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zoom RSS その街の今は 柴崎友香 新潮社

<<   作成日時 : 2006/11/04 00:37   >>

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画像柴崎さんは、大阪の人なんだわ・・。
それを強烈に感じた、この作品。
大阪者には、非常にアピールする内容やなあ、と思います。

舞台は、大阪。ミナミです。難波、心斎橋、鰻谷、宗右衛門町、道頓堀、
アメリカ村、千日前、新歌舞伎座、松竹座・・・。
こうやって並べるだけでも、あの街の色合いや煩雑さ、独特の雰囲気が
匂ってくるような気がします。
そこで、失業中でバイトとコンパに明け暮れる、一人の女の子の姿を
描いたもの。粗筋らしきものはあまりない。この主人公の歌は、古い大阪
の写真を集めるのが、趣味。自分が今生きているこの街の、今と昔を
重ね合わせてみる・・それに惹かれている、という視点から大阪の街を
描き出すのが、主眼なのかもしれません。「今」を生きている視点。
典型的な街っ子の歌と、その友達。バイト先のカフェに出入りする人たち。
出会う、これも大阪の男の子や、ビジネスマン。
そのすべてが、地元ならではのリアリティに満ちています。

この界隈は、学生時代に、よく歩いたところ。
今もお芝居を見に行ったり、時々訪れますが、キタ(梅田界隈)とはまた
違う独特の大阪の雰囲気があります。色彩と人と、食べ物と、色事と、
それから、それらに群がる人間と。お店の回転も非常に早く、どんどん
移り変わっていく一方で、ずっと変わらず残っている店もある。
しかも、残っているのは、ちょっと不思議な店が多いのも特徴。
なんというか・・生きていくエネルギー、のようなものをひたすらぶち込んだ
様な街です。まず、人通りが絶えることは、ない。キタの店は割りと早仕舞いですが
このミナミは不夜城です。辻辻にプラカード持ってたってる、何年たってるねん、
というピンク広告もってるおっちゃん、おしゃれなカフェ、大きな本屋、そごうや大丸
といったデパート、水商売バリバリの呼び込み、しっとりした飲み屋、映画館・・。
およそ盛り場にないものはないよ、というものが狭いところに満ち溢れてる。
そして、文中にもありますが、このあたりに行くと。大概「へ?」とつい
注目してしまうような、変わった人に会う。ここでしか出会えない人、というのが
必ずいはりますねえ・・・・。
ここを歩いていると、人の多さにしんどくなりますが、けっこう楽しかったり、する(爆)
知り合いの方が、「私は大阪も街を歩いてるとさびしくなる。京都はそうやないけど」
と言ってはりましたが、私は反対かな。京都は、なんだか町のあちこちに
ふっと暗い穴があいてるような気がする。時々、重い、町の圧迫感を感じたり
するんですが(でも、綺麗なんですけどね)大阪には、それを感じない。
「今」のエネルギーと、ここで生きてきた人々の「気」が満ちているような
感じがあります。

この物語に出てくる、あちらこちらがふっと目に浮かんで、歌が自転車で
走る道筋を、頭で追うことができる。朝のまだ目が覚めきる前の、ざわっと
した空気。昼間の、仕事する人間と、街を楽しむ人とが交錯するあわただしさ。
そして、夜の、一番ミナミが活気付く華やかさと、裏小路に漂う物悲しさ・・。
そこにある「今」の裏に、ずっとここで泣いたり笑ったりしてきた人々の気配
が満ち溢れている。郊外の、車でいくような街には、決してない匂いです。
「土地」は、そこに生きてきた人の思いや、人生のあれこれを吸い込んで、そこに
ある。そして、どんどん「今」も吸い込んでいる・・・。
そんな街の呼吸を感じて、とても楽しかったですよ。
歌が集める昔の写真から見る大阪の街は、また見慣れたものから見ても
新鮮に写ります。所在なさげに「今」を生きている歌のゆれる気持ちが
ネオンにゆらゆらとゆれて、にじんで広がっていく雰囲気。
この街から離れて生きていくことなんて想像できないだろうなあ、彼女は・・。
「街」と「人」の関係を、雰囲気たっぷりに書く柴崎さんの筆遣いにやられました。
でも、これ大阪モノ以外の人が読んだら、どうなんだろう・・。
それも、ちょっと聞いてみたい。これを書き上げたら、ロムの旅に出てみます・・・。


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その街の今は*柴崎友香
☆☆☆・・ その街の今は柴崎 友香 (2006/09/28)新潮社 この商品の詳細を見る わたし、昔の大阪の写真見るのが好きやねん。その、どきどきの中毒みたいな感じやねん-。過ぎ去った時間の上に再生し続ける街の姿に、ざわめく28歳の気 ...続きを見る
+++ こんな一冊 +++
2006/12/14 07:08

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
ERIさん、こんばんわ。体調はいかがですか?
ミナミに詳しくないので、入門編でこの本を読んでみたいなって思いました。
早速図書館で予約しなくっちゃ♪(笑)
大阪の街をこれからもっと知って、楽しむ良い機会になると嬉しいな☆
朝晩急に冷え込むようになったので、お体お気をつけて^^
図書館大好娘
2006/11/05 20:18
>図書館大好娘さん
いらっしゃい♪
これ持って、一緒にミナミ行く?なんちゃって。
明日、メールしますね〜〜〜。
ERI
2006/11/05 22:51
大阪人ではないわたしでも、その雰囲気の一端に触れられたような気はします。
でもたぶん、「気」がするだけなんでしょうねぇ。
実際に思い浮かべられるERIさんが羨ましいです。

「今」と「これから」のエネルギーにあふれた街にいるからこそ、そして そこにいながら自分の未来を思うように描けないからこそ、歌ちゃんは「その街の昔」に焦がれるのかもしれませんね。
ふらっと
2006/12/14 07:08
>ふらっとさん
いや、ふらっとさんの思い浮かべられた大阪の街は、ふらっとさんだけのものですよ。時代小説好きの私にとって、今存在しない江戸が近しい街であるように・・。見えない未来より、過去のほうが存在感がある。大阪の女は強いようで寂しがりですわ。ミナミに行ったら、歌が、ふっとそのあたりを歩いているような気がしますね・・。
ERI
2006/12/14 23:19

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