テーマ:ヤングアダルト

ロブロィエクの娘 マウゴジャタ・ムシェロヴィチ 田村和子訳 未知谷

初読みの人なんですが、何だかずっと前から読んでいるかのような、共振を感じてしまう作品でした。骨太の構成の中に、瑞々しいバラの花のような感受性が花開いていて、その鮮やかさにハッとします。人生という困難な航海を真正面から見据えようとする勇気。暖かな眼差しとユーモア。あちこちに散りばめられたひねりの効いた議論やアイロニーを読んでいると、国や時…
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鷹のように帆をあげて まはら三桃 講談社

まはらさんの物語は、いつも「手」がとても重要な役割を果たします。『たまごを持つように』での、ふわりと力を抜いて弓を構える手の大切さ。そして、『鉄のしぶきがはねる』の、旋盤加工を極めるために研ぎ澄ます手。そして、この物語では、主人公の女の子の手は、しなやかに美しい命を乗せるために、まっすぐ差し出されます。手を使うということは、自分の感…
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よるの美容室 市川朔久子 講談社

私ごとですが(笑)美容院にいくのが、好きです。中でも好きなのは、ゆっくりシャンプーしてもらうこと。今流行りの炭酸ソーダ水で時間をかけて洗い流して貰っているうちに、うとうとしてしまう、あの気持ちよさったらありません。ただし、上手な人にしてもらう時に限りますが。力の入れ具合、リズムなど、やっぱり大きく個人差がありますよね。この物語は、上手な…
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八月の光 朽木祥 偕成社

広島は、朽木さんのライフワークだ。この本には、広島の原爆をテーマにした連作『雛の顔』『石の記憶』『水の緘黙』が収録されている。アマゾンから週末に届き、何度も何度も読み返した。安易に泣いてはいけないと思うのに、後から後から涙が溢れて止まなかった。読めば読むほど、何をどんな風に書けばいいのか、作品の内包するものの大きさに打ちひしがれてしまう…
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シーグと拳銃と黄金の謎 マーカス・セジウィック 小田原智美訳 作品社

梅雨に入り、やたらに暑い職場にぐったりの日々。猫も暑いのか、最近、くうちゃんが、洗面所で水遊びをするのに夢中で、どこにいても水音がするとダッシュしてきます。猫も暑いと水浴びしたくなるのかも(笑)猫のように涼を求めて・・というわけではないのですが、この『シーグと拳銃と黄金の謎』は、もわっとした日本の夏とは正反対の、極寒の地で繰り広げられる…
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氷山の南 池澤夏樹 文藝春秋

少年(正確に言うと、少年と青年の間ぐらいか)を主人公にした、成長・・ではなく、教養小説です。なぜ成長ではないかというと、この物語の主人公JINには、成長痛がないから。彼は感じ、学び、受け取り、貯めこんだ分、みごとに広がっていく。子どもと大人の境目にいる年齢の青年が、ある特殊な環境の中に放り込まれることで、そこにいる大人たちからたくさんの…
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天山の巫女ソニン 巨山外伝 予言の娘 菅野雪虫

巨山国のイェラ王女を主人公とした外伝です。彼女は、個性の強いこの物語の登場人物の中でも、際立って魅力的な人。このサイドストーリーを読んで、ますます彼女のことが気になる存在になってしまいました。 強大な権力を持ち、人の心を想いのままに操る父王。その王の求める跡継ぎの男子を産めないことで、段々常軌を逸していく母。その二人に顧みられるこ…
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ソラガアオイ 朽木祥 飛ぶ教室 2012春号

仕事から帰ってきたら、アマゾンから「飛ぶ教室」が届いていた。夕飯を作らなくては、と思いつつ、お目当ての朽木さんの『ソラガアオイ』の頁をめくって飛び込んできた一行目が衝撃的で、思わず「あとで落ち着いてから」と呼吸を整えた。そして、一日の仕事を終え、頁をめくり・・結局他の部分を読みつくしてから最後に心を決めて開き、案の定号泣しながら一回目。…
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ジェンナ 奇跡を生きる少女 メアリ・E・ピアソン 三辺律子訳 小学館SUPER YA

ここ一週間ばかり、パソコンの調子がいまいちで、正常終了が出来なくなっていました。そこで、今日は一日何だかんだとメンテナンスをしていたのですが・・。結局「システムの復元」で、過去の状態に戻すという安易な方法を選択してしまいました。この手は時折使うんですが、便利ですよね。バックアップはパソコンでは大切です。しかし、それが人間だったらどうなの…
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グリフィンとお茶を ~ファンタジーに見る動物たち~ 荻原規子 徳間書店

動物、というのはファンタジーと縁が深い。どちらも、「物語」の源流に近いものだからかもしれない。人が焚火の前で子どもたちに語ってきかせた、生のままの物語。そこでは、きっと自然に住まう神々と繋がるものとして、たくさんの動物たちが登場したはずだ。かって、真の暗闇に住んでいた頃、私たちは動物よりもずっと下の存在だったはず。彼らのような運動能力や…
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なのはな 萩尾望都 小学館

