私は言葉で物事を考える。言葉の中に生きている。言葉を書き連ねる。しかし、その一方で言葉を口から出すことがどんどん苦手になる自分もいる。一度口から出すと二度と取り返しがつかなくなる言葉というものが、非常に怖くもある。ネットの海に氾濫する言葉にひどく傷つけられてしまうこともある。毎日、レビューを書こうとじたばたするが、うまく言葉がみつからず、ぼんやりすることもしばしば(笑)
とにかく、日々言葉と共に生きている癖に言葉に振り回される私なのだ。だからこそ、この小川さんと岡ノ谷さんとの言葉をめぐる会話のひとつひとつに、とても惹きつけられた。
「言葉はいかにして誕生したのか?」そんな大それたテーマを、科学している人がいる事さえ知らなかった私に、この本は様々なことを教えてくれた。そして、その科学の道案内をしてくれるのが、大好きな小川さん、ときては、もうやめられない、止まらない(古っ!)という、かけがえない知的好奇心をそそられる時間でございました。

言葉の起源とは何か。それを、人間以外のところから探ろうとするのが面白い。言葉は文節があるからこそ成り立つ。昔習った・・・えっと、ソシュールでしたっけ(汗)を、想いだすまでもなくそうです。つまり、音を組み合わせでき、新しい音を学習することのできる生き物は、人間と、鳥とクジラだけらしい。そして、歌を歌えるのも、この3種類だけだという。そうなんや。そんな事さえ知らなかった。そして、この「歌を唄う」という行為が、言葉の起源ではないかと岡ノ谷さんは推察している。つまり、人間も求愛の為に唄う種族だった。(そうか〜、そりゃラブソングが皆の胸にキュンとするはずだわ)上手に歌えるオスは、モテモテだった。(モテモテって・・古っ!)そのうち、求愛以外にも色んな場面で、歌を上手く歌える人間のところに人が集まるようになる。(ライブ会場みたい)そこで交わされるある音の連なりが、何らかの意味を持つようになり、それらが組み合わされて「言葉」になるのでは?という仮説です。ドキドキしますねえ、こういうのを聴くと。

先週の日曜、剛さんの、なら100年会館でのライブに行ったんですよ。そのチケットがこれまた激選で(汗)その、非常に歌が上手くて、激烈にモテモテの人のライブに行くと、もうそこに溢れている熱気というか何というか、そんなものをひしひしと感じるわけです。(自分もその中の一人…)なので、この言葉の起源説にとても深く納得してしまったんですよ。誰かをとても好きになる。愛する。これは、とても大きなエネルギーです。
求愛する、子孫を残す。これは生き物として一番本能に根ざした部分ですから。そこが「言葉」に結びつき、文化が生まれ、文明が起こる。でも、これを反対の立場から考えると、なぜクジラと鳥は文明を獲得できなかったのか、という疑問も浮かびます。

そして想うのは、人間の赤ちゃんの「言葉」に対する貪欲さ。お仕事で出会う、たくさんの赤ちゃんの潜在能力に、私はいつも心打たれてしまうんですよ。生まれてたった数カ月なのに、赤ちゃんは目が合うと視線を捉えようとする。そして、非常に物問いたげな顔をして、こちらを見つめます。そして、ご機嫌がいいと、いろんなおしゃべりまでしてくれる。その表情を見るたびに、日本語としておかしいかもしれないんですが、「何て人間なのだろう」と、感心してしまうんです。猫も話しかけるとお返事してくれるし、すごくこちらの感情を読んでくる。でも、当たり前なんですが、人間の赤ちゃんのように言葉を交わすことに、身を乗り出すようにしてこちらにやってくることはない。私たち人間には、「伝えたい」という大きな・・・貪欲なまでの欲求があるらしいと想う。そして、その欲求は深く言葉と結びついている。卵が先か、鶏が先か、言葉と共に生きてきた私たちだからそうなのか。そこは私にはわからぬ事ではあるのだけれど、この私たちの、「自分を伝えたい」という欲求は何だろう。日曜にお逢いした剛さんも、全身全霊を込めて唄い、音楽を奏でて自分を伝えようとしていた。私たちは、もっともっと知りたいと全身を耳にし、目にして彼の声、一挙一動を貪るように見つめる。その熱い情熱の中に、私たちが「言葉」を獲得するための何かがあるのかと想うと、それがすとんと納得できるような、不思議なような、そんな気持ちになる。

そして、これもまた深く考えざるを得ない一つの仮説も紹介されていました。この宇宙に存在する地球型惑星の割合、知的生命体の存在する割合、言語を習得している割合を計算すると、エイリアンはもっと地球にきていてもいいはずらしい。では、なぜそうではないのか。その疑問に対する仮説もちゃんとあって、それによると生命は言語を手に入れると、原子力を手にいれることになり、必ず滅びの道を歩むと。ああ・・そうかもしれない、と虚を突かれた気持ちがした。まさに今、私たちはその岐路にいるのだが、この仮説を知るまでもなく、私たちはもっと前・・広島と長崎に核が落とされた時、それを知っていたはずなのに。もっと、もっと、骨の髄から私たちはそれを知らなければならなかった。そう想う。村上春樹氏がカタルーニャ国際賞スピーチで語っておられたことは、誠に的を射た論だと想う。

この本で、小川さんは、岡ノ谷さんと交わしたこの思考のやりとりが、非常に大きな実りをもたらしたものだとおっしゃっておられた。それは、例えばメールやツイッターで切れ切れの言葉を交わすのとは違う、愚直なまでの手間暇をかけたやり取り。それがあるからこそ、私たちは少しでも思考を前に進めることが出来る。この、今の手軽な情報のやりとりが全盛である時代と逆行する営みこそが、豊かな言葉を生みだし、新しい何かを生みだす原動力となるはず、というこのお二人の意見に私も深く賛成だ。だって、こんなに長文書きの私ですからね(笑)この本の中でお二人もおっしゃっていたけれど、短い言葉で何かを切り捨ててしまうことで、私たちは大きなものを失ってしまう。「うざい」「キモい」この言葉で葬りさるものが多ければ多いほど、私たちは一言で他者を括って葬り去ってしまうことになる。
そのことがどれだけ危険なことか・・・言葉というものが生まれた時のことを考えながら、また改めてそう想いました。

「考える人間の傍らには必ず、忠実な従者のように、言葉が付き添っている。・・・だから考えている間、人間は孤独ではないのだ」

この小川さんの言葉を胸に刻み、ずっと覚えておきたいと想う。ここで言葉を紡ぐことに、時々迷うけれど。
私はやはり言葉を書くことで考えていくしかない。そう、こんな街の片隅で。おっと、ほんまにこの言葉を付けると、なんでもうまく収まるなあ(笑)ありがと、剛さん(笑)

2011年4月発行
河出書房新社

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

記事一覧

言葉の誕生を科学する 小川洋子 岡ノ谷一夫 河出書房新社 おいしい本箱Diary/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる