ネジマキ草と銅の城 パウル・ビーヘル 野坂悦子訳 村上勉絵 福音館書店

画像村上勉さんの表紙と挿絵に、思わず手が伸びました。子どもの頃から、村上さんの絵が大好きなんです。佐藤さとるさんのコロボックルのシリーズは言うまでもなく・・昔、村上さんの挿絵の「家なき子」を持っていたんですよ。今でも、頭の中にくっきり浮かぶほど印象的な本だったんですが、残念なことに、もう手元にはありません。村上さんの絵はとても躍動感があって、頭の中で、イマジネーションが膨らみます。だから、寓話の要素を多く含んでいるこの物語のような作品には、まさにぴったり。

年老いたマンソレイン王は、一匹のノウサギと共に、銅の城に住んでいる。千年の命を持つ王の命は風前のともしび。そこで、一人のまじない師が、王の命を救うため、ネジマキ草を取りに行く旅に出る。しかし、彼が帰るまで、壊れかけている王の心臓を動かすためにはお話の力がいるのだ。そこで、王の城には、物語を語るためにいろんな動物たちがやってくる・・。

オオカミ、リス、砂丘ウサギ、カモに、ヒツジに馬に・・いきなりドラゴン(笑)小さい昆虫から、火を吐く竜までが一つの城に集まって、ウサギの作るご飯を食べて一人ずつ物語を語る。あとの動物たちも、王と一緒にその物語を聞きます。火のまわりで大人たちがする昔話に耳を傾けるような味わい深さがあります。詩的な文章で差し出される、さり気ない風刺の精神が楽しい。その物語たちの中から、「ああ、人生ってそうやんな」っていう同意の小石が、コツン、コツン、と降ってくる面白さがあります。動物たちと一緒に人生のあれこれを感じてしまう。またねえ、文章がいいんですよ。「ものすごい戦いになった。右に左に引きずられる大オオカミの目に、天と地が混ざりあって映った」まさに、命のぎりぎりで戦っている実感がこもってます。まさに、神は細部に宿る・・ですね。個人的には、砂丘ウサギが、自分の兄ちゃんと「大きなザザーン」を見にいく話が切なくて・・兄ちゃんがそこでいなくなってしまうのが、もう始めからわかってしまうんですが、それだけに切ない。「大きなザザーン」は、海ですよね・・。

物語の前では、小さな虫も大きな物言わぬ月も、ひとしく同じ存在で「今」を生きている。その眼差しがいいなと思います。語るものと語られるもの、それぞれの命が結びあって世界を作っている。それを俯瞰していく感じがあります。寂しい城が動物でいっぱいになって、物語に満たされていきますが、ラストに出てくる小人が、その物語を見事な「歴史」に紡ぎあげるのが見事。このくだりには、訳された野坂さんもおっしゃってましたが、やられたなあと思いました。語ってきかせるような子どもがいたら、これを寝る前に読んで楽しめるのになあ・・。子どもに、じっくり読み聞かせしたくなる一冊でした。

2012年1月刊行
福音館書店

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