震災のあと、月刊誌に連載しておられた作品を、まとめられたものです。 萩尾さんの想いが、深く込められた一冊。 特に表題の『なのはな』『なのはなー幻想「銀河鉄道の夜」』は、胸に迫ります。 いつも、マンガという文化は、子どもの方を向いています。 ずっとその先頭にいて、道を切り開いてこられた萩尾さんの目線は、 これからの未来を生き…
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ネジマキ草と銅の城 パウル・ビーヘル 野坂悦子訳 村上勉絵 福音館書店

村上勉さんの表紙と挿絵に、思わず手が伸びました。子どもの頃から、村上さんの絵が大好きなんです。佐藤さとるさんのコロボックルのシリーズは言うまでもなく・・昔、村上さんの挿絵の「家なき子」を持っていたんですよ。今でも、頭の中にくっきり浮かぶほど印象的な本だったんですが、残念なことに、もう手元にはありません。村上さんの絵はとても躍動感があって…
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紅に輝く河 濱野京子 角川書店 銀のさじシリーズ 

『碧空の果てに』『白い月の丘で』に続く、シューマ平原の国々を舞台にしたファンタジー3作目です。国の行く末を左右する運命を背負った王女・・というドラマチックな設定。濱野さんのリリカルな魅力が満載の物語です。そして、いつもいいなと思うのが、登場人物たちがいつも自分の想いに忠実なこと。生まれる時代、国、家庭・・自分がいる場所のルールというもの…
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精霊の守り人 上橋菜穂子 二木真希子絵 偕成社 ①

守り人シリーズの幻の作品、『炎路の旅人』が収録された最新刊、『炎路を行く者』が発売されました。『炎路の旅人』は、『蒼路の旅人』の前に書かれていた小説ですが、上橋先生曰く、このヒュウゴの物語が生まれたからこそ、そのあとの壮大な『天と地の守り人』全3巻が上橋先生の中で立ちあがったということ。さっそく買って読み、感想を書こうと思ったのですが・…
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本へのとびら 岩波少年文庫を語る 宮崎駿 岩波新書

年に1回か2回、銀座にある教文館ナルニア国という、子どもの本屋さんに行きます。ここは、品ぞろえが素晴らしいんですよ。子どもの本、YAに対する深い理解があって作られている本棚だということがよくわかります。ここでしか買えないテキストや研究書などもあるので、行くと必ず散財してしまうことになるのですが、そこにいつもたくさん並べてあるのが、岩波少…
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時の旅人 アリソン・アトリー 松野正子訳 岩波少年文庫

この本が書かれたのは、1939年、この岩波少年文庫に翻訳されたのは、1998年。まさに、長い時を旅してきた物語です。イングランドの田舎を舞台にして、現在と過去を行き来する少女の日々がとても色鮮やかに描かれていて、ここ数日私はこの古い農園に、主人公のペネロピーと一緒に魅入られていました。 ロンドンに住む三人兄弟の末っ子・ペネロピーは…
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リンデ ときありえ 高畠純絵 講談社文学の扉

この、高畠さんの表紙がたまりません。リンデの笑顔です。おっきな犬が持つ、ゆったりした笑顔。思わず頁を開かずにはいられませんよね、こんな顔されたら。愛する人を失うことの不安に攫われそうになっていた男の子を、ぽかぽかの犬の体温が包み込みます。ここのところ、毎日寒くて、お日様にもあまりお目にかかれない。気分も落ち込みがちでしたが、この物語にし…
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ピース・ヴィレッジ 岩瀬成子 偕成社

岩瀬さんの文章は、とても細やかだ。私たちが呼吸を繰り返すたびに胸に降り積もり、消えていってしまうようなこと。一生口に出さず胸に秘めているうちに、遠く霞んでしまうようなあれこれを、鮮やかに甦らせてくれる。そして、知らないうちに、大切なものを渡されてしまうのだ。その何気ない鮮やかさに、私はいつも舌を巻いてしまう。 物語は、小学校6年生…
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クロックワークスリー マコーリー公園と三つの宝物 マシュー・カービー 石崎洋司訳 講談社

煌びやかな都会と深い闇の大きな森がある19世紀末のアメリカ東部の町を舞台にした、3人の少年と少女が繰り広げる冒険活劇です。自動人形、オペラ、タロット、降霊会、孤児院、大道芸人・・・もう、ありとあらゆるものを詰め込んで息つく間もなく物語が展開していくのが楽しくて仕方がない。主人公たちと一緒に町を走り回っているうちに時間が経つのを忘れてしま…
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いま、ファンタジーにできること アーシュラ・K・ル=グウィン 谷垣暁美訳 河出書房新社

素晴らしい評論を読むと、頭が喜びます。日頃漠然と感じたり、考えたりすることが、見事に整理され、言語化されているのを読む喜び。頭の中に真新しい引き出しが出来る楽しみ。新しい目を開いてくれる知性に触れるのは、なんと嬉しいことかと思います。昨年後半、初めてル=グウィンの評論を読みだし、その的確な指摘と物語への姿勢に共感することしきりでした。そ…
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ダーウィンと出会った夏 ジャクリーン・ケリー 斎藤倫子訳 ほるぷ出版

