借金取りの王子 垣根涼介 新潮社

画像本当にこんな職種があるんでしょうか。
リストラ請負会社。一定の人数の人員を整理したい企業から
業務を委託されて、リストラ勧告を行い、円満に事を運ぶことを
目的とする。でも、これは、絶対あたるな。だって、同じ会社の人間が
同僚に、退職勧告をするのは、けっこう心理的に厳しいし、いらない
揉め事も、感情のもつれも引き起こしてしまう。でも、そこを第三者に
噛んでもらうことで、穏便に事を済ませることができる。
考えましたね~~。ビジネスチャンス、っていうのは、こういうことろに
転がっているものなんでしょう。

この小説は、そんな業務の会社で、第一線としてリストラ業務に励んでいる
真介という男が見た、人間のドラマを書いたもの。面白かったなあ。
人に、言い難いことを言う、または、言われてほしくないことを言われる。
そんな時に、一番その人の性格が現れてしまうのかもしれません。
仕事をしてお金を貰うということの厳しさ。
特に、ここ書かれている、「営業」というお仕事に、尊敬すら覚えます。
私はこの人生で営業活動というのをしたことがない人間なんで・・・。
けっこう人見知りの私には、勤まらない厳しいお仕事だわなあ・・と
しみじみしてしまいました・・・。

一番好きだな、と思ったのは、タイトルにもなっている「借金取りの王子」。
元ヤンの女上司に惚れてしまう、慶応ボーイがなんとも可愛らしい。でも、この元
ヤンの彼女が彼に惚れているのは、自分の素敵なところを、真っ直ぐみてくれる
その視線なんでしょう。人は、自分のいいところ、綺麗なところを見てくれる視線で
より強く、優しくなれる。経歴や、学歴ではない、人間の大事なところを見る目を
持っている、この王子が好かれるのは、そこですね。人間性皆無のサラ金業界と
そんな優しさとの対比が、とても印象的な、ほろっとさせる短編でした。

けっこう重たい人間ドラマに、この真介と、恋人の陽子のやりとりが明るい色を
添えて、読後感も上々。さらっと、いい感じの本を読みたいときに。

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