絶対、最強の恋のうた 中村航 小学館

画像とっても可愛い表紙なんである。なにしろ、お目目がはあとだし。
「絶対、最強」って、男の子が熱っぽくしゃべるときの、言い回し
やね。「な、このキャラ最強やねん、て」「絶対ええって、なあ」
(何でか大阪弁)って、好きな子に必死に説明してる感じ。
その、男の子らしい熱気が伝わってくる、ストレートな愛の歌。
なんや知らん、かわいらしゅうて、皆ええ子らで、読んでる間じゅう
楽しかった・・今日は、大阪弁バリバリでいこかな(爆)
標準語で書くには、ちょっと気恥ずかしいやん。

特別、格別ロマンチックなことが起こるわけでもない。
普通の大学生活の中で、学祭の焼きソバが縁で、お土産のもみじ饅頭が
ピンポイントにはまって、始まった恋。
初めは夢中になって、「このままやったら、お互いあかんようになるね」
(注:本文、大阪弁とちゃいます)って、ちょっとブレーキかけて、
でも、やっぱり好きで。水族館いって、「マンボウが笑ってるし」(注:本文・・以下同文)
って二人で笑って・・。ほんまに、特筆すべきことなんてなんにもなさそうな、きっと
たくさんたくさん、日本中の恋人達が紡いでる恋の物語。
でも、これは、大野くんが出合った、たった一つの最強の恋なんである。
浪人して、やっと大学入って、坂本くんという友達とベビースターラーメン
食べて、コツコツ理系らしく勉強して。なぜか坂本くんと、週一回木戸サンの
とこで大酒飲む、どこにでもいそうで、どこにもいない、この世でたった一人
の大野くんがであった、たった一人の「彼女」。

最初から最後まで、彼女の名前は、わからない。固有名詞が、最後まで彼女だけ
でてこない・・。これは、「100回泣くこと」でも思ったんですが、心理的な距離の
具合なんかな、と思う。「彼女」「彼」って、恋人同士で使うとき、物凄く所有感が
強いですよねえ。「おれの彼女がなあ・・」「うち(大阪弁で自分のこと)の彼がな・・」
って、人に恋人のことを話す、あの独特の誇らしい、舌の上で飴ちゃん転がすような
気分。彼女、彼、って自分でも迷いなくお互いのことを思える、幸せなとき。
だから、彼女は最後まで、彼女。坂本くんが片思いしてる女の子は、だから
彼女とは呼ばれない。「飯塚さん」やもんね。最後の短編で、無事「彼女」をゲットできた
坂本くんに、バンザイを(爆)

こんな風に出会って、お互いにとってかけがえのないたった一人になること。
お互いが好きという気持ちが、どんどんお互いを幸せにすること。
これは、どこにでもありそうで、でもなかなか出会えない、最強の恋の歌。
それに出合った恋人達の初々しい「始まり」が、なんとも可愛い物語でした。

この「突き抜けろ」は、「I LOVE YOU」というアンソロジーに所収されていましたね。
この木戸さんの濃いキャラクターが印象的で、よく覚えてました。大野くんも坂本くんも
ごくごく律儀で、真面目な男の子。木戸さんみたいに、何をして暮らしてるんだか
よくわからん、なにやら胡散臭い暮らしをしていながら、妙に自信にあふれてる木戸さん
に、そんな彼らが惹かれるのは、わかるような気がします。コツコツと自分の道を
積み上げていく、そんな自分を、ちょっと男として小さいんじゃないか、なんて思っちゃう
んじゃないかしらん。そんな自分達とは、違う別の男の手触り。
バカなことを大真面目でやれちゃう、その楽しさ。
大真面目だからこそ、なんだか可笑しくて、しみじみしちゃったりして・・・。
「なんで、あんな人と仲良くしてんの?」って、奥さんに聞かれて、「男の付き合いに
クチだすなや、あの人のええとこなんて、女にはわからんねんから」なんて
言って、奥さんの顰蹙買っちゃうような付き合いですね。
借金しながら、妙に偉そうな百閒先生に、みんなが「先生、先生」って群がるような
もんかと(爆)恋愛ものに、こういうファクターがもう一つ入ってることが、また面白かった。
男と、女。そして、男と、男。出会いと思い出が、人生か・・・。

中村さん、やっぱり面白いです。作品に可愛げ、というか愛嬌がある。
楽しみですね。ますます・・・。

おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001155



この記事へのコメント

藍色
2006年12月03日 17:01
可愛いという表現がぴったりの恋愛小説でしたね。ドロドロしたものがなく、むかしの映画みたいな、ほとんどプラトニックなのが新鮮で、安心して読めました。大阪弁で書こうとした気恥ずかしいお気持ちもわかる気がします。大野の彼女の名前が出てこなかったのは、そういう意図があったのですね、なるほど。もうひとつ、“ガブラッチョ”(p159)も謎です。
木戸さんのキャラクター、濃かったですね~。あはは、百閒先生!近いものがあるかも、です。男が男を慕う、あのファクターって独特の楽しさを加えているようにも感じました。そして、坂本、これからもがんばれよぉ!(笑)。
2006年12月04日 01:00
「ガブラッチョ」の謎には、ちょっと気づかなかったですよ(汗)
考えてみますわ~。でも、謎解きはけっこう苦手なんです。頭の働きがよろしくないもんで。ミステリーも、けっこう最後までだまされるタイプです(爆)

坂本、がんばれよ~(ノ><)ノ(爆)ほんと、がんばってほしいわ!