小暮写真館 宮部みゆき 講談社

画像何だかもう、バタバタと毎日が過ぎていく(汗)
どうして、こんなに時間がないんだか・・。
ブログの、こんなレビューでさえ、なかなか更新できないのに
恐ろしく分厚い小説を書きあげてしまう宮部さんは、ほんとに
凄いと思う。(そこに感心するんかいな)
初めて見た時は、この分厚さに驚いたんですが、読み始めたら―。
やっぱり長かったけど(笑)面白かった!
人生が、いっぱい詰まってる。
宮部さんの物語は、とても奥行きがあって・・。
登場人物一人一人の背景、つまり生まれた場所や両親の出身地、
その人がどんな人生を過ごして、今、ここにいるのかが見事に
書きこまれる。それは、たとえほんの少ししか出てこない登場人物でも
変わらない。この物語の分厚さは、「人」という生き物の営みを
そのまま切り取った分厚さなんだと思う。

物語は、主人公の高校生・英一の一家が、古い写真館のあった家に
引っ越してくるところから始まる。さびれかけた商店街にある、
古ぼけた写真館には、ずっと商店街の名物と言われた小暮さんが
住んでいた。両親の物好きでその写真館に越してきた一家だったが
そこには「小暮さんの幽霊が出る」という、もっぱらの噂だ。
その噂につられたせいか、英一のもとに、一枚の心霊写真が
持ち込まれる。興味をひかれた英一は、ついその調査にのめり込んでいく・・。

心霊写真、という、いわば非常に胡散臭いものを、
英一はとても真剣に追っていく。
そこから浮かび上がるものは、写真に閉じ込められた人間の「想い」だ。
本当は、その「想い」というものをまっすぐに見つめることが大事なんだけれど
それは、結構難しい・・。ほんとにね、いつまでたっても難しい。
年齢とかは、関係ないですね。私も、まだまだその点未熟です。
そして、この仲良しで楽しそうな英一の一家にも、見えない傷がある。
幼い頃に、インフルエンザをこじらせて死んでしまった幼い風子。
彼女の死があけてしまった心の穴を、皆抱えていきている。
風子を救えなかった自分を、皆心の中で責めて、責めて・・。
でも、その事をまっすぐ見つめるのはとても怖い。
自分の中の傷が、ぱっくり開いて血を吹きあげるから。
その想いは、英一も一緒だから、風子が死んだ時の事は、
かっちりと冷凍して封印してあるのだ。
でも、その一方で、心霊写真というものを追いかけてしまったのは
やはり、「風子」という妹のことを、そのままにしておけなかった
からでもあるんですよね。愛していたからこそ、苦しい。

そのそれぞれの想いが噴出した「鉄路の春」に涙してしまいました。
心の傷は癒えない。それも、当たり前。
でも、その痛みを抱えて、いたわりながら生きていくことは出来る。
その力をくれたのは、いなくなってしまった、風子自身だった。
いなくなってしまった風子を感じる・・その物語が生まれること。
そして、その物語を共有すること。それが出来て初めて、
英一と幼いピカちゃんは、風子を封印するのではなくて、
一緒に「感じる」存在として自分の中に抱き、生きていける・・。
その「物語の力」、目に見えないものを感じる力が、心を繋ぐ鍵だと
宮部さんは言いたかったんじゃないなかあ・・と思う。
その、物語による再生のシーンの暖かさは、ぜひ読んで頂きたい。

よくねえ、幽霊が怖い、って言いますけど・・。
何が怖いって、生きてる人間ほど怖いもんはないですよねえ。
英一が惹かれた柿本順子さんを、とことん傷つけたのは人間。
だって、私は幽霊にとり殺された人は見たことがないけれど
人が人を殺すのは、当たり前のようにニュースに転がっている。
そういう人間の理不尽さと自分も、実は無関係ではなく、
心のどこかにぽっかり空いた穴を覗けば、そこに闇が広がることを
知っていて、私たちは心に傷を負う。損なわれていく・・。

しかし、その「心」を回復させていくのは、やはり心が紡ぐ物語の力なんですよね。
すれ違う人それぞれに、これだけ分厚い物語がある。
ずっしり持ち量りのするこの本の重さを感じて・・その事を忘れないでおこうと
思った一冊でした。

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