仕事柄、物語の中に図書館が出てくると妙に気になります。場所や配架の様子もですが、図書館員の対応の仕方や態度、言葉づかいに、ヘンに神経質になってしまったり(笑)物語の中であっても、がっかりな対応などを読んでしまうと、腹立たしく悔しい気持になったりします。この物語の中に出てくる図書館はまさに最低で、そこを読んだ途端、私も主人公のキャルパーニ…
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セキタン! ぶちかましてオンリー・ユー 須藤靖貴 講談社

何気なく手にとって、思わずハマって一気読み。これって、一番楽しい読書のあり方です。「ぶちかましてオンリー・ユー」という、ちょっと軟派なサブタイトルに似合わぬ硬派な一冊。男の純情・・なんて、すっかり古い言葉になってしまいましたが、やっぱりスポーツには純情が似合います。 主人公の大関治くんは、中3の時に謎の兄ちゃんに「力士になったらど…
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小公女 フランシス・ホジソン・バーネット 高楼方子訳 福音館書店

金曜に、猫を拾ってしまいました(汗)夕方の駅前のロータリーという、人も車も自転車も激しく行き来する場所で、激しく鳴くちっさい猫を発見。道行く人に、にゃんにゃんとむしゃぶりついては鳴いているんです。友人と思わず近寄ってしまったのが運のつき(笑)首輪をしているので飼い猫かもしれないと思い、とりあえずキャリーを家から持ってきて保護し、あちこち…
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父さんの手紙はぜんぶおぼえた タミ・シュム=トヴ 母袋夏生訳 岩波書店

「愛」と気軽に人は言うけれど。「愛」ってこういうことなんだよ、と説明することも、目に見えるように提示することも、あまりに難しい。その昔、向田邦子さんが、「愛」という言葉を聞くと、ゆでたまごを思いだすと書いてらしたことがあった。遠足のとき、同級生のお母さんが、娘のためにクラス全員に卵をゆでて持ってきた。お母さんが恐縮しながら渡すその卵の温…
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お父さんのバイオリン ほしおさなえ 徳間書店

最近、人の心の無意識の領海の大きさについて、よく考えます。私たちが意識している部分の下に、膨大な量の何かが眠っているーというのは、若い頃にユング心理学をかじったときから知ってるつもりだったのですが。知ってるつもりと、それが身に沁みてわかることの間には、大きな大きな壁があるんですよね。この年齢になってそれを実感します。河合隼雄さんもおっし…
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ピートのスケートレース ルイーズ・ボーデン 福音館書店

新年あけましておめでとうございます。 2012年が始まりました。平成になって24年めです。今年もいろいろあるだろうと思います。なぜなら、世界の変わり方があまりにも目まぐるしくなっているから。筒井康隆の「急流」という小説をご存じですか?毎日加速度的に時間の進み方が早くなって、ラストでは時間がどうどうと滝のように流れ落ち、その先はなく…
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2011年を振り返って

久しぶりの更新です。 この三カ月、ずっとある事にかかりきりで、こちらがおろそかになっていました。でも、ずーっと、ずーっとこちらを書きたくて仕方なくて。今日、やっと解放されたので、いそいそと更新です。すっかり世間から忘れられてる感がありますが(笑)新年から、がんばって書いていきますので、どうかよろしくお願いします。 気がつけば、2…
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帰命寺横町の夏 柏葉幸子 講談社

死んだ人が生き返る。そんなことは、絶対に無いのだけれど。もし、自分の周りに、そんな人、いや、亡者がいたら・・・。この物語は、思いがけず、そんな出来ごとに遭遇してしまった男の子のお話です。こう書くと、一瞬ゾンビ系のホラーと思われてしまいそうが、決してそうではなく。「生きる」ということの切なさ、かけがえのなさが、胸いっぱいに満ちるような柏葉…
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1/12の冒険 マリアン・マローン 橋本恵訳 ほるぷ出版

小さいことは、チェスタトンが「棒大なる針小」で書いていたように、ドラマチックなこと。例えば・・・この身体が、ウルトラマンサイズになってしまったとしたら。ちょっと歩けば家を踏みつぶす。山を歩けば崖崩れ。海辺を歩けば、港を壊す。迷惑この上ないですよね。(昔テレビで、ウルトラマンが怪獣と格闘するたびに、私はそれがとても気になっていた。怪獣より…
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シンポジウム 子どもの物語・大人の物語

昨日、大阪産業創造館であった、日本ペンクラブ主催のシンポジウムに行ってきました。パネリストは、今江祥智さん、里中満知子さん、越水利江子さん、令丈ヒロ子さん、進行はひこ・田中さんという豪華なメンバーです。いやー、ほんとに楽しかった!会場には、他にもいろいろと作家さんが来られていて、話が広がるわ、広がるわ、初めのテーマからどんどん膨らんで・…
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